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エウレカ 私は見つけた 第3話

3  妻ミケーネの独り言

 ロドリゴと結婚したのは28年前。彼は若いロバを買い、私との新生活のスタートに希望を持っていた。ロバを買うのに借金はしたけれど、明るい未来を夢見ていたので、私たちに不安はなかった。

 ロドリゴは、もともと少し内向的な性格だったのだが、少しでもたくさんお金を稼ごうと「ドンキー。ドンキー」と言う呼び声にも、力がこもっていた。

 彼の真面目で誠実な仕事ぶりが功を奏して、当初の予想より早く借金を返すことができた。そして『これからやっと収益が上がるぞ』と思った矢先、彼は1人の幼馴染みから相談を受けた。
 
 『親から譲り受けたロバが病気になり、死んでしまった。新しいロバを買わなければならなくなったが、手持ちのお金が足りないので、少し融通してもらえないか』と。

 ロドリゴはその相談に大いに悩んだ。本音を言えば、自分のところも余裕がなく、大変なので貸したくない。でも、彼には、『友人の力になり、できれば助けたい』という思いもあったのだ。

 決して少ないと言えない額にどうしようかと悩んだあげく、ミケーネに相談すると彼女は
「そのお金はその人にあげるつもりで貸してください。それでもいいとあなたが思ったら、私は反対しません」と答えた。
「えっ? 彼は月々これだけの額を返していくと話している。だから、お金はもどってくるから、大丈夫だよ」
そう言って、ロドリゴは友人にお金を貸した。

 それから1ヵ月後、その友人たち家族は島から失踪した。彼にお金を貸した人は他にもいた。それらの話をつなぎ合わせると、初めからお金を返す気はなく、借金を踏み倒して、逃げる算段をしていたことがわかった。そのため、ロドリゴは二重にショックを受けた。お金が戻ってこないことも大きな打撃だが、もっと衝撃を受けたのが、友人の態度だ。まっすぐした目で、よく俺の顔が見られたものだ。

 「人が信じられなくなった」
 これが深く、彼の心に影を落とした。ロドリゴは、ここで一つ、不思議なことに思い当たった。どうしてミケーネはお金がもどってこないことがあると思ったのだろう。

 問い詰めるつもりはなかったのだが、俺の眼光が鋭かったのだろうか。ミケーネは俺の質問に一瞬たじろいだ。それからポツリポツリと次のような話をした。

 「私の父は友人のために、多額の借金を背負いました。それを返し続けるのに20年もかかったのです。そのため、人生の楽しい時期を、他人のために棒に振ったようなものでした」

 普段は温厚な父だったけれど、一旦お酒が入ると荒れて、母に暴言を吐いたり、叩いたりしました。私に手を挙げる事はなかったけれど、父の機嫌が悪くならないように、みんなで気を遣い、息をひそめるようにして暮らしていました。
 そのため、私は人の顔色をうかがい、だんだんと自分の気持ちを言わないようになりました。

 だからあなたとも結婚が決まった時は本当にうれしかった。これで、この息の詰まるような家を出て行くことができると。
 
 ロドリゴ、あなたは私にとっての救世主でした。でも、いろいろな出来事があなたの心を変えていきましたね。

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