短編:古代文明
会議室から戻ると、机の上にメモが置かれていた。来週の会議までに古代文明について調べてこいとの課長からのお達しだ。
この忙しい時に仕事増やしやがって。まあ仕方ない、次の休みにでも図書館へ出かけて調べてみるか。
ひと括りに古代文明といわれてもなかなかに範囲が広い。まずはエジプト、メソポタミア、インダス、中国、俗に言う四大文明の中からピックアップすることにしよう。
古代の文明なんて今まで特に興味はなかったが、調べてみるとわりと面白い。知らなかったことがたくさんあって好奇心を掻き立てられるから、どんどんハマって結構詳しくなったように思う。
しかし長々と時間をかけるわけにはいかない。次の会議までに簡潔にまとめておかないと。
捜査会議の日が来た。まずは地取り班から現在捜査中の殺人事件について、聞き込みによる報告が始まる。
俺は調べてきた古代文明について作成した書類に目を通し、内容を再確認していた。しかし課長はなぜ俺にこんなことを調べさせたのだろうか。
確かに殺されたマルガイは考古学の権威として名のある大学教授で、発掘調査や学会などで一年のうち数ヶ月しか日本に滞在しないような人物だったらしいのだが……
地取りの報告からは有益な情報が上がらず、指揮を執る課長と管理官も苦い顔だった。次は俺たち監取りの報告だ。
同期の刑事が以前より重要参考人として浮上している人物の顔写真をホワイトボードに貼って、名前や経歴など共有の再確認を行った。
今のところ決定的な容疑は固まっていないが、関係者の中ではかなりクロに近いと踏んでいる人物だ。
ふと、気になるものを見つけてしまった。参考人の顔写真の下に書かれた文字だ。
「ん? 古代文明?」
調べてきた書類に目を落とす。参考人も考古学とか遺跡とかに何か関係してるのか?
「おい、荒谷!」
会議室に俺の名を呼ぶ課長の声が響く。
「はい!」
返事と共に立ち上がった俺に、課長は重要参考人の名前を口にした。
「参考人の古代文明について分かったことを報告しろ!」
