「神となった俺の世界で、信者たちが国を興す」第一話


#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門

〈あらすじ〉
事故により意識不明になった吉田正義。

再び体に戻るには、別の世界で「神」となり、皆の信仰を受け、弱った精神を回復させることだった。

さっそく異世界に飛ばされるものの、そこに人間の姿はなく虫や小動物ばかり。

しかし、あることをきっかけに次々と進化していく動物たち。

更に進化した生き物たちは、皆歴史の中で名を馳せた「転生者」だった。

吉田正義の信者たちが魔族によって滅亡寸前の世界を救うため、知略・武力・外交を駆使して「理想の世界」を作る事に奔走する。

はたして主人公は無事元の世界に戻ることができるのか?

全ては神の力で何とかしなけらばならない。

〈本編〉
0

ここではない別の世界の物語。

 

この世界には、過去に存在した者や、物語の登場人物達が、過去の生き方をやり直すためにやってくる。

 

それはどの時代の者とは限らず、種族も人種も何も関係ない。

 

あるものは戦で討たれ、またあるものは病で倒れ、天寿を全うできた者もいる。

 

ただ、その全ては望んでいた退場ではなかったかもしれない。

 

そんなもの達が今一度この世界で生を受け、やり直せる可能性に賭ける。

 

ここでは過去にそんな生涯を駆け抜けた者達が、再びこの世界で新たな伝説を作る軌跡を御見せしたい。

 

今は亡き、過去の英霊たちに追悼の祈りを込めて…。

 

俺の名前は『吉田正義(よしだまさよし)』36歳。

 

早くに両親を失くし、優しいおじさん夫婦に面倒を見てもらいながら、そこそこの大学卒業後は建築関係の会社で身を粉にして働いている。

 

深夜残業、休日出勤も当たり前のこの会社、一応新入社員も入ってくるが、あまりのブラックさにすぐやめてしまう。

 

こんな生活を送っている俺に当然出会いなどなく、年齢=彼女いない歴となってしまった。

 

そんな俺の唯一の楽しみは、歴史の本を読みその世界に感情移入をすること。

 

その人物たちのいろいろなifを妄想することだ。

 

坂本龍馬がもし暗殺されなかったら?本能寺の変で信長が生きていたら?項羽と呂布が同じ時代で戦ったらどちらの方が強かったのか?桓楚の戦いで韓信が天下三分の計を受け入れていたら…。

 

忙しい中でも、そんな妄想を描いていると、つらい毎日もなんとかやっていける。

 

そして久しぶりの休みの日、突然俺の人生は終わろうとしている。

 

「ここは…どこだ?」

 

気が付くと俺はすべてが真っ白な空間に佇んでいた。

 

「あぁそうか、俺、本を買った帰りに事故にあって死んだのか…」

 

そういえば誰かを助けようとして車にひかれたのをおぼろげに思い出した。

 

とすれば、ここは死後の世界ってことだな…そう考えながら暫く付近を歩き回るが、どこまで行っても白い空間が続くだけだった。

 

「何もないなここ、俺はこれからどうなるのだろう?」

 

不安げに暫く上を眺めていると、突然何もない空間から声が聞こえてきた。

 

「…佐藤、お前一人一人に時間かけすぎ!後が閊えているから巻いて説明!わかった?」

 

「承知しました!チーフ!」

 

良い返事の後、少しの間沈黙が続く

 

えっ?どこかの会社?佐藤って人が怒られている?

 

そう言えば俺の会社にも要領が悪い部下たちをよく怒鳴っていた上司がいたな。

 

そんな俺の生前のことを思い出していると、何もない空間から俺に呼び掛けた。

 

「お待ちしていました、吉田正義(よしだまさよし)様!」

 

うん?待っていたのは俺のほうだった気がするが…

 

そんなことを考えている中、佐藤さんは超早口でいまの状況を説明してくれる。

 

「あなたは現世で交通事故にあい、現在意識不明の状態になっています。そして今、魂だけがこの空間に存在している状態です。」

「このまま離脱したままだと、魂は1年ほどで消滅しまうでしょう。」

「そんな状況の中、我々『管理者』は、あなたが無事意識を取り戻せるのを条件に一つ提案をさせて頂きます。」

「それは、これから行く世界で『神』となり、皆を導いてほしいのです!」

 

ここまでを15秒で説明した佐藤さん。

 

もはや何を言っているのか分からなかった。

 

「何か質問はありますか?なければマニュアルをお渡ししますので、早速旅立っていただきます!」

 

ちょっと待て!この人上司の圧に負けて、ろくな説明もせずに俺を異世界に送り込もうとしている!

 

「待て待て、佐藤さん!」

 

俺は空間の声を遮り質問をした。

 

「佐藤さん、上司に急かされているのはわかります。ただ私も初めての事なのでもう少し丁寧に説明していただけますか?まずここは死後の世界とは違うのですか?でなければ私は今入院しているってことですよね?あと『神』って何…」

 

「ストップ、ストーップ!!」

 

俺は丁寧に佐藤さんへ質問をしていたのだが、その質問を遮り怒った声で返事をする。

 

「まず、私は『管理者』であって『佐藤』ではありません!」

 

いやいや、時間がないって言っているのにそこ否定している場合じゃないでしょ?

 

「じゃあ管理者さんでいいので。私の質問に答えて頂けます?」

 

俺の回答に「ぐっ」といった管理者は話し出す。

 

「詳細はいちいち説明しませんので、自分でプレイしながら調べてください!」

 

俺は出来る限り大人の対応をしていたのだが、このクソみたいな返事に少しイラついた。

 

「あのですね、理由があって自分を別の世界の神にさせたいんですよね?」

 

「こんな何も知らない神様が突然現れたら、その世界の人も迷惑すると思いますよ?」

 

「その世界の人たちの為にも、もう少し詳しく教えてくださいよ」

 

俺と佐藤が言い争っていると、突然怒鳴り声が空間に響く。

 

「おい佐藤!後が閊えているって言っているじゃねぇか!さっさと終わらせろ!」

 

「すみませんチーフ!すみません!すぐ終わりますので!」

 

「ったく、マジ使えねーな、お前!」

 

先輩の声が舌打ちして去ったあと、俺と佐藤の間に短い沈黙が流れた。

 

「管理者さん、なんかすげー嫌な上司ですね」

「私の会社にも似たような上司がいましたので…負けずに頑張ってくださいね」

 

俺が励ますと、涙ぐんだ声が返ってくる。

 

「ありがとうございます。あの人皆に嫌われているんですよ…性格悪いし…。」

 

俺は同情しつつも、軽く悪口入れてくる管理者に、そういう性格だからチーフにいびられるんだぞ?と、心の中で突っ込んだ。

 

「….じゃあ、送りますね。」「いってらっしゃい。」

 

佐藤の声を合図に俺の足元に魔法陣が現れる。

 

「ちょ、本気で説明なしで送り飛ばす気かよ!佐藤マジでダメ社員じゃねーか!」

 

「私はダメ社員でも佐藤でもありません!管理者です!後でマニュアルを転送しますのでよく読んで…」

 

話が終わる前に俺はどこかに飛ばされてしまった。

 

2

気が付くと俺は静かな夜の森の中に佇んでいた。

 

自分の体を触ってみるが…うん、透けているな。どうやら実体はないらしい。

 

とりあえず神様が着ているあの白いやつは纏っているので全裸ではない。

 

試しに近くにある葉や石を触ろうとするが触ることができない。

 

次にまっすぐ進んでみる。実体はないので好きなように動けるようだ。

 

暫くすると見えない壁のようなものにぶつかった。

 

触ってみると固く、横を蝶のようなものがすり抜けて飛んでいくのを見ると、これは自分に対する結界のようだと考えられる。

 

今度はそれを触りながら進み始める。暫くすると元の場所に戻ってきた。

 

次は壁を触りながら浮いてみる。こちらも見えない天井に当たった。

 

なるほど、壁は筒状で、直径・高さ100mほどの距離らしい。

 

ここで大問題が発覚する。

 

領域内を散々探し回っても『人間』の気配がない。

 

へ?これって信仰を集めなきゃいけないんだよね?こんな人もいない森の中に説明もなく放置って…

 

半日以上放置され、怒りのピークに達した俺は、空に向かって叫ぶ。

 

「おい!佐藤!説明もなく放り出した挙句、こんな誰もいない森の中に落としやがって!信者集めたくてもここから出られないじゃないか!どうするんだよこれ?」

 

そのまま怒りを露にしながら空を見つめていると、紙をまとめた物が降ってきた。

 

拾い上げてみると、ホッチキスで止めた3枚の紙で、表紙に走り書きで「マニュアル1」とだけ書いてある。

 

裏は何かの広告なのか、管理者の世界の言葉で特売みたいなことが3枚とも書いてある。

 

要は裏紙ってことだ。

 

佐藤の奴、何処までもふざけてやがる!

