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クラスの赤ちゃんが彼氏いる宣言をしました…。



彩:彩、彼氏できたもん…!


この一言でクラスの視線は一点に集中した。


友だちと話していた人、読書をしていた人、黒板を消していた人、ノートをまとめていた人。


寝てた人は…、寝たままだけど…。zzz


もちろん僕だって。


この教室では確かに注目はあーやに集まっていた。


美空:え…!?なんで…!?いつ…!?どうして…!?彩に…!?だれ…!?え…!?彩…!?


普段はあーやを可愛がったり、いじったりする余裕をみせている一ノ瀬さんだが、今は目を見開き、異常なほどに取り乱している。


美空:そんな素振りひとつも見せてなかったよね!?


彩:だって美空には言ってないもん


美空:美空は彩のお母さんだよね!?そういうのは逐一報告してって言ってるよね!?


彩:そんなこと言ってないし、美空は彩のお母さんじゃないよ


美空:なんでそんなこと言うの彩〜!!!


彩:これで彩も大人の女性の仲間入りだもんねっ


彩:もう赤ちゃんだなんて、言わせないよ


美空:彩〜…!嘘だ!嘘だ!嘘だ〜!


_


そんなやり取りを遠めの席から眺めている僕たち。


友:なぁ…、あーやに彼氏だって…!


〇〇:ねぇ…、彼氏か…、いいな…。


友人と2人で小川さんの彼氏を羨む。


だって、あんなに可愛くて、ユーモアがあって、ちょっとドジするところとか…。


挙げ出したらキリがないくらいに魅力的なあの小川さん。


そんな子の彼氏になれるなんて…。


ずるい。


ずるすぎる。


隣の席になったとき、何回小川さんの可愛さに胸打たれたか。


朝の何気ない挨拶。


休み時間のただの雑談。


授業中のペアワーク。


「ねぇねぇ、ここの問題文の意味が分かんなくてね…、教えてくれないかな…?」


小動物みたいな可愛さで、目をしっかりと合わせて、少し申し訳なさそうに。


でも、僕に教えてもらえることに期待してニコニコとした顔でこちらを覗き込む様子を見て、誰が断ることが出来るのだろうか。


「彩ね、この前近くのスーパーでこんなおっきいトマト見つけて思わず買っちゃったんだよね〜」


「明日、彩、野球観に行くんだ〜、〇〇くんも一緒に来る?」


「わわ…、今日までの課題あるの知らなかったよ〜…、〇〇くん助けて〜…」


色んな小川さんを見てきたけど。


まだまだ僕が知らない小川さんを独り占めできるなんて…。


何度も小川さんが彼女だったらな、なんて妄想した。


そして、同時に僕じゃ小川さんの彼氏にはなれないと気づく。


勝手に小川さんに恋をして。


勝手に自分のステータスの低さを自覚して、勝手に自信を失って落ち込む。


これの繰り返し。


〇〇:はぁ…、いいなぁ…


友:ほんとな…


別に、小川さんの彼氏になれないことなんて分かっていたはずなのに。


どこかで少し期待していた感情が雪崩のように崩れ落ちていく。


僕は一体これからどうやって小川さんと接すればいいのだろうか。


いや…、もう話すことなんてないのかもな…。


-


美空:じゃ…!じゃあさ!彩の彼氏って誰なの…!?


美空:いるんだったらさ…!名前とか、写真とかあるよね…!?


美空:教えられるよね…!?


彩:えー…、内緒


美空:ねぇー…!彩!おねがいだから…!意地悪しないでぇ…!!


美空:ね…?彩の母親としてどんな彼氏なのか知らないといけないでしょ!?


彩:美空は彩のお母さんじゃないよ


美空:じゃ…!じゃあ!彩のお友達として!


美空:知りたいなぁ…


美空:ねぇ…?彩〜…?知りたいなぁ…?


彩:えー…?言うの…?


彩:ちょっと恥ずかしいかも…


美空:なに〜…?彩もしかして彼氏なんていなかったんじゃないの?


美空:私に赤ちゃん扱いされるから見栄張っちゃった?


美空:もー…!可愛いんだからぁ!!!


美空:ほら?本当はいないんだよね?


美空:いないから名前言えないんだもんね…?美空は彩のこと全部分かってるから…、正直に言っていいんだよ…


彩:〇〇くん


美空:ほらー…、言えな…


美空:え…?


