たかがアイス、されどアイス。子どもたちがくれた元気のビエネッタ
まったく、子どもというものは油断ならない。
ある日のお昼、2人の息子がスーパーへアイスクリームを買いに行ってくれた。わが家の冷凍庫にアイスのストックがなく、どうしても食べたいと子どもたちが騒いだためである。徒歩1分のコンビニでなく徒歩5分のスーパーのしたのは、金銭感覚がしっかりしている長男の提案だ。
「コンビニのアイスは色々あるけど、ぼくの好きなアイスを安く買えるのはスーパーだからね」
2人そろって元気よく出かけたものの、不思議となかなか帰ってこない。スーパーで2人だけの買い物なんてほとんどしたことがないから、手間取っているようだ。アイスを選ぶのに時間がかかっているのだろうか。それともスーパーが混雑しているのだろうか。それとも道中で何かあったのか。
少し心配していたら、外から駆け足の音が聞こえてきた。
「ただいま!」
2人は飛びこむように玄関に入ってきた。
息が上がっている。
「おかえり。走って帰って来たの?」
「うん、アイスがとけちゃうと思ったから、あわてて帰って来たよ」
二男は私に説明した後、冷凍庫めがけて走っていく。
長男がお釣りとレシートを渡してくれた。
レシートを見た時に、あることに気づく。
「あれ?数多いじゃない?2人分じゃないね」
私が子どもたちに声をかけると、長男が言った。
「ああ、それはね。お母さんにもアイスを買ったからだよ」
続けて二男が言う。
「じゃーん!お母さんが好きなビエネッタだよ。しかも3個!」
二男は冷凍庫を開けて見せてくれた。そこには、もうすぐ販売終了になるビエネッタが3つ、行儀よく並んでいた。以前私がビエネッタ終売のニュースを見た時に悲しんでいたのは、子どもたちも見ていたはずだ。私がビエネッタ好きというのは、家族の周知の事実である。
それにしても、今や希少価値のビエネッタ。確か前に買った時は、数量制限があったはずだ。大丈夫だったのだろうか。
「3個も!どうしたの?数に制限あったでしょ」
不思議に思っていると、長男が説明してくれた。
「おひとり様2個までって書いてあったよ。並んでたのが3つあって、ぼくたち2人だから、全部買えると思って。だから全部買ってきたの」
私は戸惑いながらもお礼を言った。
「ありがとう。3個もあるけど、いいの?みんなで食べる?」
さすがにひとりで食べるわけにはいかないだろうと思っていたら、二男が大声で言った。
「それ全部、お母さんのだからね!お母さんが大好きなビエネッタ食べれば元気になると思ったから、3個買ったんだよ。お兄ちゃんがお母さんにチョコモナカジャンボ買おうとしていたけど、ビエネッタのほうが喜ぶと思って」
実をいうと、この日の前日まで私は入院していた。1週間の入院中、夫と息子たちで協力して家事を回してくれたのは知っている。入院前の私の不調ぶりを知っていただけに、息子たちが私を心配してくれているのは夫から聞いていた。正直、子どもにまで心配をかけていることに罪悪感があった。でもそれ以上に私は弱っていたので、子どもの心のケアまで気が回らなかった。
きっと、私が不在の間は不安だったに違いない。逆の立場なら、私だって心細いもの。なのに、子どもたちは私を元気づけることを優先してくれた。まだ本調子でない私の涙腺はすぐに緩み、視界がにじんだ。
本当にありがとう。うれしいよ。
たかがアイス3個ばかりで、と思う人もいるかもしれない。でも、今の私にとってはどんな薬よりも元気をくれるものだと思う。子どもたちの願いが詰まったビエネッタは、濃く輝いて見える。
記念に、テーブルに並べて写真を撮ろうとした。
しかし、涙でピントが合わず、色合いも微妙になってしまった。
それでも、このビエネッタが私の宝物であることに変わりはない。食べたらもっと元気が出るかもしれないけど、もったいなくてまだ食べれずにいる。