 

2枚目を見ると要点が3つだけ書いてある。

 

①神になって自分の信者を増やし、信仰心を集める

②信仰心が増えると『ポイント』がたまり、信者の能力向上や『奇跡』が使える

③世界で信者が増えれば『神』の精神力も復活し、現世で復活できる

 

3枚目には操作方法が手書きで書いてある

 

「まずは『メニュー』と言ってみてください。目の前にいろいろな表記が出てきます」

 

試しにメニューと唱えてみると目の前の空間にいくつかのコマンド類が表記された。

 

(まるでゲームみたいだ…)

 

このハイテクなシステムに驚愕しながら調べ始める。

 

表記されているものは、『憑依』『アイテム』『次へ』のコマンド。

 

コマンドに関しては、表記名を呼ぶとそれが実行できるらしい。

 

ちなみに『憑依』を唱えてみたが【今は使用できません】、『次へ』は【条件達成後にアンロック】と、それぞれアナウンスされる。

 

唯一開く『アイテム』を選択すると、別の表記が広がり、先ほど拾った「マニュアル1」を何度か唱えると、先ほどもらった紙切れが、手元で出たり消えたりする、これは便利だ!

 

ただ、アイテムボックスには『マニュアル1』しかなく、ゲームでよくある初心者特典等は一切ない模様。

その中にある『スキル屋さん』を見てみるといろいろな商品?がある。

 

『領域拡大10m/100P(1日)』『各種族1言語/1500P』『憑依持続時間増加1時間/1000P~』などなど…。

 

そして右側にある数字だが、これがポイントであり、スキルを習得するたびに自分のポイントから支払われるようだ。

 

ちなみに今、視界左上に『36500/100』の数字が表示されている。

 

36500が自身のポイントで、右側の100が1日ごとに消費するポイントになる。

 

つまり、何もしなければ365日後に魂が消滅しちゃうってことだね。

 

最後に

 

「尚、表記の表示は言葉をイメージすれば出てきますので、いちいち声に出す必要はありません(笑)」

で、締めくくられていた。

 

最後の1文を読み終えた後、俺はさわやかな笑顔で呟いた。

 

そうだな…いつの日か佐藤に会えたら、絶対に1発殴ろう、と。

 

3

大まかにやることを理解した俺は、周辺の探索を始める。が、やはり領域内に人間なんかいなかった。

 

地面に座った感じでアイコンを見ていると、突然『憑依』のアイコンが光りだす。

 

付近を見渡すが何もいない…いや、空中と地面で赤いマーカーと文字が動いている。

 

【『蝶1時間/20P』・『ゴキブリ1時間/3P』どちらかに憑依しますか?】

 

へ?憑依相手って虫?

 

俺は2匹をしばらく眺めて蝶を選択した。

 

こういうのは一度やってみないと分からないしね。

 

憑依を決定にした瞬間、周りを光に覆われ目の前に巨大な草が現れた。

 

俺は体をホバリングさせ葉っぱに止まる。

 

初めての憑依にも拘らず、最初からこの体であるかのようにスムーズに動く。

 

視界は広範囲だが見渡せているが全体的にぼんやり。

 

ただ、触覚があるため周辺の匂いはよくわかる。

 

新しい世界観に感動している中、ふと正面から甘い匂いがしてくる。

 

早速パタパタと匂いのほうへ飛んでいくと、そこには一面の花畑(蝶々の大きさで)に辿り着いた。

 

俺は早速近くにある花の蜜を吸ってみる。

 

何これ?すごくおいしいんですけど?

 

俺は心の中で歓喜した。

 

ひとえに花の蜜といっても種類や色で色々な味が楽しめる。

 

甘ったるいのもあれば薄いやつもあり、フルーティーな味もある。

 

蝶って日ごろからこんなにおいしい蜜吸っているのか…

 

お腹一杯になって花の上でくつろいでいる…突然体が何かに引っ張られた!

 

何? と思った瞬間、首筋に激痛が走り

 

「ブチッ!」

 

という鈍い音とともに目の前が真っ暗になった…。

 

気が付くと元の実体のない状態に戻っていた。

 

さっきまで居た場所を見てみると、蝶を貪るカマキリの姿が見える…。

 

そうか、うっかり襲われたのか…蝶さん…俺が憑依したばかりに…

 

俺は目の前で食べられている蝶にそっと合掌した。

 

気持ちを切り替えて『カマキリ1時間/500』に憑依を試みる…が、

 

【注意:一度憑依を行ってから24時間は他の生物に憑依できません】

【注意:憑依終了後、10日以内に再憑依を行う場合、『通常ポイントの10倍が必要』となりますのでご注意ください】

 

と言う厳しいメッセージが表示された。

 

さて困ったぞ。

 

最初の24時間憑依できないはまだわかるとして、10日以内の憑依10倍は、試して確認する自分のやり方にはきつすぎる。

 

更に【精神力増加】はいまだゼロのまま。

 

現状、憑依以外の能力は使えないので、10倍使ってでも他の対象に憑依するべきだと考える。

 

幸い時間はあるので、マニュアル1に書いてあること以外で何かできないかを確認してみた。

 

ステータス!

 

心で唱えると空間に自身のステータスが表示される。

 

やっぱりあったか。しかし佐藤のやつ…本当に大事なことを一切説明せずに送り出すとは、一体何を考えて仕事をしているのだろうか?

 

俺は苦笑いしか出なかった。

 

つまり、これはネットのない世界で説明書もなしにやり直しのきかないゲームをやらされているのと同じ状況…かなりのハードモード仕様になっている。

 

とりあえずステータスを確認。

 

【氏名:よしだまさよし】

【1/1 21:35:45】

【ランク:地縛霊】

【精神力:36480】

【精神力消費:100/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【精神力増加:0/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【領域:100m】

 

ステータスを確認すると

 

【1/1 21:35:45】

 

これは現時間のようで、左から月日・時・分・秒の見方になる。

 

1/1で昆虫が活動しているという事は寒い気候ではないのだろう。

 

【精神力:36480】

【精神力消費:100/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【精神力増加:0/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

 

こちらはポイント=精神力で分かりやすく記載している

 

表示は現ポイント数・消費ポイントと増加ポイントの詳細のようだ。

 

次にランク、自分は現在【地縛霊】らしい。

 

確かに憑依しかできないし、100m内でしか動けないのでその通りではあるのだが…そもそも『神』って地縛霊が進化を重ねてなるものなのだろうか?

 

疑問には思いつつも、そういうルールだから仕方がないと割り切ることにした。

 

とりあえず『領域拡大10m/100P(1日)』を壁沿いで使ってみる。

 

見えない外壁部分が白く光り5mほど後ろに下がった。

 

ステータスで確認すると

【精神力:36380】

【精神力消費:200/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【領域:110m】

 

このまま1日待ってみると、使った瞬間に100P、そして0:00:00に100P消化。

 

つまり、使った瞬間にポイントが減り、使ったタイミングに関わらず0:00:00に再度消費するようだ。

 

ちなみに、1日待っている間、領域に現れたのは虫とトカゲ・蛇だった。

 

1日経過後は再度他の生物に憑依する。

 

今回は『アリ1日/50P』を選択、周りが光り目の前に地面が現れた。

 

体は軽く動きやすい、が、視界はやはりぼんやりで代わりに触覚が利く。

 

地面をうろうろしていると同じ仲間?アリが現れたので、触覚を合わせて会話を試みる。

 

「§※?Δ〇◇※!」

 

うん、何言っているのかさっぱりわからない!

