見出し画像

山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し【大塩平八郎の乱 #名言ノート86】

今回紹介させてただく名言はこちら!

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」



解説

「山に立てこもる賊を討伐するのは比較的簡単だが、心の中の煩悩や欲望を抑え、打ち勝つことは非常に難しい」という意味です。真の敵は他者ではなく、まさに己の中にいるということを気づかせてくれる言葉です。

山中の賊を破る

物理的な敵や困難、つまり外的な障害を打ち破ることは、ある程度は努力や戦略によって達成可能であることを意味します。

心中の賊を破る

一方、心の中の煩悩、欲望、迷い、誘惑といった内面的な障害を克服することは、非常に困難であることを表しています。これは、自己の弱さや欲望と常に戦い続けなければならないため、より高い精神的な強さや自己制御が必要とされるからです。


言った人

王陽明

王陽明(おうようめい、1472年 – 1529年)は中国明代の儒学者・思想家です。王陽明の思想は、知行合一(知識と実践は一体である)や、万人が生まれながらに「良知」を持っているという考え方を重視しており、この言葉もまた、自己の内面と向き合い、真の自己を実現することの重要性を示唆しています。

王陽明は、朱子学が形式化し、読書や机上の空論に陥りがちであったことに対し、それを批判的に乗り越える形で、実践的な儒学である陽明学を提唱しました。


主な三つの思想

◆心即理(しんそくりのり):

理(宇宙の根本原理)は、心の外に存在するのではなく、心の内に本来備わっていると説きました。つまり、真理は外に探し求めるものではなく、自己の心の中に存在する、という考えです。

◆知行合一(ちこうごういつ):

知識と行動は一体であるという考え方です。「知っている」ということは、それを行動に移して初めて真に「知っている」と言える、と説きました。知識と実践を切り離すことはできない、という実践的な側面を重視しました。

◆致良知(ちりょうち):

人間には生まれつき善悪を判断する「良知」が備わっており、この良知を磨き、発揮することが重要であると説きました。


日本への影響

日本においても、江戸時代の幕末の志士たちに大きな影響を与え、中江藤樹や熊沢蕃山といった人物が陽明学を学び、日本の思想にも大きな足跡を残しました。

王陽明は単なる思想家にとどまらず、高級官僚として、また武将としても活躍し、反乱鎮圧などで多くの功績を残しました。その生涯を通じて、自身の思想を実践し続けた人物として知られています。


大塩平八郎も引用した言葉

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」という言葉は、似た言葉として「山中の賊に克つことは易しく、心中の賊に克つことは難し」としてもよく知られています。これは、江戸時代後期の儒学者であり、大坂町奉行所の元与力(警察や行政の役職)として知られる大塩平八郎が残した言葉です。

大塩平八郎は1793年生まれ、1837年没ですので、1472年生まれ、1529年没の王陽明よりも後の時代の人であることは明白です。大塩平八郎は陽明学者でした。大塩平八郎は、大阪の役人でありつつ、王陽明が提唱した陽明学を信奉する思想家でもありました。

私利私欲を捨てて民衆のために行動した「知行合一」を体現した人物として、現在でも語り継がれています。大坂町奉行所で治安維持や市政を担当した役人として、不正や汚職を徹底して追及し、清廉潔白な人物として知られました。「大阪に大塩あり」と称されるほど、その活躍は有名でした。


陽明学が発端になった「大塩平八郎の乱」

大塩平八郎の乱(おおしおへいはちろうのらん)は、一言で言えば『世直し』です。1837年(天保8年)に大坂(現在の大阪市)で、元大坂町奉行所与力であった大塩平八郎とその門弟らが起こした江戸幕府に対する反乱です。「大塩の乱」とも呼ばれます。

米不足によるコメの価格高騰が発端になっているという背景があるため、なんだか今の日本とシンクロする一面がありますよね・・・


きっかけは米不足

深刻な飢饉と米価高騰による飢饉により、特に東日本を中心に全国的に凶作が続き、米不足が深刻化しました。大坂でも米価が異常に高騰し、多くの民衆が飢えに苦しみ、餓死者まで出る状況でした。大塩平八郎は、堕落した社会を立て直し、市民を救済することを目的として『反乱』を起こすことを決意しました。

大塩は、民衆の窮状を救済するため、当時の大坂町奉行に対して何度も建議書を提出し、米の買い占めを行う豪商の取り締まりや、備蓄米の放出などを訴えましたが、聞き入れられませんでした。それどころか、町奉行所は江戸への米の廻送を優先したり、一部の役人や豪商が不正に私腹を肥やしている状況でした。大塩は、幕府や奉行所の腐敗と、民衆を顧みない姿勢に強い義憤を抱きました。

大塩は、自身の蔵書約5万冊を売却して得た資金で火薬や武器を購入し、門弟や近隣の農民を組織して武装蜂起の準備を進めました。決起にあたって家族と離縁するなど、並々ならぬ覚悟を示しています。


反乱の結末と影響

1837年(天保8年)2月19日(旧暦)、大塩は自らの屋敷に火を放ち、大坂市中に檄文(決起趣意書)を配布して決起を呼びかけました。彼は「救民」の旗を掲げ、豪商の屋敷を襲撃し、金銭や米を奪って飢餓に苦しむ人々に分け与えました。

