漢文を立体化する~オントロジーで古典文章をとらえる新しい知的体験
漢文というと、まずは高校で学習する短文を対象にして、中国の文化なども学びながら、レ点、一二点、構文と固有の言い回しを勉強するところから入る。いまでは訓読という古い言い回し自体も覚えなければならないかもしれない。勿論覚えれば点数になるというので、人によっては重宝する受験科目かもしれない。
ただ、漢文の面白さはそこにあるのではない。実に深い人間知が書かれている。ただ、そこに至るまでには、もう一つ困難なところがある。それは漢文を「眺める」こと自体の難しさだ。
漢文とは、中国語のことだ。実際には、数百年前の中国で執筆された文章と、江戸時代までに日本人により執筆された漢字だけを使った文章のことといえるだろう。一般の文章なのだから、昔の人の書いた本だと言って、短い文ばかりではない。
現代文なら、眺めるだけ、もしくは斜め読みして、大体構成を見て、読んでいくことが出来るだろうが、なかなかこれが難しい。そもそも短い文であっても難しいのだ。
そこで、私こと仰山門@人文・産業データ構造は漢文の構造そのものを空間的に再配置するソフトウェアを開発した。
漢文を「単なる文字列の連なり」としてではなく、章・節・文が有機的に結びついた「データ構造」として捉え直すようにしたのだ。
従来の書籍や電子テキストは、どれほど内容が深くとも「1次元の文字列の並び」あるいは「2次元の紙面」という制約に縛られている。そのため、原文・訓読・現代語訳・注釈を行き来するには、視線を激しく動かしたり、ページをめくったりして、脳内でバラバラの情報を統合する負荷がかかっているのだ。
このソフトウェアでは、漢文の構成を「ツリー構造」として可視化する。ツリー上のノードを選択するだけで、それに対応する原文、訓読、現代語訳、そして細かな注釈が、まるで結晶の軸が揃うように一瞬で同期する。テキストを「読む」という単調な行為が、構造化された知のネットワークを「ナビゲートする」という、立体的で能動的な知的体験に変わるのだ。
ウェブのページのようにリンクされている、という考え方をするかもしれないが、文章にある入れ子的な骨格にそって眺めて、文を読むということができるのである。
では実際に『臨済録』を示してみよう。このツールは本を読み解くときに驚くほど直感的に機能する。

ツリー構造から特定の「節」を選択すれば、即座に該当箇所の原文、訓読、現代語訳がそれぞれのウィンドウに表示される。さらに特定の語句(例:「喝」)について疑問を持てば、全文を横断検索してその用例を瞬時にリストアップしたり、Web辞書を直接呼び出して意味を補完したりすることも可能だ。

特筆すべきは、Annotation(注釈)機能の心地よさである。読み手が自身の解釈や調査結果を「注釈」としてノードに紐付けていくと、そのデータは単なるメモに留まらない。本ソフトは国際規格であるOWL(Web Ontology Language)形式のRDFファイルとして情報を保存するため、漢文の知識がデジタルな資産として蓄積されていくのである。

このソフトウェアの真の面白さは、完成した知識を消費するだけではなく、自らの手で「漢文のオントロジー」を拡張・編集できる点にある。
ユーザーは、ただ提供されたテキストを読むだけでなく、自分が読み解いた解釈や独自の章立てをシステムに流し込み、自分だけの「知識グラフ」を構築していくことができる。それは、古の知恵を現代の技術でハックし、自分だけのデジタル書斎として育てていくという、モノづくりにも似た知的生産の愉しみだろう。
※コメントを付けたり、注釈を追加できる。またテキスト中に(漢文、訓読、訳)にテキストを直接追加可能だ。
古典と向き合うとき、私たちは時に迷い、立ち止まる。しかし、テキストを立体化し、独自の地図を描くことができれば、その迷いは知的な深みへの足がかりになるだろう。地図に自分の考えを書き込んでいくのだ。「漢文オントロジーUI」で、あなただけの古層の知の探検が見えるようになるはずだ。
ソフトウェアはここから↓
【人文・産業データ構造】 禅や製造現場、料理など、散在する情報を横断的なオントロジーで知識化し、システムやライブラリで提供。属人的なノウハウを共有可能なコンテンツに変え、生産性と心の健やかさを両立する創作・生産の新たな知流通を実装で支援します。
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