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「空がきれいですね」美しい夕映えと機内での記憶

NHKのドラマ「風、薫る」を見ていますか。

私は毎日録画して見ています。

今週は、胸を打つエピソードがありました。

主人公のりんが看護師見習いとして働く病院に、侯爵夫人の千佳子が入院してきます。

千佳子は命に関わる病を患いながらも、なぜか手術を拒み続けていました。

担当になったりんは、彼女の心に寄り添おうと懸命に尽くします。

あるとき、りんは千佳子からこんな思い出話を聞きました。

祝言の日、緊張と恥ずかしさで一言も発せずにいた彼女に、夫が「空がきれいですね」と声をかけたといいます。

「空をきれいだと言える人が夫で良かった」と千佳子は思ったのでした。

この話を聞いたりんは、千佳子の夫に彼女の想いを伝えます。

夫は千佳子に向き合い、「これからも毎日、毎月、毎年、君と一緒に美しい夕映えを見たい。お願いだから手術を受けてほしい」と心から訴えました。

その真摯な願いに動かされ、千佳子はついに手術を受ける決意を固めます。



「空がきれいだという人が夫で良かった」

この言葉を聞いて、私はある出来事を思い出しました。息子がまだ1歳だった頃の話です。

夫の仕事の都合で、家族でフランスへ赴任することになりました。

初めての海外生活、しかも幼い子を連れての出発。

期待よりも不安が勝っていた私の動揺が伝わったのか、出発前夜、息子が熱を出してしまいました。

「このまま飛行機に乗っても大丈夫だろうか」とかなり悩みましたが、空港の診療所で受診し、私たちは出発を決行しました。

しかし、慣れない機内で息子の体調はさらに悪化してしまいます。

一睡もできずに息子をあやし続ける中、いよいよ着陸という時に、さらなる不安が頭をよぎりました。

機内で三度も嘔吐していたため、降機時の混雑の中で、また戻してしまったら周囲に迷惑がかかると心配になったのです。

「先に降ろしてもらえるように、お願いしてみない?」

私がそう言うと、夫は「そうだな」と頷き、近くの乗務員に声をかけました。

「すみません。子どもが体調を崩しており、何度も戻しています。降りる際、他のお客様にご迷惑をおかけしてはいけないので、先に降ろしていただくことは可能でしょうか」

この言葉を聞いた瞬間、「ああ、この人が夫で良かった」と心から思いました。

もし、私ひとりだったら、「子どもが病気なので先に降ろしてください」と、自分たちの都合だけを伝えていたでしょう。

「他のお客様の立場」をまず考える夫の冷静さと優しさが、心に沁みました。

夫の願いを聞いた乗務員の方々の対応は、非常に迅速でした。

「体調の優れないお客様がいらっしゃいます。道をお開けください」

周囲に声をかけながら誘導してくださり、私たちは無事に飛行機を降りることができました。



あれから時が過ぎ、何かの拍子にこの話を思い出して、成人した息子に伝えたことがあります。

「あの時は、本当に大変だったんだよ。でも、お父さんはとても冷静で頼りになってね。この人と結婚して本当に良かったと思ったんだよ」

「そんなことがあったんだね。お父さん、すごいね」
息子は、どこか誇らしげに微笑を返してくれました。




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