しかし、乱は事前に情報が漏れており、奉行所側も準備を進めていました。大塩勢は一時的に勢いを増し、大坂市街の一部に火を放ちましたが、元々武装が貧弱であったこともあり、わずか一日で幕府軍によって鎮圧されました。大坂の市街地の約4分の1が焼け野原になったと言われています。

大塩は潜伏しましたが、約40日後に隠れ家を包囲され、自ら火薬を用いて自決しました。

しかし、元役人である著名な儒学者が庶民のために立ち上がったことは、当時の社会に大きな衝撃を与え、その後の各地での一揆や反乱、さらには幕府の政治改革(天保の改革)にも影響を与えたと言われています。

大塩平八郎の乱が直接幕府を転覆させるような『世直し』を達成することはありませんでしたが、その思想は脈々と受け継がれ、現代の日本人の精神を形作る礎となっていると思います。大塩平八郎のころは米不足による飢饉で多くの民衆が命を落としていましたが、今となっては万博会場に思い切ってガンダムを飾ることができるくらい自由で豊かな国になりました。

※大塩平八郎終焉の地の石碑と万博のガンダムは最近大阪旅行に行った際に自ら撮った写真です。

儒学 ⇒ 朱子学 ⇒ 陽明学

陽明学の大元になっているのが儒学です。儒学とは簡単に言うと孔子(こうし)が始めた中国の思想・学問です。人間関係と道徳が中心: 「人としてどうあるべきか」「社会をどう治めるべきか」といった、人間がより良く生きるための道徳や倫理を重視する思想です。

日本でも江戸時代には儒学をベースに、大阪幕府が権力を維持するための思想として都合よくカスタマイズ『朱子学』された武士の教養として広く学ばれ、現在でもその思想の一部は私たちの日常生活や考え方に息づいています。

陽明学は朱子学の形式化を批判する形で登場しました。朱子学が「まず学んでから行動せよ」という学習・知識重視なのに対し、陽明学は「知っていれば行動せざるを得ない、行動こそが真の知である」という実践・行動重視の姿勢を示していると言えます。

儒学(朱子学 / 陽明学)は日本の文化に非常に深く根付き、私たちの日常生活や社会のあり方に多大な影響を与えてきました。

年功序列、終身雇用、礼儀作法といったような「古き良き日本」と言われて思い浮かぶような日本の文化は儒学(朱子学 / 陽明学)をベースに構築されてきたものです。


まとめ

人生は生かされるものではなく生きるものです。もちろん、生まれや育ちや才能に個人差はありますが、現代の日本に五体満足で生きている人であれば、何かを成し遂げれるかどうかは己に打ち勝てるかどうかがカギと言っても過言ではありません。

ほんの80年前の戦争を経験してきた時代に比べれば私たちが生きる現代は可能性に満ちあふれています。反面、安価で手に入るけど人生を奪うものが多すぎる側面もありますが‥‥例えば、SNSやジャンクフード、アルコールやギャンブルといった依存性の強い誘惑が私たちの生活の周囲でいつでも手をこまねいています。

やりたいと思うことはなんでもチャレンジできる社会で、同様にさまざまな誘惑が四六時中襲ってくるような生活のなかで、周囲と自分を比べていてもなにも人生は前にすすみません。

上を見ればキリがありません。SNSでは自分と比べてお金も時間も信じられないくらい自由にできる人の発信に触れることができます。(フェイクかどうかは別として)

下だって同じです。まぁそれぞれ上とか下とかはあくまでも自分の解釈とか価値観でしかないのでそんなものは存在しないのですが‥‥

なによりも貴重な人生の時間を、他人に比べて劣っているとか優っているとかを必要以上に気にするという不毛な活動で消耗してしまいます。

打ち克つべきはただひとり、自分自身です。自分に打ち克つことが道を開く唯一の方法です。(とはいえ自分のことを嫌いになれと言っているのではありません。)

王陽明が陽明学を提唱したように、もしくは大塩平八郎が自ら実行したように、役職や立場に左右されず、本質を見極めて自分が信じた道を進むことができれば、たとえ結果がどうであれ自分の人生に納得することができるんじゃないでしょうか

「山中の賊を破るは易く心中の賊を破るは難し」

または

「山中の賊ぞくに克かつことは易しく、心中の賊に克つことは難し」

この言葉をふとした時に思い出してみてください。

📢おしらせ

最後まで読んでいただきありがとうございました。『スキ』や『フォロー』大歓迎です!Noteでの活動の励みになります!

改めましてこんにちは。『Nick』と申します。大学は出てないけれど読書を続けて外資系企業で10年以上。そんな等身大のサラリーマンが200冊以上の読書経験と、日々の仕事や暮らしの中で出会った「心に刺さる名言」を紹介します。マンガ・アニメ・映画などサブカルチャーからの引用も多数掲載!

自己紹介とご挨拶

自己紹介とメイントピックの紹介はこちら!▼

名言ノート一覧リストはこちら!▼

いつか本を出版してみたいなと夢見てたりもします!▼


いいなと思ったら応援しよう!

名言ハンターNick 読んでいただきありがとうございます。この記事の内容がちょっとでもあなたの人生の役に立てばうれしいです。