 

ここですかさず『昆虫全言語セット/3500P』を使用、早速会話(信号)に触覚を合わせた。

会話内容は大体こんな感じ。

 

「…食事…女王様…運ブ…」

「…獲物…倒ス…集合」

「…疲レタ…休ム…」

「…シゴトシタラマケ…シゴトシタラマケ…」

「オレタチハナゼアユミツヅケル?…ワカラナイ」

 

尚、上の2つの会話は3割程度のアリしかやってなかった。

 

アリの世界も人間世界とあまり変わらないんだな…

 

とりあえず、近くにあったダンゴムシの死骸を自宅?へ運び貯蔵庫へ。

 

ついでに女王様の部屋を覗きに行くと、やたらでかいアリが卵をポコポコ産みながら愚痴をこぼしていた。

 

「毎日…毎日…卵ヲ産ムノ繰リ返シ…トテモツライ…」

 

なんか…アリの世界も大変なんだなぁと感慨にふけてしまう。

 

その後、仲間と共同してバッタを倒したり、さぼっているアリを叱咤したりとやっているうちに1時間近く経過した。

 

「ピンポーン!」の音と共に空中にアイコンが現れ、

 

「お時間5分前です。『延長1日/50P』を行いますか?」

 

カラオケの店員みたいなアナウンスが流れた。

 

ここで憑依は終了、別にアリのブラックな社会生活を堪能したかったわけじゃなかったので元に戻る。

 

憑依が終わったアリは、周りをキョロキョロしながら、スゥーと木陰に行き昼寝をはじめた。

 

4

一通りのコマンドを確認し、領域内で詳しく探索を行う。

 

領域内はほぼ森林で道もなく、領域中心に直径20mの草原がある(花畑もここにある)

 

領域外を見ると、50mほど離れたところに川が流れている。

 

ここでステータスを確認。

 

【氏名:よしだまさよし】

【1/3 17:20:33】

【ランク:地縛霊】

【精神力:32230】

【精神力消費:「200/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【精神力増加:「0/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【領域:110m】

 

川までの領域を広げると、半径50mは必要なので1000P、これを毎日消費とか現地点では無理だな。

 

だいたい、【精神力増加】が一度も発生していない。

 

いや、そもそも自分を崇拝してくれる信者候補の存在がこの領域にいない…。

 

どうしたものだと空中に胡坐をかいた姿勢で頬杖を突きながら地上を見ていると、林の中で何かが吠える声が聞こえた。

 

声のするほうを見てみると、小さなウサギが穴の前で狼に威嚇している。

 

狼の足元にはそのウサギよりひと周り大きいうさぎが絶命していた。

 

(あれはウサギの親だったのか?かわいそうだがイッヌも生きるため、仕方ないことだしな)

 

ちなみに、そこにいる子ウサギや狼に憑依を仕掛けたがレジストされる。

 

どうやら対象の精神が強い状態時には憑依できないようだ。

 

狼が子ウサギに襲い掛かろうとするが、子ウサギはさっと穴の中に隠れる。

 

そんなやり取りを何度も繰り返した後、業を煮やした狼が絶命した親ウサギで弄び始めた。

上に放り投げ地面に叩きつける。

 

振り回した後、木に投げつけ、血塗れになったウサギの頭に前足を乗せ、穴を背に遠吠えした。

 

そんな亡き親の姿を見た子ウサギは許せなかったのだろう。

 

穴から飛び出した子ウサギは一直線に狼へ体当たりを敢行する、が、それを読んでいたかのように狼は子ウサギに振り返り、体当たりを回避しつつ、首根っこに嚙みついたと同時に近くの木に叩きつけた。

 

吐血する子ウサギ。

 

更に首根っこへ噛みつき、地面に何度も叩きつけ、空に放り投げ、子ウサギはそのまま地面に落ち動かなくなった。

 

その姿を確認した狼は、再度穴のほうに向き変える。

 

穴からは2羽の子ウサギが顔だけ出して様子を見ていたが、狼の視線に気づきサッと穴に潜っていった。

狼はその穴に向かい穴を広げ始める。

 

きっと全てのウサギを捕まえる気なのだろう。

 

こいつ、ボッチ狼だし親を狩った地点で食料は確保できている。さらに子ウサギを狙うのは狩りを楽しんでいるってことか?

 

弱者が淘汰されるのは仕方がないことだし、狼の性質なんか知らない俺に回答はないが…。

 

ふと、子ウサギを見ると、憑依のアイコンが光りだす。

 

近くで確認すると、虫の息だがまだ生きているようだ。

 

『うさぎ1時間/1500P』憑依しますか?

 

いやいや、こんな瀕死のウサギに憑依してもすぐ死ぬだけだろ?

 

そのまま躊躇してアイコンを見つめていた、が、俺は決断する。

 

どうせこのままじゃジリ貧…ここはダメもとで試してみるか!

 

Yesと唱えると周りが光に包まれ、次の瞬間体にとんでもない激痛が走る。

 

こりゃ…何とかなる状態じゃない…体どころか目すら明かない…

 

意識が遠のいていくなか、新たなアイコンが表示された。

 

『体力高速回復/1500P』行いますか?

解説:周りの生物から生気を吸い取り、体の損傷を高速で治癒する(周りに生物が多いほど有効)

注意:病気や毒には効果ありません。

 

なんだ、ちゃんと解説も付くじゃないか…

 

朦朧とする意識の中、Yesと唱えた瞬間周りの草木や地面から生気のようなものが流れ込む感じがし、体一気にが回復していった。

 

目を開けるとウサギ目線で色々見えてくる。

 

少し先ではでかい狼が子ウサギの逃げ込んだ穴を必死に拡げていた。

 

自分の体の大きさを考えてもアレ(狼)に勝てる気はしない…

 

何か方法ないかと考えているうちに、新たなアイコンが表示される。

 

『リミッター解除/5分1500P』行いますか?

解説:脳にあるブレーキ(リミッター)を解除し、体の限界能力で動ける(15%上昇)

注意:スキル解除後はひどい筋肉痛に襲われる。

 

待っていました強化スキル!

 

もちろんyesを選択。

 

頭の中でカチっと音がし、瞬間、体が一気に軽くなり、起き上がって体を動かしてみると、信じられないほどに動く!動く!

 

これならうまくいくかも…

 

早速、俺は近くの枝を齧り切り、口に咥える。

 

そして、穴掘りに夢中の狼の背後に一瞬で近づき、ゴールデンボールを両足で蹴り上げた。

 

「ギャン!!!」

 

悲鳴にも似た狼の叫び声と共に、あわてた顔を出した瞬間、咥えていた枝(尖らせ済)を左目に突き刺す。

 

「キャイーン!!」

 

狼は一瞬のたうち回ったが、すぐに体勢を整え領域外に逃げて行った。

 

狼が去ったあと、俺は穴に隠れた2羽の子ウサギの様子を見に行く。

 

穴の深さは1.5mほど、狼は1mまで掘り進んでいたので危機的状況だったといえる。

 

早速穴の中に入り会話をしてみる。

 

黒いうさぎが

 

「プウ!プウプウ!プウ?」

 

白いうさぎも

 

「プウ!プウ!プウ?」

 

うん、かわいいけど何を言っているのかわからない。

 

ここで

 

『ほ乳類言語セット/1000P』を獲得。

 

「おとうと、こわかった、おおかみは?」

 

「おとうと、ぶじだったの?おおかみは?」

 

と心配そうに話す。

 

いや俺末っ子だったのかよ!

 

ここで狼はいなくなったとの、自分たちの母親が亡くなったことを話した。

 

「おかあさん、わたしたちをまもるため、かくれるあなをほってくれてたたかってくれたんだよね」

 

「ちくしょう、ぼくがもっとおとなだったら!」

 

2羽は惜しさと悲しさを滲ませながら話す。

 

そんな中、別のアイコンが表示された。

 

【末っ子ウサギとの間に『縁』ができました。背後霊になりますか?】

 

地縛霊から背後霊に進化?した!…いや、いいのかこれ?

 

とりあえずyesを選択すると、次に

 

「末っ子ウサギの名前を決めてください」

 

の表示がでる。

 

少し考えた後名前を決定、すると自身の憑依が解け末っ子ウサギの後ろに立っていた。

 

5

俺が憑依から離れると、末っ子ウサギは兄弟たちと話し始めた。

 

「兄さん、姉さん、僕、狼にやられてから意識を失ったときに不思議な夢を見たんだ。なんて言っていいのかわからないんだけど、なんかすごい力をもらっちゃったみたい」

 

末っ子ウサギは目をキラキラさせながら嬉しそうに2羽へ話した。

 

わからずにいる2羽に末っ子ウサギは身体能力を披露する。

 

風のように速いスピード。

 

途轍もないジャンプ力。

 

やわらかい体は素早い動きを可能としていた。

 

そして、ウサギとは思えない1mを超える体格!

 

「「おとうと、すごいぞ!」」

 

驚愕する2羽。

 

末っ子ウサギはさらに話を続ける。

 

「あと、そのすごい何かから名前をもらったんだ。」

 

「『ラビット・ピット』これが僕の新しい名前なんだ!」

 

嬉しそうに話すラビット・ピット。

2羽は羨望の眼差しを向けている。

 

ここで新たにアイコンが表示される。

 

【ラビット・ピットに2羽のウサギの進化が可能です。行ないますか?】

 

兄姉藻進化できるの?

