【考察1】本作のララァ・スンを考えてみる
TVシリーズでも、劇場版の前半パートである1年戦争改めジオン独立戦争を描いた「ビギニング」のパートが放送されたので、この機会に、なぜか本作には登場していないが、「機動戦士ガンダム(以下「原作」)」での「正史」(ジークアクスの作品世界においてはジオン勝利の歴史が唯一の歴史であり正史なので、この表現は正しくはありませんが、便宜的に「正史」と表記します)ではキーパーソンだったジオン最高のニュータイプ、ララァ・スンが、本作においてどうなったかについての推測・仮説を、改めてまとめておきます。
なお、TV第二話ではビギニングのすべての情報が開示されておらず、特に第二次ソロモン海戦での出来事はほとんど明かされませんでした。
ですが以下の記事では、劇場版の情報も含めて考察していくので、予めお断りしておきます。
■ララァ・スンについて■
このブログを読むような方には、今更こんな説明はいらないと思うのですが、「ジークアクス」第一話の感想動画を見て、今のオタクは存外にファーストガンダムを見ていない(!)ことを知りました。
なのできっと、ララァ・スンと言われても「誰それ?」って言う人が多いと思うのです。なので簡単に彼女について、主観に基づいてざっと説明しておきます。って主観かい!(笑)
なので知っている人は以下、読み飛ばして構いません。
正史のララァ・スンは地球でシャアが才能を発掘したニュータイプの少女でした。元は悲惨な環境で暮らしていたと思われます。しかしニュータイプとして非常に高い素養があり、ニュータイプを研究するフラナガン機関によって能力を開発され「フラナガン機関の秘蔵っ子」と言われていました。

キシリア麾下でシャアの部下の軍人となり、サイコミュシステムを搭載したモビルアーマー(MA)エルメスのパイロットとなりました。サイコミュのテストでビットの遠隔攻撃により、占領したソロモン駐留中の連邦軍の艦船、MSを多数撃破し、その際に「ラ・ラ…」の声を聴いたという連邦軍兵士が多数いたことから「ソロモンの亡霊」と恐れられました。

