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世の中のメガネは小さい

私は顔がでかい。

ちょっとしたコンプレックスである。
小顔の女の子を見ると、やっぱりかわいいなと思うし、いいな、とも思う。
もちろん、毎日そればかり気にして生きているわけではない。日常では別に普通に暮らしているし、鏡を見るたびに落ち込むほどでもない。
でも、ふとした時にちゃんと引っかかる。そういう種類のコンプレックスだ。

その引っかかりが、いちばんはっきり出るのがメガネである。

私はメガネが好きだ。毎年新しいメガネを一個買うくらいには好きだ。
メガネというのは、気軽にいろんな自分になれる。服ほど大げさではなく、髪型ほど面倒でもないのに、顔の印象をちゃんと変えてくれる。少し真面目にもなれるし、少しやわらかくもなれるし、少し強そうにも見える。便利な道具である。

世の中にいいなと思うメガネはたくさんある。

でも、だいたい小さい。

本当に小さい。
世の中のメガネ、全体的に小さくないか、と思う。
デザインは好き。色も好き。形もかわいい。これいいな、と思って試着してみる。すると急に現実が来る。

小さいのである。

小さいメガネは、小顔の人にはしゃれて見える。
知的にも見えるし、抜け感も出るし、なんなら顔の余白までセンスに変わる。
でも、私がかけると話が変わる。
顔がでかいことだけが、妙に強調される。

メガネをかけたのに、メガネが主役にならない。
顔の面積のほうが勝つ。
いや、勝たなくていいところで勝ってくる。

あの瞬間、かなりいたたまれない。
いいなと思っていたものが、自分の顔に乗った瞬間に急にしっくりこなくなる。
鏡の前で、あ、違うな、となる。
違うというか、惜しい。
本当に惜しい。

もうワンサイズ。
いや、正直に言うと、あと二サイズ大きければいいのにと思う。

それだけで、かなり違う。
世界がもう少し私に追いつく。
でも現実には、世の中のかわいいメガネはだいたい小さめでできている。
たぶん小さいほうが今っぽいのだろうし、軽やかにも見えるのだろう。
その理屈はわかる。
でも、こっちにも事情がある。

私はメガネが好きなのだ。
好きだからこそ、妥協したくない。
似合うからかける、というより、好きだからかけたい。
好きなものをちゃんと好きなまま顔に乗せたい。
その気持ちがあるから、なおさら悔しい。

コンプレックスというのは、ただ嫌いな部分があるという話ではないのだと思う。
好きなものとぶつかった時に、急にカタチになる。
普段はそこまで気にしていなくても、メガネ売り場に行くと急に思い出す。

世界、ちょっと小さすぎるな、と。

でも、だからといってメガネを嫌いになるわけではない。
むしろ逆で、好きだからこそまだ探してしまう。
これならいけるかも、今度こそちょうどいいかも、と思ってまた試す。

たぶん私は、似合うメガネを探しているというより、自分の顔とちゃんと仲良くできる一本を探しているのだと思う。

顔がでかい。
それは事実である。
でも、できればその事実に負けずに、好きなメガネをかけたい。

だから私は今日も、心のどこかで思っている。
世の中のメガネ、あと二サイズ大きくなってくれないだろうか。

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