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消えゆく車中の風景:ビールと笑い声

新千歳空港駅で,札幌行きの電車に乗ったとたん,お酒の匂いにむせた。
通路をはさんだ席で,スーツ姿の男性4人が,席を向かい合わせにしてビールを飲んでいた。

しかも声が大きくて,うるさい。
電車の中で,静かに過ごしたかった私は,ちょっとがっかりした。

どうやら職場の仲間のようで,年長者と思われる1人がメインで話をしており,他の3人は聞き役に徹している感じだった。
その話が,他人には関係のない,どうでも良い個人的武勇伝。

聞こうとしないのに耳に入るので,こちらとしては迷惑だし,聞かされている部下はもっと気の毒だと思った。

しばらくして,こういう光景,最近見かけなくなったと思った。

華やかな装いに大きな引き出物を提げた結婚式帰りの若者グループ,葬式帰りの高齢者グループも,以前より減ったように感じる。


子どもの頃,ボックス席に腰かけて,ゆっくりと流れる窓の景色を見ながら駅弁を食べるの楽しみだった。

お茶は白いポリ容器に入っていて,ふたがコップになった。
買ってすぐに飲むと,熱すぎてやけどしそうになるし,冷ましすぎてもダメで,美味しく飲む「頃合い」が難しかった。

夏の子ども会行事。
汽車の中で食べた,雪印のカップアイス。
あの水色のパッケージ,好きだったな。
ちょっと大人ぶって,コカ・コーラを飲む子もいたっけ。

大人になってからは,見ず知らずの隣の席の人と世間話で盛り上がることもあったし,冷凍ミカンや飴を分けてもらうこともあった。


ふと我に返り,周りを見渡すと,新聞を広げたり,本を読んだりする人もいなく,酒盛りの4人以外,乗客のほとんどはスマートフォンの画面を見ていた。

電車の中の風景も,時代と共にすっかり変わってしまった。

昔は,電車に乗っている時間をもっと楽しんでいたと思う。
現在では,いかに早く目的地に着くかが重要になり,移動手段としての役割が強くなったように感じる。


始めはうんざりだったボックス席での酒盛りだったが,次第に,古き良き時代の懐かしさが込み上げてきた。
ノスタルジックな気持ちに浸っていると,電車は終点の札幌に到着した。



あのときの時間を取り戻すために
文化の担い手だった鉄道の役割を感じるために

「各駅停車の旅に出たい」
そう思いながら,ホームに降り立った。


以下の写真は,2024年夏,北海道博物館で開催された第10回特別展「みんなの鉄道ーがんばれ!地域の公共交通ー」で撮影したものです。










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