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源氏物語(二十八帖〜三十帖)|紫式部|※ネタバレ注意※


二十八帖:野分

二十八の一:野分の夜明け

中宮のお住居の庭の秋草は、今年は種類が多く、風流な黒木、赤木のませ垣が所々に結われていた。朝露夕露の置き渡すころの優美な野の景色は、春の山も忘れるほどにおもしろかった。春秋の優劣を論じる人々は、六条院の春の庭のながめに説を変えたかと思えば、今またこのごろは秋の讃美者になっていた。

中宮はお心が惹かれて御実家生活を続けておいでになったが、八月は父君の前皇太子の御忌月であったため、音楽の会などは控えめにしていた。今年の野分の風は例年よりも強く、草花のしおれるさまを見ては、宮は御心配をあそばされた。

日が暮れるにつれ、風の音ばかりがつのり、格子も皆おろしてしまったので、宮はただ草の花を哀れにお思いになるばかりであった。

二十八の二:源氏の巡回と中将の隙見

源氏が小姫君の所におられた折、中将が来て東の渡殿の衝立の上から妻戸の開いた中をのぞいた。そこにいた一女性が中将の目に留まった。気高くてきれいで、春の曙の霞の中から美しい樺桜の咲き乱れたのを見いだしたような気がした。

源氏が西側の襖子をあけて夫人の居間へ入ってくると、中将は再びのぞき見た。女王は何かを言い、源氏も微笑しながらその顔を見ていた。親という気がせぬほど源氏は若くきれいで、美しい男の盛りのように見えた。

その後、源氏は中宮や明石の君、玉鬘を訪ね、中将もそれに従った。

二十八の三:花散里の御殿にて

花散里の所へ源氏が行くと、年配の女房たちが裁ち物をしており、若い女房は真綿をひろげていた。きれいに染め上がった朽ち葉色の薄物や淡紫の打ち絹が散らかっていた。

源氏は中将の下襲や御所の秋草の宴について話し、自身の直衣の材料である支那の紋綾を見せた。花散里の見立ての巧みさを源氏は南の女王にも劣らないと思った。

二十八の四:中将の心の揺れと姫君との出会い

中将は妹の姫君の所へ行き、淡紫の薄様に手紙を書いて刈萱につけた。姫君が来ると聞いて、中将は御簾の隙間から姿を覗った。淡紫の着物を着た細い小さい姿が可憐に思われ、高い木にかかって咲いた藤の花のようであった。

二十八の五:三条の宮にて

三条の宮では、宮が静かに仏勤めをしておられた。内大臣も訪れ、姫君のことや自身の娘について話し合った。宮は姫君に会えないことを嘆き、内大臣は自身の娘の振る舞いに頭を悩ませていた。宮は悲しく思いながらも、望んでおられることを口に出せずにいた。

```mermaid
graph LR
    A[源氏] -->|正妻| B[紫の上]
    A -->|側室| C[明石の君]
    A -->|側室| D[花散里]
    A -->|養女| E[玉鬘]
    F[内大臣] -.->|実父| E
    F -->|子| G[源中将]
    H[三条の宮] -->|祖母| G
    A -->|父| G
    I[中宮] -->|付き人| J[宰相の君]
    I -->|付き人| K[内侍]
    G -.->|好意| B
    L[明石の姫君] -->|娘| C
    A -->|父| L
    G -.->|好奇心| E

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二十九帖:行幸

二十九の一:源氏と玉鬘の再会

源氏は玉鬘に対してあらゆる好意を尽くしているのであるが、人知れぬ恋を持つ点で、南の女王の想像したとおりの不幸な結末を生むのでないかと見えた。内大臣の形式を重んじる性格から、源氏はいささか躊躇していた。

この十二月に洛西の大原野の行幸があって、六条院からも夫人がたが車で拝見に行った。親王がた、高官たちも皆特別に馬鞍を整えて、装束に風流を尽くさせてあった。

玉鬘も見物に出ていたが、緋のお上着を召した端麗な鳳輦の中の御姿になぞらえることのできるような人はだれもないと感じた。

二十九の二:源氏と内大臣の再会

源氏は玉鬘の裳着の式を二月に行なおうと思っているのであった。三条の宮をお見舞いしがてらに訪ねた源氏は、内大臣との再会の機会を作った。

内大臣が三条の宮を訪れると、源氏との久しぶりの対面となった。二人は昔話に花を咲かせ、源氏は玉鬘の存在を内大臣に告げ、内大臣はひとしきり泣いた。

源氏は玉鬘の裳着の式を準備し、内大臣に腰結いの役を依頼した。内大臣は娘に会える喜びと、源氏の厚意に感謝しながらも、複雑な心境を抱いていた。

二十九の三:玉鬘の裳着の式

十六日の朝に三条の宮から裳着の姫君への贈り物が届いた。中宮からも白い裳、唐衣、小袖、髪上げの具などを美しくそろえて贈られた。

内大臣は玉鬘のことを聞いた時から、一刻も早く逢いたいという父の愛が動いてとまらぬ気持ちから、今日は早く出て来た。源氏の配慮により、燈火を普通の裳着の式場などよりもいささか明るくしてあった。

式の最中、内大臣は感謝と恨みの入り混じった歌を詠み、源氏がそれに答えた。玉鬘の正体は一部の人々にしか知らされなかった。

二十九の四:玉鬘の身分の公表

玉鬘の裳着の式が終わり、内大臣は娘との再会を果たした。源氏は玉鬘の身分を当分は秘密にしておくことを言い、内大臣もこれに同意した。

兵部卿の宮は玉鬘との結婚を熱心に源氏の同意をお求めになるのであったが、源氏は宮仕えを優先させる意向を示した。内大臣はほのかに見た玉鬘の顔を、なおもっとはっきり見ることができないであろうかと思っていた。

しかし、両家の人々は注意していたのであるが、口さがないのは世間で、いつとなく評判にしてしまった。

二十九の五:近江の君の野望

内大臣の蓮葉な娘、近江の君は玉鬘が尚侍になるという噂を聞き、自身も尚侍になりたいと女御に懇願した。彼女は小まめに下の童女さえしかねるような用にも走り歩いて、一所懸命に勤めていた。

内大臣はこの話を聞いて、おもしろそうに笑いながら、近江の君をからかうことにした。彼は近江の君を呼び出し、尚侍になりたい願望について冗談めかして話を聞いた。

周囲の人々は内大臣のからかいに笑いをこらえきれず、女御も顔を赤くして醜いことだと思っているのであった。

二十九の六:源氏の心境と玉鬘の将来

源氏は玉鬘に対する複雑な感情を抱えながら、彼女の将来を考えていた。中宮が源氏の子になっておいでになるのだから、同じ家からそれ以上のことがなくて出て行くのを玉鬘は躊躇することだろうと思うし、大臣の子として出て行くのも女御がいられるのだから不都合だしと煩悶していた。

一方で、玉鬘は実父との再会に喜びを感じながらも、源氏の深い愛情に感謝の念を抱いていた。彼女は宮仕えという新たな道を前に、後宮の一人でなく公式の高等女官になって陛下へお仕えするのはよいことであるかもしれないと思うようになった。

源氏は玉鬘の身分を公にすることで生じる様々な問題を予想し、慎重に対処しようとしていた。

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graph LR
    A[源氏] -->|養育| B[玉鬘]
    C[内大臣] -->|実父| B
    D[兵部卿宮] -->|求婚| B
    E[女御] -->|異母妹| B
    F[帝] -->|尚侍意向| B
    G[紫の上] -->|正妻| A
    H[三条の宮] -->|祖母| C
    I[頭中将] -->|子| C
    J[近江の君] -->|娘| C

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    class C,E,I,J family;
    class D,G other;
    class F,H imperial;
```

