見出し画像

「対話する職員室」より

1 はじめに

 岩瀬直樹さんと勅使川原真衣さんが帯を書かれていたことが気になり、本書を手に取った。読みやすく、あっという間に読み終えた。

 教務主任である玉置さんが、教職員の居場所をつくろうと様々な工夫を重ねる姿からは、「こういう方が一人いるだけで学校は変わるのだな」と感じさせられる。特に印象に残った点を、備忘録として書き残しておきたい。

2 玉置さんの取り組み

 いろいろな取り組みをなさっていたが、ごくごく一部を紹介する。

(1)研究授業をやめる 
 若い頃の玉置さんは、「一度目の授業研究会で課題が見つかるのだから、改善のためにも研究授業は一人二回行うべきだ」と主張し、反感を買ったという。かなりの過激派である。そんな玉置さんが、授業研究会に「やらされ感」を抱く教師が多い学校へ赴任すると、あえて研究授業をやめた。本意ではなくても、まずは学校の実態に合わせる。そして一、二年かけて教師の「やってみたい」を引き出していった。自分の信念をいったん脇に置き、長期的な戦略を描く姿勢は、簡単にできることではない。

(2)職員会議改革 
 職員会議では、提案者が周囲から様々な指摘を受け、若手が萎縮している実態を踏まえ、否定されにくい進め方へと変えていった。これも二年がかりである。いきなり職員会議に提案するのではなく、まず校長と方向性を共有し、そのうえで提案書を作成する。方法自体は案外シンプルだ。私がよいと感じたのは、担当者の意欲を損なわない仕組みを目指した点である。提案のたびに否定されれば、結局は前年踏襲になってしまう。「やってみたい」と思ったことを試し、失敗したら修正すればよい。そのくらい間口の広い設計が重要なのだ。

3 印象的なエピソード

 少し脇道にそれるが、本書の中で印象に残ったエピソードがある。

 玉置さんは、「優れた教師なら、チームでの振り返りの際に全チームへ的確な助言ができる」という先輩の言葉を思い出し、実際に子供たちへ助言して回った。その内容は攻め方についてだった。

 しかし、後で定点カメラを確認すると、そのチームの課題は守備にあり、子供たち自身もそれを理解していた。玉置さんが来たときは話を合わせて返事をしたものの、去った後は再び守備について話し合っていたという。

 この場面は非常に興味深い。以前のnoteでも振り返りについて書いたが、それと通じるものがある。子供は本来、自分たちで自然に振り返っている。そこへ教師が独善的に介入すると、教師の満足感は高まっても、子供の実態とはずれてしまう。その事実を認め、率直に反省する玉置さんの姿勢こそ、この実践を支える土台なのだと感じた。

4 まとめ

 教師を生かすも殺すも、組織風土である。いや、組織風土というと変わりにくいもののように感じる。もう少し解像度を上げれば、それは教師同士の人間関係と言い換えられる。人間関係であれば変えられる。とはいえ、学校には「ねばならぬ」が跋扈しやすい。誰も口にしないが、そういう空気が漂っている場合がある。弱音を吐けないような職場は、息苦しい。

「僕は、今朝起きたときに、夏休みが終わってしまうことが悲しくて悲しくて仕方がありませんでした。それでも、学校に来た自分を褒めてあげたいと思っています。みなさんはどうですか?」
 教務主任と研修主任を兼務する40代の教員がこんな話をしたら、あきれて失笑するかなと思っていましたが、皆大きくうなずいています(その年一番のうなずきだったかもしれません)

「対話する職員室」P17より

 よい人間関係は、人間の弱さを認めることにある。そして、弱さを受け止め合うことである。

 本書で繰り返し語られるのは、子供だけでなく教師も「そろえる」ことではなく、違いを楽しむこと、そして「やってみたい」が生まれる環境をつくることだ。そこに、この本の最も大切なメッセージがあると感じた。

 さぁ、私もだるいけど、仕事にいく準備をします。「やってみたい」ことがあるんで。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集