「ジークアクス」の歴史には登場しない。
正史の主人公でガンダムのパイロットであるアムロ・レイとは、エルメス搭乗に先立ってサイド6で邂逅。当初はアムロより優れたニュータイプであり、テキサスコロニーでは思念でアムロの心に話しかけます。ついには戦場で遭遇、彼女の存在はアムロのニュータイプ能力を更に覚醒させ、ついに彼女を凌ぐほどになりますが、その際にふたりはニュータイプ同士の感応をし、互いを完全に理解し共鳴します。しかし彼女自身はシャアに恩義を感じまた恋愛感情を抱いていたため、最後はアムロの攻撃からシャアを庇い、エルメスのコックピットを貫いたガンダムのビームサーベルによって戦死。その刹那にアムロと感応し、ふたりは未来の可能性を見ます。ララァが最後に遺した言葉は「刻(とき)が見える」でした。
正史ではその後も、アムロとシャアの二人の間に漂い続ける思念となり「逆襲のシャア」ではアムロの夢に登場して語りかけ、「機動戦士ガンダムUC」では、アムロ、シャアと共に刻の彼方に精神が残留していることがほのめかされています。
きちんと知りたかったら「機動戦士ガンダム」の劇場版3作目などみましょう。TV版なら34話から41話まで。
なお「ジークアクス」の第2話をより理解するには「機動戦士ガンダム」TVシリーズでは1-3話(ガンダム起動)、33話(サイド6入港とブラウ・ブロ/キケロガの初出)、35,36話(ソロモン攻略戦)、39話(シャリア・ブル登場と退場。ブラウ・ブロの撃墜)を見ておくことを勧めます。
■総論/本作のララァの扱い■
ゼクノヴァに際し、シャアには「ラ・ラ…」の声が聞こえ、また第1話でマチュが見た「キラキラ」の場面でも「ラ・ラ…」の声が聞こえています。
あれが原作のララァのサイコミュ使用時に聞こえてくる声と同じであることから、「ジークアクス」作中に登場しなくても、本作の世界にララァ・スンが存在しているのはほぼ間違いないと思われます。
この世界で彼女がどういう役割を果たし、何があったのかについては、過去の劇場版の感想noteでも考察記述していますが、この場でもう一度整理して、新しい考えを加えつつ、現時点での自分の仮説を記しておきます。
まずは手短にまとめから。
ララァは、人類の革新を見たいとするフラナガンに発見され、その同志となった
シャアと出会わなかったことで、ララァの才能は軍部に奪われず、フラナガン機関への彼女の協力によって、正史よりサイコミュ開発が進捗した
アルファサイコミュ以前の試作型サイコミュの開発に協力し、これを用いて、ニュータイプの資質がある同志を探索していた
認知したシャアに「ひらめき」を与え、ジオン勝利の道を拓いた
サイコミュの運用中に事故死し、残されたサイコミュに思念が憑依した。このサイコミュが、オブジェクト「シャロンの薔薇」
赤いガンダムのアルファサイコミュに干渉してセクノヴァを起こした。シャアが最後に出会った人物
ニュータイプを糾合し、スペースノイドの真の解放を目的としている
以下、以上のように考える理由を説明します。
■仮説:フラナガン機関の協力者■
当初、ララァは正史と同じく、悲惨な境遇のアースノイドとして存在していたのでしょう。正史ではその後、地球でシャアに見出されたことなっていますが、これは彼がガルマを謀殺したために左遷され、その間に発生したイベントでした。シャアがガルマを謀殺せず、宇宙軍とオデッサ作戦でずっと活躍していたこの歴史では、シャアはララァと出会わなかったはず。よって軍属に、また兵士にされることもなかった。代わりにこの世界では、ニュータイプを研究するフラナガンあるいは彼の組織が彼女を発見したと考えられます。
フラナガンは、彼がシャアに語った通りニュータイプの可能性を信じて、ニュータイプが導く人類の革新を見たいと考えていたと思われます。彼はシャアをサンプルとして作成したニュータイプに関するレポートを、キシリアを裏切ってシャア自身に見せ、シャアに自覚を促していることから、少なくともシャアと出会った時点では、それは本心だったと思います。

「これは本来、キシリア閣下に上げるはずの報告書であろう。そのコピーをなぜ私に見せる」
「フラナガン博士、貴様私に何をさせたい」
「私は一介の技術者です。人の革新があるのなら、それを見届けたい。それだけの男にすぎません」
正史のように、ララァが恵まれない境遇からフラナガンに救われたとすれば、ララァはこうしたフラナガンの志に賛同したか、あるいは逆に、ララァが先のような理想を持ち、フラナガンを感化したと思われます。
つまりフラナガンとララァは、ニュータイプ主導の理想社会を目指す協力関係だった。また、ララァにそのような思想があったことが、後に彼女がゼクノヴァを起こすことに繋がったと考えます。

■仮説:サイコミュ技術の発展に貢献■
すでに多く指摘されているように、ジークアクスの世界では、1年戦争(ジオン独立戦争)時点でのサイコミュ技術が正史より進んでいますが、これはフラナガン機関のニュータイプ研究・サイコミュ技術開発に協力的だった非凡なニュータイプがいたというのがもっとも現実的な説明です。
そしてこの人物がララァだったと考えられます。

フラナガンはララァという優れたニュータイプのリソースをサイコミュ開発に全振りでき、また、ララァ自身にも、フラナガンに協力してサイコミュ開発を進める理由があったのでしょう。なお、時制的にララァの歴史への登場、サイコミュの開発開始も、正史よりずっと先行していたと思われます。
■「試作サイコミュ零号機」の可能性■
では、ララァが開発に協力したサイコミュが、UC0079時点にあるとすればどんなものか。
素直に考えると、それは作中に最初に登場したアルファサイコミュということになりますが、自分はそうではないと考えています。ガンダムに搭載されたアルファサイコミュはいわば「(軍事用の)試作初号機」であって、その前に最初期型の実験機、いわば「零号機」があったはずです。
なぜそう考えられるか。
作中で、赤いガンダムに搭載されたアルファサイコミュはもともと開発を中断したMAに搭載する予定だったとされていますが、赤いガンダムが装備したビットが正史のMAエルメスのそれと酷似していることから、開発を中断したMAは正史のエルメスに当たる機体でしょう。