三十帖:藤袴

三十の一:玉鬘の煩悶

玉鬘は尚侍として御所へ勤めることを源氏や実父の内大臣から勧められ、煩悶していた。彼女は、お仕えする君との間に情人関係ができた時の不快さや、自身の薄弱な立場、そして嫉妬される立場にあることを憂慮していた。また、源氏の恋から離れられないことや、実父が親として乗り出して世話をしてくれないことにも悩んでいた。玉鬘には心持ちを打ち明けられる母親がおらず、自分の身の上が一番哀れに思われ、夕方の空を眺めては物思いに耽っていた。

三十の二:源氏と源中将の対話

源氏は源中将に、玉鬘を尚侍にすることについて相談した。源氏は玉鬘が宮の夫人や尚侍に適していると考えていたが、中将は世間の噂や内大臣の思惑を伝えた。源氏はこれらの噂を否定し、玉鬘への純粋な気持ちを強調した。しかし、中将はまだ疑いを持ち続けていた。源氏は内大臣の観測を薄気味悪く感じ、自らを戒めた。

三十の三:玉鬘の出仕準備と求婚者たち

玉鬘の尚侍としての出仕が決まり、帝は待ち遠しく思っていた。一方、多くの求婚者たちは失望し、縁組みを急いでいた。源中将は自身の軽率な告白を後悔しつつ、玉鬘の出仕の準備に奔走した。頭中将は大臣の使いとして玉鬘を訪れ、父からの言葉を伝えた。玉鬘は直接対面することを恥ずかしがり、宰相の君を介して返事をした。

三十の四:右大将の求婚

右大将は玉鬘との縁組みを強く望んでいた。彼は三十二歳で、東宮の母君の兄弟であり、大きな勢力を持っていた。しかし、現在の夫人との関係が良くなく、源氏はこの縁談に賛成できないでいた。大将は内大臣が反対していないという情報を得て、仲介者に働きかけていた。源氏は大将の家庭のためにも、玉鬘のためにも煩雑な関係を避けさせたいと考えていた。

三十の五:求婚者たちの手紙

九月になり、玉鬘のもとに多くの求婚者から手紙が届いた。右大将、兵部卿の宮、式部卿の宮の左兵衛督などからの手紙には、それぞれの思いが込められていた。玉鬘は宮への返事だけを短く書き、宮はそれを喜んだ。手紙には選んだ紙の色、書きよう、焚きしめた薫香の匂いなど、それぞれ特色があった。女房たちは玉鬘が御所へ出るようになればこうしたことがなくなることを惜しんでいた。

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graph LR
    A[源氏] -->|養育| B[玉鬘]
    C[内大臣] -->|実父| B
    A -->|正妻| J[紫の上]
    C -->|子| G[頭中将]
    C -->|子| F[源中将]
    
    D[兵部卿宮] -.->|求婚| B
    E[右大将] -.->|求婚| B
    F -.->|求婚| B
    G -.->|求婚| B
    
    H[帝] -.->|尚侍意向| B
    
    I[宰相の君] -->|女房| B
    K[東の夫人] -->|後見| B
    L[南の夫人] -->|後見| B
    
    M[式部卿宮] -->|父| N[左兵衛督]
    N -.->|求婚| B
    
    O[大臣たち] -->|子| P[殿上人たち]
    P -.->|求婚| B

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    class A,B,C main;
    class G,F,N family;
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```

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