甘酸っぱい野いちごが教えてくれたこと
田んぼへ向かう途中、草むらの中に赤く色づいた野いちごを見つけた。
それを見ると、子どもの頃の記憶がよみがえる。
夢中になって摘んでは口に運び、顔をしかめたり、思わず笑ったりしていたあの頃。
ひとつ摘んで口に入れる。
「あまい」
「すっぱい」
「少し青臭い」
一粒一粒、味が違う。
同じ場所に実っていても、それぞれに違う表情がある。
自然の中で育ったからこその、不揃いで、正直な味だと思う。
そんな時間を、子どもにも味わってほしい。
自然の中で、味覚や嗅覚を使い、自分で考え、感じる力を育ててほしいと思って、野いちごを一緒に食べていた。
するといつの間にか、子どもは野いちごが大好きになっていた。
見つけるたびに
「あっ、野いちご!」
そう言って駆け寄り、まだ熟しきっていない実まで「おいしい」と食べる。
その姿を見るたびに、子どもの感覚の素直さに驚かされる。
けれど今は、田んぼのまわりにも農薬や除草剤が使われていることがある。
草の色や周囲の様子を見ながら、気をつけなければならない。
本気で農業で生きている人たちのことを思えば、簡単な話ではない。
効率や現実を考えれば、必要な場面もあるのだと思う。
それでも、子どもの未来を思うと、まずは自分ができるところから、なるべく使わずに生きる努力をしたい。
便利なものは、今ではホームセンターに行けば簡単に手に入る。
だからこそ、少し怖さも感じる。
そんな人間の事情など知らず、野いちごは今日も太陽の光を浴びて、真っ赤な実を輝かせている。
小さなトゲをまといながら、
「そう簡単には食べさせないよ」
と言わんばかりに、懸命に生きている。
その姿に、ただ感謝する。
ひとつ摘み、命をいただく。
自然の恵みから力をもらいながら、
いつかもっと自然と調和して生きられる日が来ることを願っている。
諸行無常。
すべては移り変わっていく。
だからこそ、失われる前に、
この甘酸っぱい記憶を、子どもへ手渡していきたい。
