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フィンランドと日本の修士課程(理系)、どっちの方がいい?

フィンランドの修士課程に出願するとき、これは大きな賭けだと思った。

受かるかもよくわからない海外大学院合格に向けて、時間、労力、お金をかける価値が本当にあるのかと悩んだ。日本の研究力は高いと思うし、魅力的な研究だってたくさんある。わざわざ海外(しかもアメリカなどのメジャーな場所ではなく)で修士を取ることが、本当に、自分にとって有益なことなんだろうかって…

まあ、フィンランドの理系修士を目指す人なんてそういないと思うけれど、誰かの参考になれば良いと思って、学びや研究という観点からフィンランドの修士課程を振り返ってみる。

カリキュラムの違い

私が修了したフィンランドの修士プログラムは、120 ECTS (ヨーロッパの単位:2 ECTS = 日本の大学の1単位くらい)を取ることが条件であり、内30 ECTSは修士論文プロジェクト・研究だ。2年で修了するのが目安なので、半年で30 ECTS取る感じだ。

授業の量としては、日本の忙しい理系学士と同じくらいだと思った。講義だけのものもあるが、やたらとグループワークが多い印象。初めての留学ということもあって、最初の半年は受験生並みに勉強していた。授業が少なめで研究中心の日本の修士と比べると、多くの勉強量を要求される。でも、他のプログラムや他の大学の授業を含めて、幅広く興味あるものを受講できるのが楽しく、そこまで苦に感じなかった。

修論プロジェクトの違い

この修論のシステムが日本とかなり違う。そしてこれが修士2年間で1番私を苦しめた。

日本の修士の多くは、入学と同時に研究がスタートし(または学士の途中から)、2年かけて研究して、みんな同時期に発表・提出・修了というのが一般的だろう。自由度は低いが、自分で時期など決めなくて良いという点で楽ではあり、平等だ。(間違ってたらごめんなさい)

研究室選びがめっちゃストレス

一方、フィンランド。まず研究室選びから大変
まず、修論をやる研究室を決める前に、実習という形で興味あるラボで短期間研究できるシステムがある。これ自体は、修論前にいろいろな研究室を体験できるという点で良いのだが、始めるのが一苦労。学生がPI(研究室の長、教授とか)にメールを直接送らなければならず、そして忙しいPIらは当たり前にメールを返さないからだ。だから、たくさんの研究室にメールを送り、一週間経ったらリマインドを送り…返信が返ってきた数少ない研究室のうち、なんとか面接までこぎつけて実習ができるという感じで、かなりの長期戦。修論の研究室探しも同様。
これは私のメールの文章や経歴が悪いからとかそういう話ではなく、教授がメールを見逃す、現在新しいメンバーを受け入れてないとか、ほぼ運によるもの。本気で入りたい研究室から全く返信が来なかったら、その研究室の博士学生にメールを送ってどうにか教授と連絡取ろうとするなど、とにかく自分で行動する必要がある。自主性が問われる。
研究室も、時期も、期間も、全部自分で決める。受け身社会の日本人からすれば、自主的に動き、決めていくのはかなりのエネルギーが奪われる。時期が来れば先生たちが研究室選びをセッティングしてくれた日本の学部時代との差が大きすぎて、精神的にかなり疲弊した。

修論研究にかける時間が人それぞれ

実習や修論プロジェクトを始める時期を自分で選べるという点で柔軟性が高いといえばそうなのだが、実は不平等でもある。修論にかけられる時間も人それぞれだからだ。

一応シラバスには4ヶ月フルタイムくらいの仕事量で修論プロジェクトをやることになっているが、これはただの目安である。実際にはだいぶ前から実習やリサーチアシスタントとして同じ研究をしている人もいれば、本当に4,5ヶ月で終わらせる人もいる。特に、学費の関係で卒業する期限があるEU外の私たちは、修論をもう少し良く仕上げたいから卒業を遅くする、なんてこともできない。評価は相対評価ではないものの、4,5ヶ月で研究して論文にしたものと一年以上かけているものが修論として同じ土俵にあがるという…まあ、本気で良い評価欲しかったら、早めに修論研究を始めれば良いわけだが…上述の通り、研究を始めること自体がそう簡単ではなく、運なのである。

4ヶ月の研究で何ができる?

4ヶ月フルタイムが目安なくらいなので、研究に2年かける日本の修論と比べると、フィンランドの修論はあまり高いレベルを求めてないといえる。学士論文でさえ一年かけて研究していたので、それよりいいものなんて書けるわけないだろなんて思いながら、なんとか研究して、なんとか結果らしいものを出して、なんとか修論にした。面倒見のいい教授ではなかったのでほぼ自力だった。期限までに卒業できるか不安との戦いで、まじでしんどかった。

研究に長い時間をかけられる日本の修士の利点は修論だけではない。日本では修士学生が第一著者で論文を出すことは、そんなに珍しいことでもないということ。学士から同じ研究室にいたら3年は研究に携われ、それだけ論文に名前を載せられるチャンスが大きいということだ。授業中心というカリキュラム上、研究室歴が浅いフィンランド(またはヨーロッパ)の修士学生が、第一著者で論文を出すというのは偉業だと思う。

また、日本では、海外の学会に行く機会がある修士学生もいると思う(研究室にもよる)が、フィンランドではかなり珍しい。論文を出すのも、外国の学会に行くのも、基本的には博士から、という感じがする。

日本のカリキュラムの方が研究を早く始める、そして長く続けることができるので、その分ヨーロッパの修士学生よりずっと研究者として前に進んでるように見える。

【結論】

やりたい研究が決まっているなら日本の修士の方が断然いい。自分の視野や可能性を広げたかったら海外修士に挑戦するのもいい。

こう見ると、研究経験や業績を早めに得ることの優先順位が高いなら、日本の修士の方が圧倒的に良いと思う。修士出願のタイミングでもうこの研究やりたいって決まってて、将来的には研究職で早くから活躍したいという人は特に。(まあ、“できるだけ早めに”みたいなのって日本人的な狭い考えだとは思うが)また、仮に博士課程で海外に出たいと思っても、修士で論文出したり学会で発表したりしていれば、ヨーロッパの多くの修士学生より抜きん出ていて評価されやすいのではないかと思う。

反対に、将来研究したいかは決まっていなかったり、自分の興味ある分野を探しているような人は、フィンランドのカリキュラムの方が向いていると思う。たくさん授業がとれたり、複数のラボを回れたり、視野を広げられるような機会がより多いはずだ。授業以外でも、海外生活や外国の友達との関わりを通して、新しい気づきがたくさん得られる。そして、海外の大学で学位を取ることは海外就職や移住の礎になるということ、つまり自分の生活圏を拡大する、自分の可能性を広げるということでもある。やっぱりこれがフィンランドで修士をする一番のメリットだと思う。

ちなみに、私が日本の修士と迷った時にフィンランドを選ぶ決め手となったのは、日本で過ごす修士2年間が見え透いていて、全然わくわくしなかったこと。20代前半という貴重な時間を、もっとわくわくすることに費やしたいじゃないか。それに、当時は研究よりも講義でもっと学びたいと思っていた。そして、とにかくフィンランドに住んでみたいという気持ちが強すぎたから笑。

だから、フィンランドで修士を取ったこと全く後悔していない。(今、無事にフィンランドで博士課程をやれているということもあり)

ただ、日本の修士課程って研究者になりたい人には結構良いよねって、思った話。

追伸:ワークライフバランスや女子比率が高いことによる居心地の良さは、比較するまでもなくフィンランドがいいよ:) 

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