 

もちろんyesを選択。

 

「兄姉ウサギの名前を決めてください。※ラビット・ピットに決めさせるのも可能」

 

の表示が出たので俺が名前を決めた。

 

名前を決定後、ラビット・ピットがハッとした感じで2羽にいま起きた事の説明をはじめる。

 

「どうやら、すごい何かが、兄さんたちにも力と名前を授けるんだって!」

 

「「ほんとうに!!」」

 

この言葉に2羽は歓喜した。

 

「兄さんの名前が『ラビット・ボウイ』で、姉さんが『ラビット・ツキノ』だって!」

 

この言葉を唱えた瞬間、兄姉は輝き始めた。

 

「「うぉぉぉ!!力が…湧いてくるー!!」」

 

光が収まると2羽はラビット・ピットと同じくらいの体格になっていた。

 

違う点といえば、ラビット・ピットとラビット・ボウイは筋肉質に対し、ラビット・ツキノは華奢でしなやかな感じだ。

 

ちなみに、アイコンに出ている種族名は『大ウサギ』になっていた。

 

ここでステータスを確認。

 

【氏名:よしだまさよし】

【1/4 8:20:44】

【ランク:背後霊】

【精神力:26560】

【精神力消費:「200/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【精神力増加:「30/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【領域:110m】

 

ランクが【背後霊】に変更。

 

精神力増加が30Pということは、ラビット1羽で10Pって事のようだ。

 

何はともあれ、これで増加させる方法が分かったので、今後はどうやって進化できる者を増やしていければ良いかと考え始めた。

 

6

ウサギから大ウサギに進化して2日、この領域は平和そのものだ。

 

変わったことと言えば、ピットが筋肉痛で2日間全く動けなかったことくらいだろう。

 

今は回復して元気いっぱいに遊んでいる。

 

ラビットたちを襲った狼は深手を負っていたからしばらくは戻ってこないだろうし、ここは平和そのものである。

 

ここで分かったのだが、大ウサギになった為、ウサギから生体が大きく変わってしまったようだ。

 

まず、穴の中で生活しなくなった。

 

体が大きくなったためか、穴を掘らずにその辺でごろ寝をしている。

 

次に食生活だが、植物しか食べてなかったうさぎが、今昆虫も食べている。

 

体の進化に伴い、食事もたんぱく質などが必要になったのかもしれない。

 

あと、4足歩行から2足歩行に変化した。

 

この進化を見たら、ダーウィンもさぞかし驚くだろう。

 

今後、どのような進化を遂げるのか楽しみになった。

 

空いた時間に自分のアイコンをいじって分かったのだが、『解説』と念じるとちゃんとそのことについて解説があることが判明した。

 

ちなみに『領域』とは、神自身の行動範囲であり、信者に影響を与えるものだった。

 

簡単に言えば信者の身体能力を15%常時引き上げてくれるというもの。

 

また、防御に関してもダメージ軽減がある(15%)

 

またスキルやアイテムを使って、領域の場所を変えたり増やしたりできるらしい。

 

この神様って仕事?かなり奥が深いようだ。

 

7

今日、ツキノがピットに相談をしてきた。

 

なんでも、虫の中にツキノが近づくと寄ってくる個体がいるとの事。

 

早速2羽で花畑へ行くと、ツキノを見つけた1匹のカマキリが飛んできてツキノの手に止まる。

 

「見たでしょピット、この子だけ私に寄って来るんだって!」

 

ふうん、とピットはカマキリを覗き込むと、カマキリもまたこちらを覗き込みながら首を傾げている。

 

その時アイコンが点滅を始める。

 

【ラビット・ピットにカマキリの進化が可能です。行ないますか?】

 

これはと思いyesを選択するとカマキリが光りだす。

 

光が収まると20㎝ほどだったカマキリが160㎝以上の大きさに進化していた。

 

そして2匹に、

 

「アリガトウ…アリガトウ…」

 

と、何度もお礼を言った。

 

ちなみにこのカマキリには名前を付けることができなかった。

 

恐らく昆虫には名前を付けられないのだろうと、この時は判断した。

 

「コンゴハ、ミナサマノ、オテツダイヲ、ヤラセテイタダキマス!」

 

種族名カマキリ改め『大カマキリ』は、嬉しそうにラビットたちに頭を下げた。

 

そして俺は再びステータスを確認。

 

【氏名:よしだまさよし】

【1/6 13:30:55】

【ランク:背後霊】

【精神力:26160】

【精神力消費:「200/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【精神力増加:「40/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【領域:110m】

 

よし、大カマキリで精神力増加10獲得!

 

つまり、虫だろうと何だろうと、進化すれば自分に対しての信仰が増えるってことだな。

 

そこで、俺はある考えをラビットたちに実行してもらうことにした。

 

実は、ピットと縁ができたことにより、彼が寝ているときに夢の中で話ができるようになった。

 

これがあれば自分の意思を直接ピットに伝えることができる。

 

そして夜、『夢枕/10P/1分』を使用した。

 

「あー、あー、ラビット・ピット、聞こえますか?」

 

夢の中の俺の呼びかけにピットは夢の中で目を覚ます。

 

「うーん、僕を呼ぶ声…はっ!この声はもしかして…すみません、誰ですか?」

 

一瞬、こけたくなるセリフだったが、気を取り直して話をする。

 

「私は君たちを進化させたもの、お前たちの『神』である」

 

なんか自分で言って恥ずかしくなるセリフだが、ピットは素直に聞いてくれた。

 

「そうだった、神様!あの時は僕たちを助けていただいてありがとう!そして、こんなに素晴らしい体にしてもらってうれしいです!」

 

すごく感謝してくれるピットになんか照れ臭くなる。

 

「ラビット・ピットよ、これから君に使命を与える」

 

「使命?」ピットが?になっているところで説明を始める。

 

「これからお前たちには仲間を増やしてほしい。仲間が増えればお前たちを襲ってくる敵も減り、楽しく愉快に暮らせるようになるであろう」

 

「まずは今日のカマキリのように、お前たちに興味のありそうな生き物を探すのだ。そしてお前がその者たちと会うことにより、進化して仲間になってくれるかもしれぬ」

 

ピットは口をポカーンと開けて聞いていたが、

 

「わかりました神様!これからいっぱい仲間を増やします!」

 

超元気よく答えてくれた。

 

「うむ頼んだぞピット!ワシはいつもお前の後ろで見ておるからな…」

 

まぁ、背後霊だし嘘は言ってない。

 

そう伝えると、俺は夢枕を解除した。

 

8

翌朝、ピットは皆に夢の出来事を伝え始める。

 

「なんかさ、昨日夢に神様?が出てきて仲間を増やせっだって!」

 

ボウイ「…は?」

ツキノ「…うん?」

 

そのまま沈黙が続く…。

 

いやいや、もうちょっと内容を話そうよ!

 

やり方とかもちゃんと言わないと!

 

だいたい、神様の後に?を付けちゃだめだよ!

 

これで理解出来たら天才だよそいつ!

 

少しの間沈黙が流れ、大カマキリが話し出した。

 

「…ツマリ、ユメニデテキタカミサマガ、コンゴノタメ、ナカマヲフヤシナサイ、トハナサレタノデスネ?」

「ホカニナニカ、ハナサレテマセンデシタカ?ナカマヲフヤス、ホウホウトカ?」

 

はい、天才いました!

 

なんだ、このカマキリさん!さっきの言葉でどうしてここまで理解できんの?

 

驚愕していると、ツキノが思い出したように話し出す。

 

「それならばカマキリさんを仲間にした通りにやればいいんじゃないかな? 特殊な個体をピットの前に連れて行くと光って大きくなってるじゃん!」

 

「うん、それなら僕はわかるよ」

「進化できる子は白く光っているから」

 

意気揚々に答えるピット。

 

「でもよ、俺には特殊な奴の見分けと方とかわかんねぇぞ?」

 

「それは…私たちで探してみるしかないか・・・」                                                               

 

ボウイとツキノが話していると、大カマキリは3羽に話した。

 

「モシヨロシケレバ、ワタシガコウホシャヲ、サガシテマイリマショウカ?」

 

ツキノ「大丈夫なの?」

 

ピット「できるの?」

 

ボウイ「任せた!」

 

三者三様の意見が出て、カマキリさんの話は続く。

 

「ハイ、ジツハコノカラダニナッテカラ、ホカノムシタチノコエガ、キケルヨウニナリマシタ。」

「ソノモノタチカラ、ジョウホウヲエテ、イクツカノコウホシャヲ、カクニンシテオリマス。」

「3カモアレバコウホシャタチヲトキフセテマイリマス。」

 

表情はないが、カマキリさんは自信満々に話し終える。

 

「ありがとうカマキリさん、この件はまかせるよ!」

 

ピットはにっこり笑って、カマキリさんの中足と握手する(前足は鎌なので危ない)

 

こいつヤバイ!めっちゃ有能!なんでカマキリなんてやってんの?あ、それは選べないかw

 

とにかくただの大カマキリじゃないのは間違いない!

