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『天使のご鞭撻』/短編読み切り

湖のほとりで天使と悪魔が並んで座っている。
二人はまだ下っ端で、本当は仕事以外でこんなに長く会うのは天使と悪魔の立場的に良くなかったが、それでも会っていた。

「今日はどうしたの。」

天使が悪魔の顔を覗き込んで言った。悪魔の顔はいつ見ても不機嫌そうな悪人面だったが、今日は眉間に皺を寄せより一層凶悪な面をしていた。

「上のヤツに…」
「うん…」
「上のヤツに、お前は人間の感情がわかってないから今回の仕事を失敗したって言われた。」
「悪魔でも分からないことがあるの?」

悪魔はムッとした。いつもは悪魔が教える側だった。人間の泣かせ方…人間の魂の取り方…天使が知らなくて良いことばかりだったが、それでも鼻高々と天使に教えて、天使はニコニコそれを聞くのがいつものやりとりだった。

「いつもみたいに人間の魂をとって持って帰ろうとしたんだ。仕事だから…そしたらその魂は恋に落ちてるから摘み取るのが早いって言われた。」
「どうして早いの?」
「恋に落ちてたら、心酔させるか、恋が破れて深く傷ついた状態が良いって。林檎が青いうちにとるなって怒られた。」

悪魔は湖の表面を鉤爪の足で引っ掻いて、そのまま蹴り上げた。水がパラっと散って水面に波紋を作った。

「お前は愛が分からないから上質な魂が取れないんだって言われたけど皆分かるもんなのかよ!知ったかぶりじゃないのか?本当は知らないのに、俺を怒りたいから知ってるふりをしてるだけなんじゃないのか?」

悪魔は捲し立てる様に怒った。
それを見た天使は、悪魔の方にぐいっと近寄ると、軽い音を立てて頬にキスをした。悪魔は驚いて芝生の上を転げながら飛びのいた。

「何した?」

天使はにこりと微笑んだ。

「愛」
「気持ちの悪い…」

悪魔はそう言いながら天使の隣に座り直した。

「……」

悪魔はバクバクと心臓が鳴り響いて、身体中がソワソワと落ち着がない感じがした。しばらく爪先で水面を掻き回していたが、湖をじっと見る天使の服の裾を尻尾で引っ張った。


「分からなかったから、もう1回。」

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