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【旅行前に】サグラダ・ファミリア予習ページ②聖堂の構造編 〜自然が語るもの〜

※このページは随時追記、編集しています。

ガウディは、建築学校で物理学や数学を学んでいました。
しかし、彼の設計は数式によって導かれたものではありません。

彼が徹底して観察したのは、自然でした。

木々はどのように枝分かれし、自らの重さを支えているのか。
柱は、本当にまっすぐ立つ必要があるのか。
そもそも、自然界に完全な直線は存在するのか。

「ガウディは直線を嫌った」とよく言われます。
しかし実際には、彼は直線そのものを否定したわけではありません。

自然の中に存在しない、意味のない直線だけを用いなかったのです。

実際、ガウディ建築にも自然界にも、構造的な直線は数多く使われています。

ここで重要になるのが、双曲面と放物面です。

放物面の中でも、特に多用されたのが双曲放物面です。
これは、互いにねじれた二つの辺のあいだを直線で結んでいくことで自然に現れる曲面で、すべて直線の集合として構成されているにもかかわらず、形は馬の鞍のように二方向へ反った姿を持ちます。

この形は、力を一点に集めず、枝分かれするように分散させるため、構造的にきわめて合理的です。
ガウディは、この分岐する構造に三位一体の象徴的意味を重ね合わせ、力学と宗教的象徴とを同時に建築の中へ織り込みました。

もう一つ用いられているのが双曲面です。
円柱をねじり、中央をくびれさせた砂時計のような形を持ち、これもまた直線(母線)だけで組み立てることができます。

双曲面は、窓から差し込む直進する太陽光を受け止め、形そのものによって整理しながら、空間全体へと導きます。
光はここで集められるのではなく、時間とともに表情を変えながら、内部に満ちていきます。

次に、二重螺旋構造について見てみましょう。

サグラダ・ファミリアの柱が、石楠花の枝のように分岐しているのは、装飾のためではありません。
自然の中に存在する「力の流れ」を、そのまま建築に写し取った結果です。

柱は二重螺旋構造を持ち、上へ行くほど断面が変化し、分岐し、細くなっていきます。

ギリシア建築の柱が、下から上へとほぼ一定の断面を保ち、垂直に荷重を受け止めることで美しさと安定を両立させていたのに対し、ガウディは力を一点に集めるのではなく、枝分かれさせながら分散させる方が、自然に近いと考えました。

建築において、重力は本来「敵」とされる自然の力です。
建物は常に、自らの重さによって下へ、外へと引き裂かれようとします。

ガウディは、その重力に逆らうのではなく、受け入れ、流し、形へと変えました。

ガウディの最大の発見は、この重力を敵ではなく、味方にしたことでした。

彼が行ったのが、いわゆる「逆さ吊り実験」です。

天井から糸を吊るし、その途中に重りを取り付ける。
すると、糸は自然に曲線を描きます。

この自然に生まれる曲線を、カテナリー曲線と呼びます。

そこに働いている力は、重りを下に引く重力と、糸を上に引く張力の二つだけです。

余計な力は、一切ありません。

この状態をそのまま上下逆にするとどうなるか。
今度は、地面から受ける力だけで安定する形になります。

それが、最も合理的に力を受け止める構造でした。

この構造思想は、サグラダ・ファミリアでいきなり完成したわけではありません。

ガウディは、コローニア・グエル教会において、逆さ吊り実験の結果を実際の建築として試しています。

傾く柱、ねじれた壁、直線を拒む空間。

そこは、サグラダ・ファミリアに至るための、いわば「原寸大の実験場」でした。

コローニア・グエル教会の建設中に依頼者のグエルが亡くなったことで、中断になりました。この教会は現在も未完成ではあるものの、ガウディの思想と構造実験が最も純粋な形で表れた建築として、世界遺産に登録されています。

そこで得られた構造の答えが、そのままサグラダ・ファミリアへと引き継がれていきました。

ゴシック建築は、神に近づくためにできるだけ高く、大きな窓を持ち、壁が薄いという特徴があります。
しかしその構造上、重たい天井からの重力は、下だけでなく外側にも逃げようとします

そのため、外壁を支えるために「フライング・バットレス」が必要でした。

一方、サグラダ・ファミリアには、そのフライング・バットレスがありません。

理由は明確です。
この聖堂には、純粋に垂直な柱が一本も存在しないからです。

逆さ吊り実験によって導かれた力の流れを、
枝分かれする柱として、そのまま地面へと伝えている。

この柱構造は、力を受け止めるだけの存在ではありません。

枝分かれすることで天井を面ではなく「点」で支え、結果として大きな窓を可能にしました。

サグラダ・ファミリアの内部が、森の中のように明るく感じられるのは、装飾のためではなく、全て考え抜かれた構造の必然なのです。

ガウディは、自然にすでに存在していた答えを、ただ建築として「見える形」にしただけでした。

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