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7歳の小さな光と、世界を動かした一枚の音符

東京の、窓から空しか見えない無機質な病室。そこで、7歳の星野 結(仮)は、筋ジストロフィーという不治の病と闘っていた。身体の自由は少しずつ失われ、未来への希望も薄れていく中で、彼女の唯一の楽しみは、ヘッドホンから流れる音楽だった。

特に彼女が好きだったのは、デジタルアートと音楽を融合させた作品で知られる、匿名性の高いクリエイター、「ノートル」がnoteに投稿する日々の「音のスケッチ」シリーズだった。ノートルの楽曲は、単調な日常に豊かな色彩を与え、結の心にわずかながらも「動く」喜びをもたらしてくれた。

ある日、結は小さな決意をした。動かしにくい右手の指先で、スマートフォンにメッセージを入力し、ノートルがnoteで公開しているメールアドレスに送ったのだ。

「ノートルさん、はじめまして。わたしはゆいです。びょうきで、もうすぐうごけなくなっちゃうかもしれないけど、ノートルさんのきょくをきくと、せかいがいっぱいあるんだって、おもえます。いつか、わたしだけの、おそらのいろのうたをききたいです」

この、たどたどしいながらも切実な願いは、ノートルに届いた。

実はノートルこと藤井 健太は、過去の失敗から表舞台に出ることを恐れ、匿名で活動する売れないミュージシャンだった。自分の才能に自信を持てず、惰性で創作を続けていた彼にとって、結からのメッセージは、予想外の衝撃だった。

健太は、病室の窓から見た「おそらのいろ」の音楽、つまり、結の視点から見た空の色を表現する挑戦を決意する。彼は結とのやり取りをnoteで静かに公開し始めた。

「彼女は毎日、青、白、時には夕焼けのオレンジを混ぜたような空の色を教えてくれます。その色の粒一つ一つに、メロディーを当てていきたいと思います」

健太は、結が送ってくる空の色の写真を解析し、その配色を音階とリズムに変換する、「カラー・シンフォニー」というプロジェクトを立ち上げた。彼は、結が送る空の写真をnoteに投稿し、その写真に対応する短いインストゥルメンタル曲を毎日公開した。

青い空には澄んだピアノの音。 雲一つない白には、静かなチェロ。 燃えるような夕焼けには、壮大なストリングス。

この連載は、瞬く間にnoteで話題となり、「不治の病の少女の命の記録」として多くの読者の心を打ち、数えきれないほどの「スキ」とコメントが寄せられた。共感した読者たちは、結への応援メッセージと共に、健太の創作活動を金銭的に支援し始めた。

連載開始から3ヶ月。病状が悪化し、意識を保つことすら難しくなってきた結のために、健太は最後の曲を完成させた。タイトルは「星彩(せいさい)のエチュード」。

その日、健太は特別に許可を得て病室を訪れた。結の小さな手を取り、完成したばかりの曲を流した。それは、彼女がこれまでに送ったすべての「おそらのいろ」を束ね、力強い未来への希望を感じさせる、温かくも感動的な旋律だった。

結の目から、一筋の涙が流れた。そして、彼女は健太に、かすれた声で言った。

「…きれい…」

「星彩のエチュード」は、その後、noteで爆発的に拡散され、多くの音楽レーベルからオファーが殺到。健太は匿名を解除し、その収益の全額を筋ジストロフィー研究機関に寄付した。

結は、数週間後に静かに息を引き取った。しかし、彼女の「おそらのいろ」は、ノートルこと藤井健太の音楽を通して、多くの人々の心に残り、「絶望の淵でも、小さな光は世界を変えられる」という感動的なメッセージとして語り継がれている。noteに投稿された、一枚の空の写真と、それに応える一枚の音符から始まった物語は、今も多くの人々に生きる勇気を与え続けている。

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