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ジム通いを習慣化させた行動変容戦略ベスト5

▼ 文献情報 と 抄録和訳

メガスタディは応用行動科学のインパクトを向上させる

Milkman, Katherine L., et al. "Megastudies improve the impact of applied behavioural science." Nature 600.7889 (2021): 478-483.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 政策立案者は、市民の意思決定や結果を改善する方法について、行動科学に洞察を求めるようになってきている。一般に、異なる科学者が異なるサンプルを用いて、異なる時間間隔で、異なる結果を用いて、異なる介入案をテストする。このような個々の研究の比較可能性の欠如は、政策に情報を提供する可能性を制限している。この限界に対処し、発見のペースを加速するために、我々はメガスタディーを導入した。これは、同じ集団において、同じ期間、同じ客観的に測定された結果について、多くの異なる介入の効果を比較する大規模なフィールド実験である。

[方法] アメリカのフィットネスチェーンの会員61,293人の身体運動を対象としたメガスタディでは、アメリカの15の大学から30人の科学者が独立した小チームで、運動を促す合計54種類の4週間のデジタルプログラム(または介入)をデザインした。

[結果] これらの行動介入(デジタル体験、テキストリマインダー、毎週の電子メール、報酬によるインセンティブなど)のうち45%は,毎週のジム通いを9%から27%有意に増加させた.最も成績のよい介入は,トレーニングを一度欠席した後でジムを再び利用した人に対して少額の現金報酬を提供するものであった。4週間の介入後に有意かつ測定可能な行動変化を誘発した介入はわずか8%であった。介入中に運動を増加させた45%の介入を条件として、先行研究で測定されたものと割合的に類似したキャリーオーバー効果を検出した。

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✅ 図. ある週のジム訪問の可能性の変化に関する実測値と予測値:4週間の介入期間中に、プラセボ対照条件と比較して、我々のメガスタディの53の実験条件によって誘発された、参加者がジムに行くかどうかの実測変化(青)対第三者観察者による予測変化(金)がここに描かれている。エラーバーは95%信頼区間を表す。
✅ ジム通いを習慣化させた行動変容戦略ベスト5
No.1-欠勤から復帰した場合のボーナス [外発的&取引的動機づけ]
No.2-より高いインセンティブ [外発的&取引的動機づけ]
No.3-運動社会規範の共有(高い・増えている)
No.4-無料オーディオブックの提供 [外発的&取引的動機づけ]
No.5-運動不足解消のためのボーナス [外発的&取引的動機づけ]

[結論] 公平な審査員による予測では、どの介入が最も効果的であるかを予測できず、一度に多くのアイデアを検証することの価値、したがって行動科学の証拠能力を向上させるメガスタディの可能性が強調された。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

ネイチャー。
あなたは、脳という畑における最良の鍬だ。
今回の論文も、ほんとうに僕の頭の中を耕し、また豊かにした。
月並みだが、ありがとう。

さて、今回の研究結果は、ジム通いだけではなくすべての習慣化や行動変容において参考になると思う。
上記のBest5をもう一度見ていただきたい。今回の結果をみて、僕はこう思った。

(予想以上に外発的な動機付けが上位にランクしてる!)

動機付けには、僕の理解の範囲内では大きく3つが存在している。

✅ 動機づけの3種類
①外発的動機付け(取引的):成果に対する有形の報酬(金銭的報酬など)
② 外発的動機付け(関係的):成果に対する無形の報酬(従業員の意見に基づき組織が動く、表彰など)
③ 内発的動機付け:内発的動機付けとは内面に沸き起こった興味・関心や意欲に動機づけられている状態のこと

そして、この3種類の動機付けの中で、②③は能動的な履行行動につながるため、習熟につながる可能性が高い [Joshi, 2016]とされる。
一方で、金銭的報酬などの取引的な外発的動機付けは、履行行動を引き起こすことができるが、それは受動的であり[Giles, 2014; Mitchell, 2013]、受動的な履行は習熟を促さない [Angrist, 2021]。さらに、金銭報酬などの取引的報酬は内発的動機付けを減衰させるアンダーマイニング効果がある[市川, 2001]。
そんなこんなで、取引的な外発的動機づけは「あまり良くない」、内発的な動機づけは「良い」という印象がある
だが、今回の研究結果においては、外発的な動機付けが結果を残している。
これを、どう考えるか?

動機づけには、フェーズがあるのだと思う。そしてフェーズごと、至適介入が刻々と変わっていくのだ。
最初は、外発的動機付けでもいいから、その行動を継続する時期。
そこから、だんだんとその行動の利得(ジムでいえば健康や減量)に気づき、次第に内発的な動機づけに変化したり、繰り返すことで習慣化(中毒化)したりするのではないか?

スライド2

全くの未経験者に対して、
①5万円もらえるので、週1回ここで身体を鍛えてください
②健康や減量にいいので、週1回ここで身体を鍛えてください

どちらが行動に対する可燃性が高いだろうか?

明らかに後者だと思う。
ただし、可燃性と持続性は、反比例する
ガソリンはよく燃えるが、すぐ燃え尽きる。
大きく太い薪は着火しにくいが、長く燃え続ける。
外発的な動機付けはガソリン的で、内発的な動機付けは薪的だ。
キャンプにおいては、どちらがいいということはない。
どちらも使う。
着火のときには新聞紙など燃えやすいものを使い、だんだん薪に火を移していく。
要は、特徴ごとに活躍するフェーズが異なる。
今回の研究は、主に導入期のフェーズを扱ったのではないだろうか。

今回の研究におけるキャリーオーバーの、さらにその先の時期における効果的な習慣化戦略は、変わってくることが予測される。
それは主に、内発的な動機づけにアプローチしたものになるのだろうか。

ウマを水際に連れて行くことは誰にでもできる
しかし、馬に水を飲ませることは誰にでもできるとは限らない

ロシアの諺

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