【評価されたい】その前に安心してもらうことが先だと気づいた話
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はじめに:評価を求めて空回りしていた20代の私
「もっと評価されたい」
「自分の実力を認めてもらいたい」
20代の頃、私はそう思いながら必死に働いていました。
2016年から2018年まで、4,000人規模のメガベンチャーで導入コンサルタントとUIデザインを担当していた時のことです。周りには優秀な人材ばかり。その中で「自分も負けていられない」と、とにかく成果を出すことに必死でした。
でも結果は、評価どころか退職という形で終わりました。
退職理由は「組織内の知識不足」と「コミュニケーション不足」。要するに、私は評価される以前に、周りから「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえていなかったのです。
その後、「嫌われる勇気」と「7つの習慣」を読み、職業訓練校でのコミュニケーション改善を経て、ようやく気づきました。
「評価される」の前に、まず「安心してもらう」ことが必要だったのです。
さらに2020年以降、中小企業でプログラマーとして働く中で「論語」を改めて読み、「仁(思いやり)」という概念に出会いました。これが、私の仕事観を大きく変えることになります。
この記事では、ITエンジニアとして13年間働いてきた経験と、心理学の研究データをもとに、「なぜ安心させることが評価につながるのか」を解説します。
なぜ「評価されたい」が空回りするのか
評価を求める心理の正体
まず理解すべきは、「評価されたい」という欲求自体は決して悪いものではないということです。
心理学者アブラハム・マズローの欲求階層説によれば、「承認欲求(評価されたい欲求)」は人間の基本的な欲求の一つです。誰もが持っている自然な感情です。
問題は、その順番にあります。
データが示す「安心感」の重要性
Googleが2012年から2015年にかけて実施した「プロジェクト・アリストテレス」という大規模調査があります。この調査では、社内の数百チームを分析し、生産性の高いチームの特徴を調べました。
結果は驚くべきものでした。
メンバーの能力や働き方は生産性にほとんど影響せず、最も重要だったのは「心理的安全性」――つまり「メンバーへの気遣いや、安心して発言できる環境」だったのです。
具体的な数値で見ると、心理的安全性が高いチームでは:
離職率が低い
「効果的に働く」とマネジャーから評価される機会が2倍多い
収益性が高い
さらに別の研究では、信頼関係の築けている企業で働く人は、築けていない企業に比べて:
生産性が50%高い
業務へのモチベーションが106%高い
業務へのエンゲージメントが76%高い
信頼関係が25%上昇すれば、従業員一人あたりの収益が10,185ドル増加するというデータもあります。
つまり、「評価される人」になる前に、「一緒に働いて安心できる人」になることが、結果的に最も評価につながるのです。
「安心させる」とは具体的に何をすることか
心理的安全性の4つの要素
ハーバード大学の組織行動学者エイミー・エドモンドソン教授は、心理的安全性を「対人関係上のリスクを負っても安全だと信じられる状態」と定義しています。
具体的には、以下の4つの不安を解消することが重要です:
1. 無知だと思われる不安
「こんなこと聞いたら馬鹿にされるかも」という不安
2. 無能だと思われる不安
「ミスしたら評価が下がるかも」という不安
3. 邪魔だと思われる不安
「意見を言ったら空気を乱すかも」という不安
4. ネガティブだと思われる不安
「批判的な意見は言いにくい」という不安
これらの不安を周囲が感じていない状態、つまり「何を言っても、何をしても大丈夫」と思える環境を作ることが「安心させる」ということです。
私が実践してきた「安心させる」技術
中小企業でプログラマーとして働いていた2020年から2025年の間、私は意識的に以下のことを実践してきました:
1. 先に失敗を共有する
完璧な人間を演じるのをやめました。VBAで自動化ツールを作る際も、最初の試作品はバグだらけでした。でも、それを隠さずに「こんなミスをして、こう改善しました」と共有することで、周りも失敗を報告しやすくなりました。
