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エウレカ 私は見つけた 第4話

4   ニコラオスの結婚

 ロドリゴ夫妻には、一人息子がいる。それがニコラオス。彼は、母親譲りの端正な顔立ちと、ほっそりした体つきを持ち、ロドリゴの筋肉質の体型とは全く異なっている。それでも跡継ぎとしてロバタクシーの仕事を始めて、2、3年経った頃、美大に通うソフィアと知り合った。彼女はアテネに住んでいて、サントリーニ島には、スケッチ旅行で訪れていた。

 ソフィアに道を尋ねられたとき、近場だったからニコラオスが道案内をしたことが、仲良くなるきっかけだった。

 もともと、ニコラオスは、本好きで好奇心が旺盛。そのため歩く道すがら聞くアテネの話に、強い興味をひかれた。
 そしてはっきり自分の考えを言う、聡明で美しいソフィアに、少し控えめなところがあるニコラオスは、どんどん夢中になっていった。

 彼女が大きな目で、ニコラオスの方をじっと見つめて話すので、彼はソフィアが自分に好意を持っているのではないかと思い、胸がどきどきした。これは、のちに親しくなってからわかったことだが、彼女はスケッチをする時「その目」をする。いわば対象をじっくり観察する習慣が、そのようなニコラオスの勘違いをうんだのだ。

 次の日は、たまたまニコラオスの休みの日だったので、彼はソフィアのスケッチに付き合って、ほとんど人に知られていない絶景に案内した。
 有名なスポットは、いつも人がたくさん押し寄せる。しかし彼が案内したところは、とても静かで、はるか遠くまでコバルトブルーのきらめく海を見渡すことができる。ここは、ニコラオスにとっても、自分が偶然に見つけた、とっておきの秘密の場所だった。
 
 崖の上でスケッチに集中するソフィアの長い髪が、リボンのように風にたなびいき、それはそれは、美しかった。
 ニコラオスは少し離れたところで、ソフィアの描く様子を見守り、長い時間、待ち続けた。
 
 一週間の旅行が終わり、ソフィアが島を離れる日、内気なニコラオスにしては、珍しく
「またこの島に来てください。今回のスケッチが素敵な作品になりますように、願っています」
と、伝えた。これがニコラオスにとっては、勇気を振り絞ったギリギリの表現だったのだ。

 その後、何度もソフィアが島を訪れ、彼らが知り合って3年後、2人は結婚した。ミケーネは、都会育ちのソフィアがこの島で地域の人とつながりを深く、暮らしていけるのか、ちょっと不安に思っていた。しかし、ソフィアはこの美しい島で暮らせることが、ただただうれしく、プライバシーという言葉に、なじみのないこの開放的な土地のことを、あまり意に介さないようだった。

 ギリシャ正教会での厳かな結婚式の後、お披露目のパーティーにはたくさんの人がお祝いに訪れた。生バンドの演奏にのってみんなは夜明けまで踊り、笑い、歌って、とてもにぎやかで楽しい時間を過ごした。

 パーティのあと、ミケーネは思った。
 『ニコラオスとソフィアと結婚は、とてもうれしい。彼女は若いけれどしっかりしてるし、優しいから…。
 今日一日長かったので、さぞやソフィアは、疲れただろう。彼女の生まれたアテネなどの都市部では、だんだんお祭り騒ぎのような結婚披露パーティーがなくなり、もっと洗練されてきているのではないだろうか』


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