地味だなんて言って,ごめんなさい「吉原殿中への謝罪文」
「吉原殿中(よしわらでんちゅう),売ってるところ,知らない?」
息子が尋ねてきた。
「近くのスーパーで売ってるよ」
と私。
「それがさ,行ってみたけど完売で,入荷の予定もないんだって…」
「えっ? あの吉原殿中が?」
「そうなんだよ」
「でも,なぜ吉原殿中なの?」
「帰省の土産にリクエストされたんだ。俺も『えっ,吉原殿中?』と思ったけど,食べてみたいって言うからさ」
みなさんは,「吉原殿中」をご存知だろうか。
吉原殿中とは,もち米,水あめ,砂糖,きな粉を使った棒状のお菓子で,江戸時代末期の水戸藩で誕生したといわれている。
見た目は,「素朴」と言えば聞こえはいいが,正直なところ,見栄えの点ではいまひとつ(あくまで個人の感想)。そのため,今まで土産の選択肢に入れたことはなかった。
また,スーパーや駅,サービスエリアなど,どこでも見かける安心感からか,自分用に買うこともめったにない。
最後に食べたのは,おそらく10年以上前になると思う。
その吉原殿中が,品切れと聞いて驚きを隠せなかった。
3軒のスーパーに電話をかけ,ようやく1軒だけ在庫があることが判明。しかも残り数点だという。急いでその店に向かい,なんとか手に入れることができた。
息子の話によると,店員さんに聞いたところ,この時期はいつも品薄になるのだとか。きっと帰省の手土産として重宝されているのだろう。
「箱入りとバラ売りを買ったから,バラの方を食べてみない?」息子の誘いで,数十年ぶりに口にしてみた。
その瞬間,息子と顔を見合わせ,「美味しいね…」
二人の声が重なった。
美味しい!
すごく美味しい!
前食べたときよりも,数段美味しくなっている!
昔は,きな粉が散らばってむせたり,口の中の水分を奪われたりするイメージがあったが,今回はそんなことはなかった。
水あめのやさしい甘さ,サクッ,もちっとした米の食感,そしてきな粉の香ばしさ。
「あと引く美味しさ」とは,まさにこのことだろう。今まで食べてこなかったことを悔やんだ。
この出来事を夫に話すと,
「そうなの?今まで,『殿中』は『眼中』になかったなあ」
と驚いていた。
お土産のリクエストがなければ,この美味しさを知らずに過ごしていただろう。
ネットで調べると,一口サイズに砕いてバニラアイスと合わせるのも美味しいらしい。近いうちにぜひ試してみたい!
ちなみに,この一件で長年「よしはら」だと思い込んでいた読み方が,正しくは「よしわら」であることも判明した。
これも嬉しい収穫である。