第二話のシャアとシャリア・ブルの会話はこうでした。
「計画中の専用MAに搭載予定だった試作アルファ型のサイコミュを、無理を言って詰め込んでもらった」
「サイコミュ?」
「人の認知能力を拡大し、ミノフスキー粒子下でも無線による情報通信を可能にする新たなシステムだ」
「あれはサイコミュを介し、操縦者の脳波に直接反応する無人攻撃機ビットだ。戦争を左右すると言っていいテクノロジーだが、実用テストはまだこれからだ」
しかし、正史で最初に登場したサイコミュはエルメスのものではありません。それ以前に、MAブラウ・ブロに搭載され、シムス・アル・バハロフとコワルら技術士官が調整していたサイコミュが存在しました。ブラウ・ブロの有線オールレンジ攻撃を可能にした、しかしエルメスのような遠隔攻撃はできないサイコミュです。次のキシリアのセリフからも、エルメスの方が優れた兵器、あるいはより強いニュータイプの資質を要求するサイコミュであることがうかがえます。
「もしそのシャリア・ブル大尉の能力がララァより優れているのなら、エルメスをシャリア・ブルに任せることも考えねばならぬ」
だとすれば、本作の世界にもアルファサイコミュに先行して製造された、いわば「試作サイコミュ零号機」が存在するはずです。

おそらく、この最初のサイコミュは、MAやMSへの搭載を想定せず(この世界のMA開発はギレン・ドズルの管轄でキシリアではなかった。またアルファサイコミュのMSへの搭載は、シャアが無理を言って実現させたこと)基地施設に固定する大きなもので、それ故に大出力が可能だったのではないか。また秘密研究なのでキシリアの本拠地であるグラナダの地下にあったというというのが自分の仮説です。また、この世界ではこの開発にシムス・アル・バハロフとコワルらが関わっていると思います。

なお、小説版「機動戦士ガンダム」では、MAエルメスは本体が月面の地下にいて、地中からドク(ビット)を遠隔操縦しています。
■仮説:サイコミュの非軍事利用■
前項で仮定した「試作サイコミュ零号機」が存在したとして、ララァはこれをどう運用していたか?
もう一度、先のシャアとシャリア・ブルの会話を読み返してみればわかりますが「サイコミュ」と「ビット」は別の技術であって、あくまでサイコミュは「認知能力を拡大する情報通信技術」で、ビットはそれを利用した遠隔兵器です。よってサイコミュには非軍事的な用途も考えられます。

それを踏まえて、手がかりは、プロジェクトのトップであるキシリアの思惑です。作中の描写から、マリガンが言ったようにキシリアには「遠大な計画」があり、この戦争にとどまらず、ニュータイプの活用についてギレンより大きなビジョンを持っていることがほのめかされていました。
「キシリア様には遠大な計画がおありのようです。シャア大佐にはなんとしても協力をお願いしたい」

「一月で終わるはずの戦争が、すでに9ヶ月です。大佐の活躍で速やかに終わらせてください」
「買いかぶり過ぎだな。ガルマも言っていただろう。MSも所詮は陸戦兵器だ、私一人で戦局が変えられるものではあるまい」
「そうでしょうか? もし、大佐が特別な人でおありなら…」
「戦局の切り札ともなれるサイコミュだ。実戦投入を急がねばならんが、問題はギレン兄か…総帥の唱える人の革新は口先ばかりだからな」
キシリアのセリフからは、ギレンがニュータイプ論をただのプロパガンダとして扱っていることへの不満がうかがえます。裏返せば、キシリアも「人の革新」としてのニュータイプの可能性を買っていた可能性があります。
キシリアの構想の内容は未知ですが、それがどのようなものであれ、十分な人数のニュータイプが確保できるという前提要件があるはずです。つまりキシリアとフラナガン機関は、一定数のニュータイプを確保していたか、その目処が立っていたと考えられます。
繰り返しますが、サイコミュは情報通信システムです。そして過去の作品で描かれてきたように、サイコミュはそれを操るニュータイプが、他のニュータイプと感応するのを補助し、また媒介します。これはサイコミュがニュータイプ探索に応用出来ることを示唆しています。
このことから、ララァは試作サイコミュを用いて他のニュータイプを探索していた可能性が高いと自分は考えています。
当時、軍事的により多くのニュータイプの発見が要求されるのは当然として、前述の通り、フラナガンとララァに「ニュータイプによる人類の革新」という目的があったとすれば、同志となるニュータイプの発見も、その目的にかなうものです。
あるいはニュータイプの探査こそ、サイコミュの真の開発目的だった、という可能性すらあると思います。

