笑ってはいけない卒業式来賓あいさつ――伝説の「雨のシ」市議
こんにちは。
私の小学校では、卒業式で毎年必ず笑いが起きました。
泣くはずの卒業式で、です。
原因は、来賓の伝説の市議会議員・藤森すすむさんでした。
私が生まれ育った長野県松本市里山辺。
通っていたのは「山辺小学校」(やまべ)です。
ド田舎山辺小学校
入里(いりさと)山辺 はろばろと
緑にしげる 森林(もりはやし)
里はゆたかに かがやけり
仲よくわれら 心はひとつ
明るき学校 たのし
山辺小学校
校歌の1番です。さらに昔は「入山辺小学校」と「里山辺小学校」があり、統合されて山辺小学校になりました。
入山辺:美ヶ原高原のほう 超超超超超ド田舎
里山辺:美ヶ原温泉のほう 超超ド田舎
「仲よくわれら 心はひとつ」とわざわざ校歌にあるということは、統合された昭和40年代後半は仲が悪かったということですね。
ちなみに、私が小学生時代は、入山辺のさらに山奥、「美ヶ原高原美術館」(アモーレの鐘で有名なあれ)の近くに住んでいて、スクールバスでも通学できない児童用に「美ヶ原分校」という長野県で最後まで残った分校がありました。
ちなみに最近、その分校に忍び込んだYouTuberまで現れました。
『のんのんびより』でれんちょんたちが通っている、ああいうやつで、児童4~5人、先生1人みたいなところです。
入山辺の子どもの家の中には固定電話がない家庭もあり、「内線」という代表電話にかけて回してもらう謎のシステムを導入していました。
それは置いといて、当時山辺地区から選出されていた市議がいました。田舎なので「各地区持ち回りで市議」みたいな枠があったようです。
この市議、公職にあったので本名いいでしょう。
「藤森すすむ」さんという人でした。当時でも60歳~70歳くらいだったので、今はもう鬼籍に入っているでしょうね。
地元選出なので、入学式や卒業式に来賓として招かれて挨拶するのですが、その挨拶がもう山辺小学校の児童の楽しみでした。
なぜか登壇前から笑われてしまう藤森さん
藤森さんが登壇する前から、子どもたちの中で笑いが起きます。
実は、藤森さんは「昔の人」だったので、「はひふへほ」がうまく言えず「さしすせそ」になってしまうんです。
超ド田舎方言がさらに煮詰まっていたのです。
先生方も「あんなおっさんだけど市議だから。来賓、お客様なので笑いたいかもしれないがこらえてくれ(ははは!)」
特に笑いが起きるのが入学式ではなく卒業式でした。
登壇し始めると、あちこちからざわざわ言い始めます。
みんな期待して待っているんです。あれを。
藤森さんの挨拶は、時事的な内容を入れることもなく、毎年同じ内容でした。
だからどこで爆笑が起きるか、子どもたちもわかっています。
「体ほどの大きさだったランドセルが今では随分小さくなって・・・」
これが登場するといよいよです。
雨のシ風のシ雪のシ照るシ
「雨の日も風の日も雪の日も太陽が照り付ける夏の暑い日もよく頑張って登校しましたね~」
という内容を、はひふへほがうまく発音できないので(別に発音障害とかではなく山辺の田舎方言だから!)、
流れるように――――
雨のシ
風のシ
雪のシ
照るシ
と藤森さんは言ってしまうのです。
そう「雨のシおじさん」としてあまりに有名で、もうこのフレーズの瞬間3分の1くらい笑いを抑えられないのです。
嘲笑ではなく、失笑でもなく、「芸人が鉄板のネタを披露した」という雰囲気です。
みんなの期待に確実に答えて「雨のシ」ネタを披露する藤森市議、カッコよすぎる。
40年前の超超超超ド田舎の小学生でも、さすがに「雨のシ」には皆驚き、センチメンタルな卒業式も、藤森さんのこれで涙も笑顔に変わるのです。
しかし、藤森さんに「あなたは笑いもの芸人にされている」と諫言する人はいなかったのでしょうか?
あれでも市議だから偉かったということで「裸の王様」状態だったのでしょうか?
言うまでもなく、藤森さんは「愛されキャラ」です!
そして、田舎の権威を子どもたちが遠慮なく笑えたあの空気こそ、案外いちばん健全な民主主義だったのではないでしょうか。
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