 

早速今夜ピットの枕元に立って、今後わからないことはカマキリさんと相談するよう伝えておこう。

 

9

それから3日後。

 

まずは自分のステータスを確認

 

【氏名:よしだまさよし】

【1/9 07:15:05】

【ランク:背後霊】

【精神力:25600】

【精神力消費:「200/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【精神力増加:「40/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【領域:110m】

 

夢枕使用と定期的な消費のみ。

 

そして今日はカマキリさんが約束していた日。

 

まぁ、1匹だけでも連れて帰ってきてくれればうれしいけどね。

 

ちなみに3羽の様子は

 

ピットは枝を拾ってきて住居みたいなものを作っている。

 

ただ建物の知識がないため、子供が造った秘密基地みたいな感じだ。

 

ツキノは葉っぱや木の実を使って何かを作っている。

 

これは料理の真似事みたいなことをやっているのかな?

 

ボウイは体をひたすら鍛えている、ムキムキだ。

 

「タダイマモドリマシタ。」

 

カマキリさんは3羽に頭を下げて帰還の挨拶をする。

 

「お帰りカマキリさん!大変だっただろうから少し休んでよ!」

 

ニコニコしながら労うピットにカマキリさんは頭を下げる。

 

「イエイエ、ツカレテナドオリマセヌ、ソレヨリモ、カノモノタチノオメドオリヲ、オユルシクダサイ」

 

カマキリさんはそう話すと、隣の葉に止まっていた虫達を紹介する。

 

「マズハ、ワタシノブカニナル、カマキリ10ヒキデゴザイマス」

 

随分と精悍な顔をした大カマキリが顔を並べている。

 

ちなみに、同種族であれば、種族長だけで仲間にできることをカマキリさんは知っているようだった。

 

マジこいつ何者なのだろう?

 

「ツギニ、コノモノハミツバチノ、ジョオウデアリマス。」

 

へ?ミツバチの女王をスカウトしてきたの?!俺は驚いた。

 

 

「カノモノハ、ゲン・ジョオウバチカラ、ブンケシタモノニゴザイマス。ゲン・ジョオウカラ、ブカ300ヲヒキツイデ、スムトコロヲ、サガシテオリマシタトコロヲ、カンユウイタシタシダイデス。」

 

カマキリさんが話し終えるとアイコンが出てきた。

 

【ラビット・ピットに女王バチの進化が可能です。行ないますか?】

 

勿論yes!女王バチと働きバチたちの体が光りだし、進化した。

 

女王バチのサイズが150㎝、働きバチの大きさが140~170㎝くらいだろうか。

 

2足歩行になった蜂たちは、片膝をついてピットに忠誠を尽くす。

 

「ワレワレヲ、シンカサセテイタダキマシテ、アリガトウゴザイマス。」

「コレデ、スズメバチドモヲ、オソレルヒツヨウガ、ナクナリマシタ。」

「ネガワクバ、マッセキニ、オクワエクダサイ。」

 

ミツバチ改め大ミツバチに進化した彼女たちは深々と頭を下げる。

 

そんな彼女たちをピットはニコニコしながら受け入れる。

 

「こちらこそよろしく!みんなが入ると賑やかになるね!」

 

みんなが沸き立つ中、次に連れてきた虫はケラ。

 

「カノモノハ、モグラニオワレ、ジメンデイキタオレテイタトコロヲタスケ、カンユウイタシマシタ」

 

【ラビット・ピットにケラの進化が可能です。行ないますか?】

 

Yesでケラの体が光りだし、進化が終えるとカマキリさんと同じくらいの大きさになっていた。

 

「ハジメマシテ、コレデモグラドモヲ、オソレルヒツヨウガ、ナクナリマシタ、ヨロシクオネガイシマス」

 

言葉少なめにあいさつを終え、ピットが返礼をすると、カマキリさんが最後の1匹を紹介する。

 

「カノモノハ、ハエトリグモ。ヒソンデエモノヲマッテイルトコロヲ、カンユウイタシマシタ。」

 

彼の進化後もカマキリさんと同じくらいのサイズとなった。

 

全員揃ったところで、カマキリを筆頭に虫たちがピットに跪く。

 

「「ワレライチドウ、ピットサマニ、ショウガイノチュウセイヲ、チカイマス!」」

 

この言葉を聞き、ピットも照れ臭そうに

 

「ありがとう、みんなよろしく!」

 

と元気に答え、皆の進化は終了した。

 

10

謁見終了後のステータスを確認

 

【氏名:よしだまさよし】

【1/9 17:35:25】

【ランク:背後霊】

【精神力:25600】

【精神力消費:「200/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【精神力増加:「380/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【領域:110m】

 

うん?あんなに仲間が増えたのに、増加がやけに少ない?

 

どうやら、ピットが直接進化させたものは10Pで、進化した者の部下たちは10分の1の1P計算のようだ。

 

まぁ、増加自体はしているので問題ないかな?

 

とりあえず、領域を10m拡げることにした。

 

そして、領域内は大変な進化を遂げている。

 

まず、大カマキリさん指揮の下、ラビットたちの家と住宅街が作られていく。

 

ケラさんたちが基礎石を運び固め、カマキリ軍団が木を切り倒し、ハチさんたちが運びながらロウで固め、クモさんたちが木同士をつなぎ留めていく…。

 

誰も建築方法など教えていないのに、筋交いとか知っているし、木組みでしっかりと作っている。

 

その中でもラビットたちの家は格段に目を引く。

 

見た目はまんまログハウス。

 

そして、やたらデカい!

 

15LDKの家とか、3羽で住むには広すぎるだろ!と突っ込みたくなる。

 

そして、細工がすごい!

 

なんか猫とか竜の彫刻が施されている

 

きっと大カマキリさんがいろいろ考えて作っているんだろうけどね。

 

こうして、木を切り開いて開拓した領域は、かなりの森林部分が住宅地に変貌した。

 

続いて、住宅街の周りを柵で囲い始める。

 

その作業が終わると、等間隔で櫓を立て始めた。

 

ケラさんが穴を掘り井戸も作った。

 

中央に何かの祭壇と集会場を作った。

 

ここまでが謁見後10日間の出来事。

 

そして今、

 

ツキノが開いている領地で麦みたいなものを働きバチと一緒に育て始めた。

 

ピットは大カマキリさんと話をしながら、領地経営を勉強している。

 

ボウイは、カマキリさんの部下やケラさんと一緒に格闘技や、集団戦闘の練習を行っている。

 

俺は思った。

 

なんなの?こいつら?

 

特にカマキリさんはおかしい、絶対におかしい!

 

あんなの生まれ持った知識とは絶対思えない!

 

カマキリさんに隠れてはるが、ほかの奴らもおかしい!

 

ケラさんはなぜ基礎のこととか知っていた?

 

クモさんはなぜノミやカンナを持っているの??

 

ハチさんはなぜ食べられる実の種とか育成方法を知っているの?

 

いや、やっぱりカマキリさんが一番おかしい!

 

あいつ、生活に必要な衣食住の食と住のことを理解している!

 

服はまだ要らないから揃えてないだけ!

 

そのメンバーを中心に今回はスカウトしてきたのか?いや、そうに違いない!

 

もはや、ラビットたちのほうがまともに見えてきた。

 

この一連の出来事のなかで、俺は一つのifを思いつく。

 

しかしそれは、あまりにも現実離れしている。

 

そして、そのifが現実のものとなるのに、そう時間はかからなかった。

 

11

本日のステータス確認

 

【氏名:よしだまさよし】

【1/20 8:41:05】

【ランク:守護霊】

【精神力:25680】

【精神力消費:「300/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【精神力増加:「396/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【領域:120m】

 

朝確認したら、守護霊にランクアップ?していた。

 

そして、背後霊じゃなくなったせいか、ピットの背後から離れていた。

 

そして、アイコンが登場

 

【守護霊になったことにより、ラビット・ピット以下、仲間になった者の更なる進化が可能です。行ないますか?】

 

すかさずyesを選択。

 

村全体が光りだし、進化がおこなわれているようだ。

 

出てきたラビットたちはもはや人間のような姿になっていた。

 

ピットは175㎝くらいの細マッチョで、某俳優さんのような顔。

 

白いTシャツにジーンズとラフな格好。

 

ボウイは200㎝超の大男で、筋骨隆々。

 

此方は迷彩服を着ていて、どこかの軍人さんに見える。

 

ツキノは160㎝くらいの金髪ツインテールが似合うかわいい女の子。

 

服装はブレザーの学生服を着ていて高校生のようだ。

 

そして3人とも頭に長い耳が付いている。

 

そんな中、1人の綿帽子を被った男が現れ3人にお祝いの言葉を述べる。

 

「上様、進化の儀誠におめでとうございます」

「我々も恩恵を受けまして、皆進化を行うことができました」

 

よく見ると、綿帽子の男の腕には鎌のような刃物が付いている。

 

「そして、私も進化により名前を思い出すことができました。」

 

「わが名を『黒田官兵衛』と申します。以後お見知りおきを…」

 

俺はないはずの腰が抜けた。

はぁ?あの黒田官兵衛?いや、あの流れるような采配みていたから、そうではないかと思っていたけど…つまり彼はカマキリに転生していたってこと?

