せんせい、ちがいまーす!長男が幼稚園でジュビロ愛を叫んだ日。
長男が幼稚園に入ったばかりのころの話。
歌の時間に「線路は続くよどこまでも」を歌った。
──せんろはつづくよ どこまでも
この曲は有名な童謡のひとつ。
みんなで楽しく歌っている中、一人だけ違う歌詞で歌う子がいた。
長男だった。
先生が気づく。
「〇〇くん?どうしたの?」
すると、長男はまっすぐ手を挙げて、先生に言った。
「せんせい!ちがいまーす!ぼくのしっているうたは、こうだよ」
そして、大きな声で歌い始めた。
しょうりはつづくよ どこまでも
のをこえ やまこえ しみずをこえて
ジュビロのしょうりは つづいてる
めざすはJリーグ カンピオーネ
ランラランララーンラ ランラランララーンラ
ランラランラランラ ランランラン ヘイ!
ランラランララーンラ ランラランララーンラ
ランラランラランラ ジュビロ!
ランラランララーンラ ランラランララーンラ
ランラランラランラ ランランラン ヘイ!
ランラランララーンラ ランラランララーンラ
ランラランラランラ ジュビロ!
なんと、うちの長男。
私が応援するジュビロ磐田のチャントを、堂々とお披露目してしまった。それも、ハンカチをタオルマフラー代わりに回しながら、クラスのお友達の注目を浴びて。
幼稚園の先生は、歌が終わるまで止めずに聞いてくれた。そして、歌い切った長男に優しく指摘してくれた。
「〇〇くん、それはお母さんと一緒の時に歌おうね。幼稚園では、『線路は続くよ』って歌います」
その日、教室へ迎えに行った私は、事の一部始終を先生から聞かされた。
「お母さんが教えた歌を、〇〇くんが元気いっぱい披露してくれました」
「線路は続くよどこまでもをみんなで歌いました。その時〇〇くんが、先生ちがいますって言って、私たちに『勝利は続くよ』って歌ってくれました」
先生は笑いながら教えてくれたが、私が大汗をかいたのは言うまでもない。ちゃんとした童謡のほうを全く教えていなかったからだ。
一緒にサッカーを見に行ったときに一緒に歌えるようにと、赤ん坊のころからチャントを歌いながらあやしていた。密かに、ジュビロサポーターへ育て上げようと思っていたので、チャントを少しずつ教えていたのは事実だ。実際にサッカーを見に行って、勝利の後いっしょに歌った楽しい思い出もある。ジュビロサポーターの私から、チャントをしっかり教わっている長男からしたら、『勝利は続くよ』のほうが正当な歌に聞こえたに違いない。
恥ずかしい思いをさせてしまったのではないかと思ったが、長男を見ると、本人はそんな様子もなく、普通にしている。
「すみません、ちゃんとした歌を教えてなくて」
焦る私に、先生は微笑んで言った。
「歌っている時の〇〇くん、とても楽しそうでした。お母さんとうたっている時、いつも楽しいのでしょうね。幼稚園では『線路は続くよ』って歌ってねといってあるから、大丈夫ですよ」
帰り道、長男はつないだ私の手をぶんぶん振りながら、「しょうりはつづくよ どこまでも」と歌った。その表情は、どこか満足そうだった。
