【旅行前に】サグラダ・ファミリア予習ページ①石の聖書編 〜彫刻が語るもの〜
※このページは随時追記、編集しています。
サグラダ・ファミリアの正式名称は
「聖家族贖罪聖堂」です。
聖堂の構成は、中心にイエスの塔、その後ろにマリアの塔、イエスの塔を囲むように4つの福音書家の塔、3つのファサードに4つずつあるのが、十二使徒の塔です。
サグラダ・ファミリアの塔や彫刻には、聖書に登場する人物たちが厳密な意味を持って配置されています。
聖家族(Holy Family)とは
神の子イエス、聖母マリア、そして養父ヨセフの3人を指します。
この聖堂には、
イエスの塔とマリアの塔はありますが、
「ヨセフの塔」は存在しません。
それは一見、不思議に思えるかもしれません。
理由のひとつは、ヨセフがイエスの教えを直接布教した人物ではないからです。
しかし実は、サグラダ・ファミリアはヨセフを非常に重要な存在として扱っています。
建築が始まった1882年3月19日は、聖ヨセフの祝日でした。
表に出る象徴は少なくとも、この聖堂の根幹にはヨセフへの深い敬意が込められています。
福音書家(Evangelist)とは
以下の4人です。
マタイ
英:Matthew / 西:Mateo
別名:レビ
特徴:福音書家/象徴:天使(人)マルコ
英:Mark / 西:Marcos
別名:ヨハネ・マルコ
特徴:福音書家/象徴:獅子ルカ
英:Luke / 西:Lucas
別名:—
特徴:福音書家/象徴:雄牛ヨハネ
英:John / 西:Juan
別名:ゼベダイの子ヨハネ
特徴:福音書家/象徴:鷲
福音書家の塔の上部にはそれぞれの象徴を表す彫刻があります。
十二使徒(Twelve Apostles)とは
以下の12人です。
ペテロ
英:Peter / 西:Pedro
別名:シモン(Simon)
特徴:十二使徒の筆頭、教会の礎。「天国の鍵」を託された人物アンデレ
英:Andrew / 西:Andrés
別名:ペテロの兄
特徴:最初にイエスに従った弟子の一人、宣教型の人物大ヤコブ
英:James / 西:Santiago
別名:ゼベダイの子ヤコブ
特徴:最初の殉教者、雷の子の一人、スペイン守護聖人ヨハネ
英:John / 西:Juan
別名:ゼベダイの子ヨハネ
特徴:ヨハネ福音書・ヨハネ書簡・ヨハネの黙示録の著者フィリポ
英:Philip / 西:Felipe
別名:—
特徴:理知的で質問の多い弟子、ギリシャ世界への橋渡し役バルトロマイ
英:Bartholomew / 西:Bartolomé
別名:ナタナエル
特徴:「心に偽りのない人」と評された誠実な人物マタイ
英:Matthew / 西:Mateo
別名:レビ
特徴:マタイ福音書の著者、元徴税人トマス
英:Thomas / 西:Tomás
別名:ディディモ(双子)
特徴:「疑い深いトマス」傷口に手、復活後に信仰を告白小ヤコブ
英:James / 西:Santiago
別名:アルファイの子ヤコブ
特徴:目立たないが初代教会で重要な指導者タダイ
英:Thaddaeus / 西:Tadeo
別名:ユダ(イスカリオテ以外)
特徴:質問型の弟子、ユダの手紙と関連づけられることもシモン
英:Simon / 西:Simón
別名:熱心党のシモン
特徴:政治的情熱をもつ背景から召された弟子ユダ・イスカリオテ
英:Judas Iscariot / 西:Judas Iscariote
別名:—
特徴:イエスを裏切った弟子
元々は裏切りでお馴染みのイスカリオテのユダが入っていましたが、裏切り後はマティアスが補欠として入っています。
マティアス
英:Matthias / 西:Matías
別名:—
特徴:ユダ・イスカリオテの代わりに選ばれた第十二使徒
ここで注目すべき点があります。
ヨハネとマタイは、福音書家であると同時に十二使徒でもあります。
※この説は現在では、別人説が濃厚ですが、サグラダファミリアの設計段階のガウディはs同一人物だと信じていたと思います。
そのためサグラダ・ファミリアでは、この二人を十二使徒の塔には含めていません。
もちろん、裏切り者のユダも含めていません。
代わりに、十二使徒ではありませんが、新約聖書において極めて重要な人物である使徒パウロと仲介人バルナバが加えられています。
パウロ
英:Paul / 西:Pablo
別名:サウロ(Saul)
特徴:異邦人伝道の中心人物、パウロ書簡群の著者、回心の使徒バルナバ
英:Barnabas / 西:Bernabé
別名:ヨセフ(Joseph)
特徴:「慰めの子」、パウロを初代教会に紹介した仲介者・宣教の同伴者
実際に、サグラダファミリアに立てられる十二使徒メンバーと配置は以下の通りです。
三つのファサード
外観を形づくる三つのファサードも、それぞれ異なる主題を持っています。
そして、ファサードはそれぞれ4本の十二使徒の塔で構成されています。
向かって左から順番通りに記載しています。
生誕のファサード:イエスの誕生(東向き)
バルナバ、シモン、タダイ、マティアス受難のファサード:十字架への道と死(西向き)
小ヤコブ、バルトロマイ、トマス、フィリポ栄光のファサード:復活と永遠の命(南向き)
アンデレ、ペテロ、パウロ、大ヤコブ
これらは、イエスの生涯そのものを石によって語る構成になっています。
このためサグラダ・ファミリアは、しばしば「石の聖書」と呼ばれます。
生誕のファサードは、ガウディが存命中に自ら手がけた数少ない部分であり、世界遺産に登録されています。
なお、サグラダ・ファミリア全体が世界遺産なのではなく、登録されているのは生誕のファサードと地下礼拝堂のみです。
受難のファサードもすでに完成していますが、制作を主導した彫刻家ジョセップ・マリア・スビラックスが、ガウディ当初の構想とは異なる独自の表現を採用したため、直線が多く、評価が分かれる場所でもあります。
一方、栄光のファサードは、現時点ではまだほとんど着手されていません。しかし実は、ここがサグラダ・ファミリアの正面入口となる予定です。
テーマはイエスの復活と永遠の命であり、新約聖書におけるまさに「大サビ」と言える部分です。完成は2034年ごろとされています。
生誕のファサードには、「JHS」というイニシャルが掲げられています。
これは Jesus Hominum Salvator、すなわち
「人類の救世主イエス」を意味します。
聖堂建築において、「上」は天、すなわち神に近い場所を表します。
重要なものほど高い位置に置かれるという思想が、ここにも明確に表れています。
そして、その JHS のさらに上には、ペリカンの親子の彫刻が配されています。
なぜ、ペリカンなのでしょうか。
中世キリスト教の伝承では、母ペリカンが飢えた子を救うため、
自らの胸を裂き、その血を与えたと語られています。
これは、無償の愛と自己犠牲の象徴です。
ガウディは、この彫刻をあえて非常に高い位置に配置しました。
近くからでは、その存在にすら気づくことができません。
それはまるで、
最も大切なものほど、近くにいると見えなくなる
と語りかけているかのようです。
サグラダ・ファミリアの彫刻は、単なる装飾ではありません。
一つひとつが意味を持ち、聖書の物語を静かに語り続けています。
まさに、石で書かれた聖書なのです。