根拠として、作中でフラナガンはシャアと密会した際に「私の他にニュータイプはいるのか?」と問われてシャリア・ブルが登場する流れになっています。つまり演出的に、シャアにシャリア・ブルをニュータイプとして引き合わせたのはフラナガンです。少なくともそういう情報を提供したと考えられます。

正史では、フラナガン機関は、ギレンの命令を受けて木星船団からのデータを元にシャリア・ブルを研究し、「シャリア・ブルに関するニュータイプの発生形態」なるレポートを作成していました。しかしこの世界では、フラナガンが同様の研究レポートの対象としたのはシャアでした。
ならばフラナガンは別の方法、理由で、「木星帰りの自称、勘がいいだけの男」がニュータイプである確証を得ていた事になります。
なお、シャリア・ブルとシャアの会話から、シャリア・ブルは自分がニュータイプであることについて、シャアから自覚を促される流れになっており、正史におけるギレンの役割をシャアが果たしていました。
■シャアを導いた「ひらめき」■
以上を前提として、シャアによるサイド7襲撃直前の「ひらめき」をもたらしたのも、実はララァだったのではないか、とも推測しています。
この「ひらめき」がいつ、どこで、どのようにシャアにもたらされたものかは、劇場版でもTV版でも明かされていませんが、文脈から言って、ガンダムとペガサスの強奪という思いつきを促すものだったと思われます。
「しかし、なにも少佐自ら出向かずども」
「赤い彗星の勘…だそうだ」

「やはり…動くか」

あるいは彼にはもともと、これは「動かせる」という「予感」があったのか
「それとも、私の運がよかったのかな?」
「……いや。あのときのひらめきが、すべてを変えた気がする」

これがララァの仕業なら、本作では物語が始まる前から、ララァはサイコミュによって彼を一方的に認識しており、まずは彼を刺激して連邦軍のV作戦を頓挫させ、スペースノイドのため連邦にジオンが勝利する未来を拓いたのかもしれません。
もしそうなら、ジオンのニュータイプ研究とサイコミュ開発は、UC0079の9月より以前から行われていたことになります。

また、この時点からすでにララァのシャアへの干渉があったと考えるもう一つの理由は、フラナガンがレポートの対象にシャアを選んでいたことです。
ララァの干渉がシャアのニュータイプ能力を発現させたのなら、フラナガンがニュータイプの発生に関するレポートのサンプルにシャアを用いたことも説明がつきます。木星帰りのシャリア・ブルを待つまでもなく、発生段階から観測できる有望なニュータイプが地球圏にいたわけです。
加えて、ララァがシャアの正体=出生まで感知していたのなら、フラナガンが声をかけるべき存在は彼以外にない。血統的にキャスバルこそスペースノイドを導くべき人物だからです。
■仮説:ララァの死と「シャロンの薔薇」■
しかし、フラナガンとシャアが出会ったときに、フラナガンはララァの存在を語っていない。ということは、その時点でララァはすでに何らかの理由で死亡していたと考えられます。

ララァの死因は謎ですが、正史の調整前のエルメスのサイコミュがそうだったように、最初期のサイコミュの長時間の運用や、長距離の遠隔認識は使用者に大きな負担をかけたはずです。原作ではソロモンでのテスト運用後、ララァの負担を軽減するために、シャアの要請でビットによる長距離攻撃が行えないように調整が行われています。この世界では、こうした調整が行われず、ララァはサイコミュの運用中に事故死したと思われます。