 

俺のないはずの心臓が急スピードで上がりっぱなしだ。

 

「そして、部下の黒田八虎と息子長政と母里武兵衛でございます」

 

官兵衛と10人の部下は一斉に頭を下げる。

 

そして、官兵衛一団の隣に、いかつい男が片膝をつき自己紹介を行う。

 

「わが名は『加藤清正』!身命を賭して忠誠を誓う所存です!」

 

また大物が出てきた!というか虎之助、ケラに転生していたの?どうりで土木工事がうまい訳だ!

 

そして、途中で増えた清正公の部下も挨拶をする。

 

「我ら清正公の家臣16名、共に忠誠を誓います!」

 

そして、2組の後ろで同じく両膝をつく人物。

 

「私の名前は左甚五郎と申します。大工と彫刻にはいささか自信がございます。以後、お見知りおきを。」

 

左甚五郎キター!!てことはラビットの家に彫ってあるのは『眠り猫』ってこと?どっかで見たことあるとは思っていたけど。ってか、甚五郎さんはクモに転生していたのか!

 

「工具が揃っておりませんでしたので、うまく彫れませんでしたが」

 

「甚五郎さん、かわいい猫ちゃんを彫ってくれてありがとう!」

 

満面の笑みでツキノがお礼を言う。

 

いや、それ日本では国宝だからね。

 

そして、最後の女性たちが片膝をつく。髪型で何となく誰だかわかるけど。

 

「我が名を卑弥呼と申します。農作物の管理、及び占いを得意としております。どうか末永く、よろしくお願いいたします。」

 

そして卑弥呼さん、すごい美人だ!

 

これは皆が女王様と崇めていた理由もわかるな。

 

俺もこんな人が上司だったら身を粉にして消えてなくなるまで働きますから!

 

そう言えば俺の上司の禿課長元気にしているかな…

 

一通りのあいさつが終わり、官兵衛がピットに話し出す。

 

「上様、この度は今後の方針を話す良い機会でありますゆえお時間を頂いても宜しいでしょうか?」

「わかりました、官兵衛さん、お願いします」

 

官兵衛は一礼し、皆に話し出す。

 

「この度、我々は上様の恩恵を受け、過去の自身を思い出すことができた。」

 

「そして、次に我々がやらねばならぬことは、新たな人材発掘と、近辺地域の情報把握である。」

 

「四郎右衛門!」

 

「ハッ、ここに!」

 

「お前は他のものを率いて、いまだ出ておらぬ人材の発掘を行え!」

 

「承知!」

 

四郎右衛門=栗山善助、つまり黒田家臣の筆頭家老ですね。

 

「清正殿には甚五郎殿とともに領内の工事をお願い致す」

 

「「お任せあれ、官兵衛殿!」」

 

「卑弥呼様は食料調達とツキノ様の知識向上の手ほどきをお願いいたす」

 

「承知しました」

 

「卑弥呼ちゃんが先生?やったぁ!宜しくね!」

 

「フフフ…こちらこそ宜しくね。」

 

「ボウイ様は、飛びぬけた戦闘センスを磨くために、私の部下である母里太兵衛と後藤又兵衛に槍術を学んでみてはと進言いたします。」

 

「おぉ、それは願ったり叶ったり!2人とも指南のほどよろしく頼む」

 

ボウイは頭を下げると、お任せくださいと2人は頭を下げた。

 

さて、と官兵衛はピットに向き変えると、自身の説明を始める。

 

「皆の割り当てはこれにて終了です、私はこれから各勢力の確認に向かわせて頂きます。」

 

「何かございましたら四郎右衛門のご相談くださいませ。」

 

「一人で行ったら危険じゃないの?」

 

ピットが心配そうに話すと、官兵衛は笑みを浮かべて返事をする。

 

「私は大丈夫です、ただ付近にて行き噂を聞いてまわるだけです。」

 

「我々はまだこの森のことを何も存じておりません。情報なく物事を考えることはできませんので、皆で論議できるようその為の情報収集でございます。」

 

すべてを話し終え、官兵衛は深くお辞儀する。

 

「わかった官兵衛、でも、絶対無理しちゃだめだよ?」

 

「ははっ、必ず無理は致しませんのでご安心を。では!」

くるりと振り向き、官兵衛はそのまま旅に出てしまった。

 

皆はその後ろ姿にすっと頭を下げて、無事を祈った。

 

なにこれ?俺がいつも妄想で夢見た世界なのだけど?

 

卑弥呼が官兵衛や清正と同じ時代を生きている。

 

一体どんな世界が作られていくのだろう?

 

そうだ、と思いステータスを確認。

 

【氏名:よしだまさよし】

【1/20 16:21:35】

【ランク:守護霊】

【精神力:25100】

【精神力消費:「300/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【精神力増加:「3960/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【領域:120m】

 

精神増加が10倍になっとる!!

 

進化で10倍ってすげぇな、おい!

 

今回は50m領域を広げて、ワクワクしながら次のみんなのアクションを楽しみに待つことにした。

 

12

官兵衛が旅に出て10日が経った。

 

【氏名:よしだまさよし】

【1/31 8:33:15】

【ランク:守護霊】

【精神力:25600】

【精神力消費:「4200/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【精神力増加:「4260/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【領域:510m】

 

とりあえず、精神がギリ回復できる分で領域を拡げた。

 

さて、これでどんな変化が起きるのか早速覗いてみる。

 

知らないうちに、集落名が『ラビット村』になっていた。

 

皆も作業をする際は人型だけではなく、昆虫体でやるものも多い。

 

どうやら人型⇔半獣⇔昆虫体への変態は自由にできるらしい。

 

ちなみに服は、体の一部を変態させるので、前世で来ていた服装や鎧であればいちいち着なくていいみたいだ。

 

某アニメみたいに服が破けて来週復活みたいにはいかないからね。

 

進化後の種族名はこうなった。

 

大ウサギ→ラビットキング

大カマキリ→キングマンティス

大ミツバチ→キングビー

大ケラ→キングモールクリケット

大クモ→キングスパイダー

 

それと、清正公が山師やら工業職人やらを20名配下にしていた。

 

彼らの登用により、武器や防具、工具や日用品などの作成が可能となった。

 

甚五郎さんも大工見習として10人配下にしていた。

 

彼らが半獣状態になり、4本・6本の手で釘を打ち、鋸で木を切る姿は圧巻である。

 

卑弥呼さんたちは、食材や調理器具が揃ったことで色々な料理を作り始めた。

 

何処からみつけてきたのだろう、米や麦、トウモロコシを育成し、ダイコンやニンジンなどの畑も作ってる。

 

蜂蜜を使っての料理やジュース、更には酒まで造り始めた。

 

また、卑弥呼さんの部下に医学に通じた女性がおり、数人を連れて診療所もやっている。

 

女医の名前は「楠本イネ」。

 

前世はシーボルト博士の娘さんだった。

 

また、他の卑弥呼の部下に際立って美しい女性がいる。

 

ただ彼女、自分の名前がわかっているはずなのに誰にも自分のことを話さない。

 

よく働くし、皆とはうまくやっているようだけどね。

 

それからさらに10日経つ。

 

今回は別の種族から、自分たちを保護してほしいとの申し出があった。

 

種族はカヤネズミ、家族4匹での申し出だ。

 

ピットのもとで父ネズミ光りだし、進化が終わる。

 

スーツを着た男は片膝をつき自己紹介を始める。

 

「わたしはジェイコブ・シフと申します。他の地帯より迫害を受け、身の危険を感じ、この地に保護を求めていただきたく参りました。金融や商売にはいささか自身がありますので、必要な際はお呼びだてください。」

