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こだわりと愛のあいだで|創作大賞感想

ひかりさんの作品を読んだ。

ひかりさんのお母様は揚げものを買う家で育ったが、ご結婚されてからお父様にこう言われる。

『おふくろは、買った揚げ物を食卓に並べたことはない』

食事はすべて手作りだったと、そのおかずには手をつけなかった。
手抜きだと言われたらしい。

「揚げものは、買うか家で揚げるか」より

ひかりさんのお母様は、結婚を機に「揚げものは家で揚げるのが当たり前」という価値観に直面する。結婚当初によくある価値観のぶつかり合い。夫婦関係の礎を決める要素のひとつだろう。

お母様は、ぶつかることを選ばなかった。このことをきっかけに料理本を読んだり、料理教室に通って勉強したという。私がお母様の立場なら、「何で?」と文句を言いそうなものだ。しかし時代が今と違うのもあるのだろう。お母様はお父様の意向に従い、努力で家庭を支えようとした。その姿勢に私は感動した。お母様は、忍耐強く愛のある方だったのだろう。

そんなご両親に育てられたひかりさん。お母様の作ってくださった料理のおかげで、チルド食品やお惣菜の味を知らずに育ったらしい。

食べ盛りの子供3人が満足する量を買うのは、家計的にムリだった、ってのもあるけどね、と母は笑う。
けれど、私たちの基本の『美味しい』は母の味だ。

「揚げものは、買うか家で揚げるか」より

そういう事情があるからと言って、それでも全部を作るのはきっと骨の折れることだっただろう。一から料理を勉強して、おせち料理まで全てのものを手作りするお母様の努力には、頭が下がる。お母様を支えていたのは、ご家族への愛だろう。

全てのものを手作りするということに、私は少しだけ憧れる。だから、お母様がお料理をすべて手作りされていたことと、ひかりさんがそのようなご家庭で育ったことが少し羨ましい気もする。でも、それを続けるのがどれほど大変なことか、今ならよくわかる。お母様がそれでも手作り料理を続けたことには、尊敬の念を抱いてしまう。

ひかりさんは、ご主人とご結婚されてから、マルシンハンバーグの味を知ったらしい。

ご主人は、外食や冷凍食品、お惣菜の味にも親しんできた方。対するひかりさんは、全ての料理が手作りの家庭で育った。お父様とお母様とは逆のパターンで、価値観がぶつかり合うところだ。

ひかりさんは、ご主人のご意向をくんで、冷凍餃子やマルシンハンバーグを冷蔵庫に常備しておくようになった。ここでご主人のご意向を取り入れるところが、お母様と通ずるものがある。

自分のこだわりより、夫の満足度を優先するのも大事。

「揚げものは、買うか家で揚げるか」より

揚げものを、買うか家で揚げるか。どちらも正解であって、正解でない。家庭の形や意向に合うように、それぞれの家で納得できる方法を正解にしていくものだ。ひかりさんは、ご自身のこだわりとご主人の満足度をバランスよく柔軟に取り入れているようす。

外食には外食の楽しみがあるし、お惣菜を選ぶのも楽しい。一方、出来立てアツアツの手作り料理をいただくのも、幸せなひと時だ。ひかりさんのバランスで、それぞれのいいところを取り入れている現在が、ひかりさん一家にとっての正解ではないだろうか。

それにしても、魚フライの描写がおいしそうで、読んでいるうちにお腹が空いてきてしまうエッセイだった。手作りのタルタルソースなんて、絶対おいしいに決まっている。今度お総菜コーナーに寄ったら、魚フライを買ってしまいそうだ。

家族の温かさと愛があふれた、素敵なエッセイだった。
読ませてくださり、ありがたかった。

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