しかしララァの思念は現世に留まり、残されたサイコミュに憑依したのではないか―劇場版で、グラナダの地下にあったというオブジェクト「シャロンの薔薇」とは、ララァが憑依した試作サイコミュ零号機のことであり、それを操っていたララァ、またララァとセットの異称ではなかというのが自分の仮説です。そして「シャロンの薔薇」は、ララァの死後も動作し続けるなど、何らかの不可解なオカルト現象を起こしていたのではないか、と思っています。
正史では死後も思念がこの世に残ったララァは、アムロとシャアに固執するようになりますが、本作の世界では、生前のニュータイプによる人類の革新という大望へのこだわり、人類社会を見守りたいという意思が残っているのではないか。またそのために、有望なニュータイプを発見し、導き、スペースノイドの未来のために糾合することが彼女の行動原理ではないかと考えます。
■ララァは人体実験に供された?■
なお、ララァが人体実験に供された可能性は排除します。
人体実験・解剖などの猟奇的なニュータイプや強化人間の利用は、正史ではアムロの活躍を通して、軍部がニュータイプを人間ではなく兵器と見做すようになったZ以後のことで、ニュータイプ研究の黎明期であるUC0079の時点では考えにくいためです。当時、ララァやシャア、シャリア・ブルのような存在は、モルモットにするにはあまりにも貴重だったはずです。
また、アムロのように「素直にあり様を示しすぎた」ニュータイプがいない世界において、またビットさえ実戦運用されていないのに、ニュータイプが戦争に有益かどうかなど未知数です(連邦軍においては、アルテイシアがニュータイプ能力を発現しビグザムを撃墜したと思われるのでその限りではないが、戦争に負けたので、その後の影響力は大きくないはず)。なのに、いきなり兵器化を前提、目的とした人体実験の生贄にされたという予想は飛躍しており、論理的に無理があります。
そしてなにより、フェネクスに憑依したリタがそうであったように、ニュータイプを害して死んだ後に軍に従わせることは不可能です。残留思念があるなら、復讐されるリスクすらあるかも知れません。
本作の主題はおそらく「ニュータイプやスペースノイドの解放」でしょう。すくなくとも表向きは、ジオン独立戦争を経て、ニュータイプが単なる殺人兵器とならずにすんだ世界であることに留意すべきです。むしろニュータイプはグラナダを救ったのであり、ジオン側に、これを虐げる判断はでてこないのではないかと思います。
■ゼクノヴァは説明不能だが…■
ゼクノヴァは、何者かがアルファサイコミュに干渉して発生しています。
最有力の存在はやはりララァであり、この時点では死んでいて、グラナダの地下から消滅したシャロンの薔薇、それに憑依しているララァの思念体が起こしたものと推測します。

ゼクノヴァは、ニュータイプの思念が物理的に作用する、アクシズショックの亜種であるということは言えそうです、アクシズショックではあのような物理的な「消滅」はありませんでした。失われた部分は素粒子にまで分解されてしまったのか、それとも異次元に転移してしまったのか、この辺は全くわかりません。
ただ、ゼクノヴァをあの時点で起こした理由については、ひとつの推測があります。それは、ソロモン落としの局面こそ、シャロンの薔薇/ララァがキシリアと袂を分かつ好機だったから、というものです。

ソロモン落としは連邦軍最後の宇宙作戦でした。戦争の趨勢は決しており、ジオンの勝利はほぼ確定していました。
ですが、ソロモン落としでジオンの生命線であるグラナダが消滅すれば、長期的にはジオンは衰退し、連邦がスペースノイドを支配する未来が待っています。これは前述したララァの目的にそぐわない。
一方、ソロモン落としが回避されれば、連邦の影響力を宇宙から排除できるので、グラナダを救うのはララァの目的にかなっています。そしてあの局面、ララァはそれを可能にする好機を得ていました。それは、ソロモンにサイコミュ兵器があったことです。だからアルファサイコミュに干渉してゼクノヴァを起こした、と考えられます。