2. 質問を歓迎する姿勢を示す
「そんなことも知らないの?」という態度は絶対に取らないようにしました。むしろ「いい質問ですね」「そういう視点もあるんですね」と、質問者を肯定する言葉を意識的に使いました。
3. 属人化を排除する
私の考え方の根幹に「特定の個人に依存する仕事は危険であり、仕組み化すべき」という思想があります。これは単なる効率化ではなく、「誰かがいないと回らない」という不安を職場から取り除くための「思いやり」だと考えています。
Excel関数だけで請求書入力作業の約8割を削減し、VBAで案件管理表の売上集計を自動化したのも、「私がいないとできない」状態を作らないためでした。
4. 承認と感謝を言語化する
「論語」の「仁(思いやり)」という概念を学んでから、相手の行動を具体的に承認することを心がけています。「ありがとう」ではなく「○○してくれて助かった。特に△△の部分が良かった」というように、何が良かったのかを明確に伝えるようにしています。
「評価」は後からついてくる
信頼の蓄積が評価を生む
面白いことに、「安心させる」ことに注力し始めてから、自然と評価されるようになりました。
中小企業時代、RPA(Power Automate Desktop)で夜間バッチ処理を自動化したて、「安心」を提供し続けた結果、社内で「困ったことがあったら相談できる人」というポジションを確立できました。これが最終的に、最も大きな評価につながったのです。
AIと人間の違いは「安心感」にある
現在、独立してAIとRPAの専門家として活動していますが、「ChatGPT最強の仕事術」などを読んでAI技術を学ぶ中で、改めて人間の価値を再認識しました。
AIは効率的で正確です。でも、AIには「安心感」を提供することはできません。
例えば、クライアントが「こんな初歩的なこと聞いていいのかな」と不安に思っているとき、AIは質問に答えることはできても、「どんな質問でも大歓迎です」という安心感を伝えることはできません。
この「人間にしか提供できない安心感」こそが、AI時代における最大の価値だと考えています。
実践:明日からできる「安心させる」3つの行動
1. 「聞いてもいいですか?」に「もちろん!」と答える
質問されたとき、忙しくても一旦手を止めて相手の目を見て答えましょう。その5秒が、相手に「この人には安心して質問できる」という印象を与えます。
2. ミスの報告を評価する
「ミスをしました」と報告してきた人に対して、まずは「早く報告してくれてありがとう。一緒に対策を考えよう」と伝えましょう。これだけで、次からもミスを隠さずに報告してくれるようになります。
3. 会議で最初に発言する
会議で誰も発言しない空気になったとき、あなたが先に「完璧じゃないけど」と前置きしながら意見を言ってみましょう。あなたが先に「不完全でもいい」という空気を作ることで、他の人も発言しやすくなります。
まとめ:評価は「結果」であって「目的」ではない
私がメガベンチャーで失敗し、その後の職場で学んだ最大の教訓は、「評価は追いかけるものではなく、自然についてくるもの」だということです。
評価を得るための最短距離は、評価を求めることではなく、周囲に安心感を提供すること。
それは決して難しいことではありません。
質問を歓迎する
ミスを責めない
先に弱みを見せる
感謝を具体的に伝える
こうした小さな行動の積み重ねが、結果的に最も大きな評価につながります。
「心理的安全性のつくりかた」などの書籍も参考になりますが、何より大切なのは、目の前の人を「評価の対象」ではなく「一緒に働く仲間」として見ることです。
論語に「仁者は己の立たんと欲して人を立たしむ」という言葉があります。自分が立ちたいなら、まず他人を立たせることから始めよ、という意味です。
これは現代の職場でも変わらない真理だと、私は13年間の経験を通して確信しています。
もしあなたが今、「もっと評価されたい」と思っているなら、まずは周りの人が「この人と一緒に働いて安心できる」と思える環境を作ることから始めてみてください。
評価は、その後に必ずついてきます。