 

シフさんと言えばユダヤ人でクーン・ローブ商会の頭取にまでなった人。今後他の地域と商売を行う際はぜひ頼らせてもらおう。

 

次に現れたのはスズメの親子4羽。

 

こちらも隣の地域から避難してきたらしい。

 

進化が終わり、現れたのは作務衣を着た男。

 

「我々を保護頂きありがとうございます。私の名は友成、刀鍛冶を生業としておりました」

 

なんてことでしょう!伝説の刀匠さんがいらっしゃいました。

 

友成さんは平安時代に活躍した刀工で、その作品は国宝に指定されている。

 

これからはうちの武人達に専属の武器を作っていただきたい。

 

そしてもう1匹。

 

こちらも隣の地域から来たのだが、全身が傷だらけのヒョウである。

 

重症だったが、診療所での治療が功を奏し、数日後には歩けるようになった。

 

こちらは最初、自身に目的がある為に進化を拒んだのだが、

 

「それじゃあ、目的達成までの間だけ居るでも構わないよ?」

 

ピットの提案を受け入れ、進化を行った…この人とんでもない大物だった。

 

「ありがとうございます、頭領。私の名前は林冲、皆には「豹子頭」と呼ばれておりました。」

 

知ってる、水滸伝の登場人物だよね。

水滸伝は物語だから、林冲自体は架空の人物だったはず。

この世界の輪廻転生は、前世の実在するものだけではないようだ。

あと水滸伝自体は最後まで悪が倒されずにすっきしりない物語だったんだよな。

俺なら絶対悪の『四姦臣』を倒すまでの物語にするけどね。

 

林冲は自身の現状を語りだす。

 

「今、私は仲間に冤罪を着せられ、この地まで逃れてきた次第であります。」

 

「何としても汚名を晴らし、残してきた妻と暮らしたいのです。」

 

涙ながらに語る林冲に、ピットが

 

「分かった!」

と、簡単に返事しまわないか心配だったが、

 

「林冲さん、心中お察しします。近いうちに軍師・官兵衛が近隣偵察から戻りますので、その時に詳細をお聞かせください。」

 

おぉ、ラビット・ピットよ、大人になったなぁ。

 

こういうときは即決せず、ちゃんと状況を理解できる人と話すのが基本。

 

涙は出ないけど、うれし涙が出そうになった。

 

しかし、これだけ頻繁に避難民が来るとは、隣接地域はどうなっているのだろうか?

 

林冲ほどの人物が流れ着いたことも気になるし、早く付近の情報が欲しいところだ。

 

ちなみにステータスは

 

【氏名:よしだまさよし】

【2/10 16:43:35】

【ランク:守護霊】

【精神力:26200】

【精神力消費:「4600/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【精神力増加:「4640/1日・0/1時間・0/1分・0/1秒】

【領域:550m】

 

2/10までの人口

 

ラビット・ピット→直属9名(ボウイ・ツキノ・官兵衛・清正・甚五郎・卑弥呼・シフ・友成・林冲)

 

直属の部下・家族たち→364名

 

となっている。

 

そしてその日の夜、官兵衛が数編の情報収集から帰ってきた。

 

13

官兵衛は戻ると、ピットへ帰参のあいさつを簡単に終え、

 

「明日地図を使い、皆にご説明いたします」

 

と報告し、自宅へ戻った。

 

次の日の昼、直属のもの9名を集め、新参者とのあいさつを終え、早速会議に入る。

 

「今回の偵察で、この森の大まかな概要が掴めました」

 

官兵衛が地図を広げて説明を始めた。

 

「この森の形は直径20㎞程の円形をしており、それを3つに分けるように各勢力が治めています」

 

「まず、北東を治めます、赤熊の『レッドキャップ』、北西を治めます、白イタチの『イワイ』」

「そして、私たち住む南を治めている金狐の『ナインテール』」

「この三つ巴で拮抗しておりました」

 

「おりました?」

 

卑弥呼がそう問いかけると、官兵衛がうなずき話を続ける。

 

「そうです、少し前までは…。しかし2週間前、レッドキャップが突然西側に攻め込んでまいりました」

 

「虚を突かれたナインテール、は一気に勢力範囲を奪われ、実にその4割の領地を失っております」

 

皆にどよめきが走る。

 

「さらに息を合わせたように、イワイの勢力もこちらに侵攻をするべく準備を進めているとのこと」

「ナインテールは圧倒的不利な状況となっております。」

「そして…現在われわれの領域はレッドキャップの主力勢力と隣接しております」

 

「「なんだってー!!」」

 

一斉に皆が叫ぶ。

 

なんだってー!!って、俺も思わず叫んでしまった。

 

「…こんな状況じゃ、ナインテールは打つ手もなく…だから静観してしまっているのかしら?」

 

ツキノが心配な顔をして話す。

 

しかし、官兵衛は首を横に振る。

 

「いえ、そうとも言えません。確かに最初はレッドキャップの奇襲を受けて被害が出ておりましたが、現在領土は奪われつつも、すでに領民や戦士は後方へ退却しており、思ったほどの被害は受けてはおりません」

 

「それに、イワイのほうの動きも気になります。攻め込む準備はできているようですが、まだ進軍の様子はないなど、どうも腑に落ちません」

 

「現状、イワイの国の情勢はほとんどわかっておりませんので、引き続き調査を進めてまいります」

 

皆、一斉に頷き、官兵衛は話を続ける。

 

「それで…これは私の推測なのですが、ナインテールは意図してここまで退却したと考えます」

「あえてここまで退却させて、突如出現したこの村を最前線にしたのではないかと…」

 

ここまで話し、官兵衛はピットを見つめる。

 

ピットは少し考え、官兵衛に自分の意見を述べた。

 

「…つまり、ナインテールはレッドキャップの兵を使い、我々の実力を試そうとしている?」

 

ピットの意見を聞き、皆はハッとし官兵衛は嬉しそうに頷く。

 

「はい、私もそのように考えております。恐らくナインテールは、我々の危機の対処法を見て仲間に引き入れる、もし敗れても失った領地のあちこちに忍ばせている伏兵を利用し、補給ラインを断ちつつ敵を殲滅させる腹なのでしょう」

 

官兵衛が話し終えると、清正が話す。

 

「要はレッドキャップの兵共を撃退すればいいだけの話であろう?我らの戦力ならそうそう敗れることはあるまいて!」

 

清正が意気揚々に話し終え、皆も鼓舞している中、官兵衛は静かに告げる。

 

「敵の兵力は『ゴブリン』2000体、うち巨体な『ホブゴブリン』が20体、魔法を使う『シャーマンゴブリン』4体、そしてゴブリンを統べる『ゴブリンロード』が確認されております」

 

ゴブリン?ってことは、この世界ってファンタジーだったの?

しかも魔法もあるの?

えっ、うちの子たち魔法なんか使えないと思うんですけど大丈夫なんですか?

落ち着かない自称「神様」の俺は、あまりの情報に会議の上をうろうろと飛び回っていた。

少し前まで小動物や昆虫やっていた皆にファンタジー概念なんかわかるわけないでしょ?

心配そうに皆を見てみると…

 

「なるほど、ゴブリンたちですか…ホブやシャーマン・ロードもいるとなると、多少の被害は覚悟しなければいけませんね…」

 

「うむ、ホブだけであれば俺たちで簡単に討ち取れるのだが、魔法を使われると面倒ではあるな…」

 

「ロードもいるのでは統率も取れているでしょうな…」

 

ツキノとボウイと清正は困った顔で話す。

 

はい、知らないの俺だけでしたー!

みんな余裕で分かっているよ。

そりゃ、こいつら生まれてずっとここにすんでいるんだから知当然っていや当然か。

 

そんな中、官兵衛は話す。

 

「その件に関しましては心配いりません。すでに策は決まっておりますので」

 

そう言いながら官兵衛は卑弥呼を見る。

 

「はい、官兵衛殿、すでに作戦の準備は整っております。」

 

えっ、俺知らないんだけど?ずっと上から見ていたけど全然わからないのだけど?