ただ問題は、おそらくシャロンの薔薇はいつでもグラナダから逃げることが可能だったはずですが、なぜグラナダから姿をくらましたのが「あの時」だったのか、です。
理由はふたつ考えられます。
ひとつはシャア=キャスバル・ダイクンをキシリアの元から逃がす、あるいは確保できる機会を得たから(あるいはアルテイシアも。が、これはアルテイシアの安否が不明なのでわからない)。もうひとつはこれが戦時中の混乱を利用して姿を消す最後のチャンスだったからでしょうか。
ジオンの遺児であるシャア=キャスバル・ダイクンを奪うことは「ニュータイプがスペースノイドを導く」大義、旗印を手にすることと同義です。シャアが手に入れば、あえてジオンやザビ家と共にある理由はなくなります。
また、第4話予告を見る限り、連邦軍には100キルオーバーのパイロットがいたらしい。シャアでさえ60キルであるので、その人物はニュータイプ、つまりアルテイシアである可能性が高く、彼女が未帰還であるなら、彼女もゼクノヴァに囚われたことになる。彼女もまた、スペースノイドの首領になりうる立場です。
また、シャアはあの時点でキシリアに出生を掴まれていたので、ザビ家としては危険人物です。ソロモン破壊作戦後、用済みとなったシャアは直ちに確保され、その場で処刑という可能性もあった。あるいはキシリアの計画に利用される可能性も考えられます。またそれはシャロンの薔薇も同じで、戦後は好ましくない扱いになる可能性があったと思われます。

一方で、だからこそシャアもキシリアを謀殺しようとしていたのかも知れません。戦争が終わるとなれば、ついでにキシリアとともにグラナダが消滅し、今後長期的にジオンが衰退することは、戦後にザビ家との抗争を目論むシャアの利益にはかなっていました。
しかしこれはララァの望むところではなかったわけです。
よってララァはあのタイミングでキシリアの下から去り、ゼクノヴァによってグラナダを保全してジオンを勝たせ、連邦を宇宙から排除するだけでなく、キャスバル(とアルテイシア?)を「ニュータイプ陣営」に確保したのだと思われます。

「ラ・ラ…」の声が聞こえるゼクノヴァの最中、シャリア・ブルがどうにか傍受した最後の通信で、シャアは「何者だ?お前は!」といっているので、シャアは間違いなく、初対面の誰かと出会っています。状況証拠的にはこれはララァ・スンと解釈するのが妥当でしょう。
シャアが最後に残した言葉は「なんということだ。刻が見える」でした。これは奇しくも正史のララァが残した言葉と同じであり、彼が正史のララァと同じ末路を辿ったのだとしたら、彼の存在は思念体など、別の形態に姿を変えていると思われます。
最後に、ゼクノヴァで消滅したはずの赤いガンダムは、UC0085には現世に戻ってきています。
あれが同一機体だとして、それをしたのもおそらくララァでしょう。あるいは赤いガンダムにはシャアが憑依しているのかも。しかしシャリア・ブルはシャアを知覚していません。
ただ「刻が見える」ララァは、今後、赤いガンダムが現世において必要となる局面がある≒再びゼクノヴァが起きることを知っていると思われます。
■キラキラとララァ■
最後に「キラキラ」の際にララァの声が聞こえることについて。
「キラキラ」はおそらく、正史でも度々描かれた優れたニュータイプ同士の感応が脳に見せる幻覚です。
あの光の先の向こうにまで達すれば、おそらく正史のララァが死に際に見たように「刻の彼方」まで見えるのでしょう。本作のシャアもソロモンで消える直前にそれを見たと思われます。

本作のララァ自身はこの光の彼方に存在していると考えられ、優れたニュータイプにキラキラを見せて、仲間を呼び集めているのではないでしょうか。
もしそうなら、キラキラこそ、ララァ≒シャロンの薔薇の在処の手がかりかもしれません。

またあるいは、この光こそ「逆襲のシャア」で描かれた「人の心の光」なのかも。「UCガンダム」では、フル・フロンタルが、あの光を見ても人類は覚醒しなかった、と嘆き愚痴っていましたが、本作のマチュは明らかに魅せられています。
以上です。
真相は作品が種明かしするのを楽しみに待とうと思います。
(2025/04/16 初稿・加筆)
(2025/04/17 加筆)
(2025/04/18 一部修正)
(2025/04/23 加筆・修正・画像、キャプション追加)
(2025/04/26 一部削除)
(2025/05/27 改題)

