温かく私を救う。/吉本ばなな『幸せへのセンサー』
吉本ばななさんの『幸せへのセンサー』を読んだ。
ビジネス書や文章術の本をずっと読んでいたからか、文章が優しく感じられる。背中をトントンとしてくれるような、あたたかい本。
この本を読んで、吉本ばななさんの柔らかいものの見方に、思わずうなってしまった。同時に、こわばった心をマッサージしてもらった感覚になった。
ホッとする言葉が、私の心に沁みていく。
時間やタスクに追われて、余裕がなかった私の心。
いつの間にか、自分の幸せを置き去りにしようとしていたようだ。
積読からこの本を手に取ったのは、心からのSOSだったかもしれない。
最初はビジネス書のようにササっと読み進めた。ところが、だんだん心がほぐされ、気づくとゆったりとした気持ちになり、ペースを緩めてページをめくるようになった。
前にも書いたかもしれないが、私はせっかちだ。だから、すぐに結果を求めたくなる。そんな私に、痛く刺さった箇所がある。
もっとこうあるべき、もっとこうじゃないといけないって自分を追い込んで、気が付いたらコントロールフリークになっている。それって、自分にダメ出しし続けているようなものですから、幸せを感じにくい状態ですよね。
それって、本当に全部、やりたいことなんですかね。
良く言えば向上心が高い。でも、悪く言えば欲深い。
即断即決、やりたいことにすぐ手を出してしまう私。
気が付くとタスクだらけになって、身動きが取れなくなっていることもしばしばある。心に余裕がなくなってキャパオーバーになることもザラだ。
「コントロールフリーク」という表現が、言い得て妙だと感じる。
無意識に自分自身にダメ出しをしていたのだ。そのままの自分を受け入れられず、なりたい理想像で自分を支配しようとしていることに気づかされた。
それって、本当に全部、やりたいことなんですかね。
このフレーズが、私に響く。
このところの不調やタスクに振り回されたせいで、幸福を感じ取れなくなっているみたい。心から幸せって感じられたのって、いつだったかな。
何が耐えられて、何が耐えられないか。
何が好きで、何が嫌いか。
人によって違うし、そういうセンサーをせっかく持って生まれてきたのに、現代に生きる私たちはそれをわざわざ取り外す訓練をしてきたわけです。
この箇所、すごく共感した。
周りに合わせることに気を配りすぎた結果、私は自分の気持ちを言えなくなった過去があるからだ。
自分の意見より周りの意向。
当時の私は、投げやりだった。
どうせ自分の考えなんて、言ったところで採用されない。ならば、周りに合わせたほうが楽だと思い、ずっと自分をごまかし続けた結果、自分の気持ちが分からなくなった。
その時に比べれば、今はずいぶん自分を表現できるようになった。しかし追いつめられると面倒くさくなって、周りに合わせてしまう。
自分のセンサーを信じて、ちゃんと感じること。
自分に向き合って、生きることをサボらずにいたいと思う。
『幸せへのセンサー』は、私を優しく諭してくれた。
共感できるところもあり、教わっているような気持ちにもなり、私にとっては不思議な一冊だった。
心が疲れている時に読んだから、作品が持つ温かさに救われた気がした。
私の幸せへのセンサーが鈍ったときに、また手にしたい。