霊体の俺はアタフタしながら会議を見つめる。

 

「おそらく、数日のうちにゴブリンからの使者が参るでしょう」

「その対応が終わってからのゴブリン掃討となるでしょうから、ナインテールに関しては…10日後に話し合いましょう」

 

官兵衛が締めて会議は終了した。

 

続いてピットに、官兵衛が進言を行う。

 

「この度の偵察を行っておる際、新たな人材の確保に成功いたしております。」

 

「此度の戦いには欠かせない者たちです。明日にでもこちらに参りますので、謁見のほどよろしくお願いします」

 

「わかった、楽しみにしてるよ。いつも官兵衛に無理をさせてしまって本当に済まない。今日はゆっくり休んで」

 

ボウイの言葉に官兵衛は頭を下げ、皆と一緒に部屋を後にした。

 

誰もいなくなった部屋で俺はつぶやく…

こいつら…すげーな…と。

 

14

8日後、官兵衛が話した通りゴブリンの使者が訪れる。

 

来たのはやたらと着飾りしたシャーマンゴブリン1体と、ホブゴブリン4体だった。

 

官兵衛以下、皆昆虫や小動物の姿となって対応し始める。

 

「ハハァ、シシャノミナサマ、オマチシテ、オリマシタ」

 

カマキリになった官兵衛は片言で話す。

 

「ワレワレハ、ミナサマガクル、ノヲ、イマカ、イマカト、オマチシテ、オリマシタ」

 

「ワレワレハ、ナインテール、ヘノ、ミツギモノデ、クルシメラレテ、オリマス、ドウカ、ワレラヲ、スクッテ、クダサイ」

 

官兵衛が嘘とおだてを織り交ぜてゴブリンたちと会話を進める。

 

「ほう、最初から我々に恭順するとはなかなかに良いことだ」

 

「お前ら虫けらたちにも我が王レッドキャップ様は寛大なお心をお持ちだ」

 

「お前たちが普通に暮らせるよう取り計らってやるので、協力を惜しむなよ?」

 

高圧的に話すシャーマンに、官兵衛たち重臣は頭を下げて、礼を言った。

 

「アスニハ、ミナサマガ、チュウトンデキマス、ジュンビガ、トトノイマスノデ、コチラヲ、モッテ、ジンチデ、ヲオタノシミクダサイ」

 

そう言うと、ミツバチたちがたくさんの料理と飲み物を荷車に乗せて運んできた。

 

「アスハ、セイダイナ、ウタゲヲ、ゴヨウイイ、タシマスノデ、キョウイチニチ、ダケ、オマチクダサイ」

 

「これは素晴らしい!お前たちこんな食い物も作れるのか!」

 

「よし、虫ども!すべて我々の陣に運ぶのだ!」

 

ご機嫌な態度で使者は虫たちに命令する。

 

「デハ、アス、モンヲ、ヒライテ、マッテオリマス」

 

フン!と鼻を鳴らしたゴブリンたちはそのまま来た道を帰っていった。

 

1㎞ほど離れたハチたちは、荷車を届けた後、領域へ戻り、人に戻った官兵衛と打ち合わせをしていた。

 

深夜、貢物の食糧で宴を開いたゴブリンたちは、寝静まっていた。

 

突然、土の中から黒服の人間たちが飛び出し、シャーマンが眠るテントへと向かう。

 

完全に寝入っていたシャーマンたち4名は一瞬で殺されてしまう。

 

その瞬間、シャーマンが陣地に掛けていた闇の障壁魔法は解け、外で待機していた清正たちが静かに突撃し、音もなくゴブリンたちを殺しまくっていく。

 

全体数が半分くらいになった頃、眠りから覚めたゴブリンロードが叫ぶ!

 

「おい!おまえら!なにをやっている!」

 

「敵襲だよ!」

 

王の後ろでそう静かに言い放ったボウイは、自慢のバトルアックスでロードの首を刎ね飛ばした。

 

王の死に気づき大混乱に陥るゴブリンたち。

 

いったい何が起きているのかわからないうちに、次々と討ち取られ、30分もしないうちにすべてのゴブリンが動かなくなった。

 

その場で報告を受けた官兵衛は、急いで撤退の準備を始める。

 

すべての死体と荷物を荷車に乗せ、夜が明けるころには元の更地に戻っていた。

 

レッドキャップ率いる2000のゴブリン部隊は一夜にして消滅したのである。

 

15

ゴブリン殲滅9日前、官兵衛は領域が見渡せる丘の上に立っていた。

 

「ここにある草木をすべて取り払い更地にする。」

 

「そして、この更地から領域の門まで1本の道を作るのだ。」

 

言い渡された皆はこの工事を3日間で終わらせる。

 

その入れ替わりで着た斥候ゴブリンは、陣を張るのに最も適したこの土地を王に進言し、ここに陣地を張ることになる。

 

そして、事前に話していた仲間たちが現れる。

 

ゴキブリ40匹とコウモリ2匹。

 

まずはゴキブリ40匹の進化。

 

光が晴れると・・・なんてことでしょう!黒ずくめの忍者集団が立っているではありませんか!

 

「服部半蔵正成見参。暗殺と情報収集を生業としている。粉骨砕身努めてまいりますのでお見知りおきを…」

 

伊賀忍者の頭領がゴキさんに転生していたとか、ありえないだろ!

 

彼等は進化のあいさつを終えると、部下と共に更地になった土の中に潜っていく。

 

俺は初めて生土遁の術を見ることができた。

 

続いてコウモリ2匹の進化

 

なんか、坊主頭の男たちが琵琶を持って立っている

「私の名は蟬丸。耳がよく聞こえますので、暗闇でも何があるかわかります」

「私の名は芳一。耳はありませんが、音がよく聞こえますので、暗闇でも何があるかわかります」

 

琵琶法師?官兵衛さん一風変わった人たちを呼んだな。

 

俺の当初の感想はこれだった。

 

芳一は軽く自虐ネタ言っているし。

 

しかし彼ら、たいまつが消え暗闇になると信じられない実力を発揮した。

 

陣の両サイドに胡坐をかいて座り琵琶から超音波を出し、触覚だけ出した清正たちに正確な敵の情報を送っていたのだ。

 

暗闇の中、右往左往するゴブリンたちの首を的確に刎ね、心臓を一突きにしていく。

 

尚、ボウイは王を倒した後、暗闇お構いなしで付近のホブゴブリンを皆殺しにしていた、こわっ。

 

そしてもう一つ。

 

ハチたちが運んだ料理には大方の予想通り眠り薬を入れてあった。

 

それ自体はとても苦いのだが、そこは料理上手の女性陣。

 

蜂蜜をふんだんに使ったケーキや飲み物なんかにうまく織り交ぜていた。

 

更に荷物をゴブリン陣地に運びいれる最中は敵の陣形をすべて記憶していく。

 

王、シャーマン・ホブの居所、たいまつの位置本数、下級ゴブリンの宿泊位置や見張りの数など事細かに把握し、官兵衛に告げる。

 

それを葉っぱの地図に書き記し、清正たちに渡す。

 

後は夜になり、ご覧の結果となった。

 

ちなみにこちらの被害は死者0、軽傷1名。

 

軽傷はボウイが暴れているときにたいまつが腕に当たり、軽いやけどをしたようだった。

 

村では早速ゴブリンの解体が始まった。

 

大所帯を賄う貴重な食料となるため、燻製にして保存食にするようだ。

 

臓器などの一部は薬としても使えると、楠本イネさんは大喜びだった。

 

金銀財宝はラビット家の宝物庫(空き部屋)へ運ぶ。

 

ロードは、手に入れた財宝を取られまいと、常に遠征先にも持ち込んでいたらしい。

 

今後商売などを行う際、なくてはならないものなのでとシフさんが管理することになった。

 

官兵衛はそんなものに目もくれず、シャーマンやロードが持っていた本を確認する。

 

「上様、やはりこれは魔導書のようです。早速解読して使えるようにいたします」

 

「やはり魔導書を持っておりました!シャーマンが来ていると聞いたので期待していましたが、今回は予想以上の収穫でした」

 

にこりとする官兵衛にピットは礼を言う。

 

「官兵衛、村を守ってくれてありがとう!」

 

「なにより、誰もけが人が出なかったのが本当によかったよ!」

 

あなたのお兄さんのケガはなかったことになっていますが?問題ありませんね?はい。

 

本当に官兵衛のおかげだとお礼を言うと、官兵衛はさも当たり前のように話す。

 

「今回はゴブリンどもなので騙すのも簡単でした。単純で高圧的なものはおだてや貢物に弱いもの。今回はその通りにやったまでです」

 

なるほど、と話をしていると幹部たちが次々に会議室に入ってきた。

 

官兵衛は見渡し口を開く。

 

「それでは、今後の方針について話を始める」

神となった俺の世界で、信者たちが国を興す「第2話」 | 記事編集 | note
神となった俺の世界で、信者たちが国を興す「第3話」 | 記事編集 | note
「神となった俺の世界で、信者たちが国を興す」第四話 | 記事編集 | note
「神となった俺の世界で、信者たちが国を興す」第五話 | 記事編集 | note


いいなと思ったら応援しよう!