彩:だから…、〇〇くん…


彩:〇〇くんが彩の彼氏…


美空:えぇぇぇぇ…!!!!!


美空:ちょっと待って…!?え…?〇〇くん…!?あの?あそこに座ってる…!?


美空:いつから…!?


彩:〇〇くん…!


あの小川さんの彼氏が僕ということが分かるとクラスの全員は目が丸になっている。


本人の僕も1mmも予想していないから思わず体が硬直してしまう。


そんな中、小川さんに名前を呼ばれ、手招きをされたので恐る恐るそこに向かう。


近づくにつれ、小川さんの顔の赤さがより鮮明になっていく。


〇〇:え…?あの…、僕で合ってるの…?


小さく確認してみると、こくっと恥ずかしそうに頷いた。


すると、小川さんは僕の左腕に抱きついた。


彩:彩…、〇〇くんが好きなの…!


美空:えぇぇぇぇ…!!!!!


一ノ瀬さんの大きな声が教室中に響き渡る。


美空:なんで…!どうして…!彩…!いつから…!なんで知らなかったの…!母親としてもっと早く気づくべきだった…!


小川さんの変化に気づけなかったのが余程ショックなのか、頭をくしゃくしゃとしながら、独り言をぶつぶつと呟いている。


〇〇:え…?小川さん…?なんで僕…?


改めてもう一度聞き直してみる。


小川さんの候補にすら入っていないと思っていたのに…。


彩:だって…、〇〇くんは彩のこと赤ちゃん扱いしないでしょ?


彩:〇〇くんはちゃんと彩のこと真っ直ぐ見てくれてる…


彩:美空とかは彩が何喋っても「彩は赤ちゃんだもんね〜」って言うけど、〇〇くんは違うの…


彩:ちゃんと「うん、うん、」って彩の話ちゃんと聞いてくれるし、等身大の彩で接してくれるから…


彩:だからっ…、好きっ……です……


頬を真っ赤に染め上げながら、気持ちを伝えてくれる小川さん。


彩:〇〇くんは彩のことどう思ってるの…?


彩:教えてほしいな…


首を軽く曲げながら、上目遣いで顔を覗き込まれる。


こんなの好き以外言えるもんか。


〇〇:うん…、僕も好きだよ…


〇〇:小川さんがずっと好きだったよ


彩:ふふ…、えへへ…


左腕に巻かれた小川さんの手に、より力が入り、さらに密着する。


すると。


美空:なに、私を蚊帳の外にしてイチャイチャしてんのよ!


しばらく僕たちのイチャイチャを見せつけられていた一ノ瀬さんが痺れを切らしたみたいだ。


そんな一ノ瀬さんを宥めるように言う。


彩:美空そういうことだから…、彩たちのこと美空には応援してほしいな…


美空:っ……!


美空:っ…!私は…、私は…、彩に彼氏だなんて認めないんだからぁ!!!


そう捨て台詞を吐いて教室を飛び出してしまった。


彩:ねぇ…、〇〇くん…?


〇〇:あ…、一ノ瀬さんはいいの…?


彩:んー…、美空は彩のところに戻ってくるもん、大丈夫


彩:よくあることだもん、あれだけど、彩のこと好きだから


〇〇:そ、そうなんだ…


確信できる根拠があるらしく、そんな事はどうでも良いみたいで、熱量を持って話を続ける。


彩:あのね…、彩ね、〇〇くんが彼氏だったら、これやってみたいなってこといっぱい考えてたの…!


彩:お休みの日にいっぱいデート行きたいし、テスト前は〇〇くんに勉強教えてもらいたいな…


もちろん僕だって、小川さんと思うことは同じだ。


〇〇:いいね、小川さんのやりたい事とか行きたいところ、いっぱい行こうね


彩:うん!


彩:彩ね、放課後デートに憧れてて…、今日は〇〇くんと一緒に帰りたいな…


僕の返答に思い切り喜んだ後、照れながらも彼女として初めてのおねだりしてくる。


〇〇:もちろん、一緒に帰ろう、放課後デートしようよ


当たり前にいいよと言うしかないだろう。


彩:やった…!


嬉しそうなその笑顔、そうだ、僕はこの笑顔が見たかったんだ。


彩:彩、〇〇くんが彼氏になってくれて嬉しい…!


可愛すぎる彼女ができました。

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