19. 安牌の小峠さん【すっとんきょうな出来事 〜精神科に入院した私の記録〜】
※この記録は実体験をもとに書いています。登場人物はすべて仮名とし、個人が特定されないよう、一部の設定や時系列などの細部を変更しています。
おはようございます。
スットンキョウと申します。
書いている私もワクワクの、
麻雀回・第二弾です。
麻雀のメンバーは、だいたい8人ほど。
牌は一セットしかないので、そのときラウンジにいる人たちで交代しながら打っていました。
初心者の方も多く、私やツモツモちゃんは打たずに先生役になることも。
まずは印象的だった患者さんたちをご紹介します。
安牌の小峠さん
絶対に振り込まない。
絶対に上がらない。
それが安牌の小峠さんです。
不要な字牌を大事に抱え込み、
誰かがリーチすると字牌から順番に切っていく。
徹底したベタ降り。
「そんなことしていたら、絶対に上がれませんよ?」
と聞くと、
小峠さんは静かに微笑むだけ。
とても穏やかで優しい方でした。
鳴きの千賀さん
80代くらいのおばあちゃま。
明るくておしゃべりで、いるだけで場が華やかになります。
ただ、麻雀になると騒がしい。(ごめんなさい)
理由は簡単。
「チー!」
「ポン!」
とにかく何でも鳴きたがるのです。
でも役がついていない。
「あっ これチーかしら。」
「どうしよう、ポンしようかな。」
毎回そんな感じなので、とうとう
チーポン禁止令
が出されました。
「すぐ鳴くから”鳴きの千賀さん”ですね。」
と言うと、
「いつも泣いてるみたいじゃない。いやだわ〜。」
と嘆いていました。
ダマテンの鵠沼さん
80代か90代くらいの上品なおばあちゃま。
この方はダマテン派。
静かにテンパり、静かに上がる策士です。
とはいえ、
テンパるとツモる手に
グッ!
と力が入るので、
「あ、テンパった。」
とすぐ分かります。
そのあたりが、とても可愛らしい方でした。
OTの時間にはタブレットでWeb麻雀をずっとやっていて、
「大三元でたよ」
と画面を見せてくれたのも印象に残っています。
⸻
そんな愉快なメンバーで、平和に麻雀を楽しんでいたある日。
新しい患者さんが、
「私もやってみたい。教えてほしい。」
と声をかけてきました。
それまであまり交流のなかった方だったので、
一瞬戸惑う空気が流れました。
とはいえ、麻雀牌はみんなのもの。
断る理由もないので、
まずは見せ見せ麻雀で教えることになりました。
その日の麻雀は、何事もなく終わった
と思っていたのですが。
なんと。
その方が麻雀中に鼻をほじっていたそうです。
私は牌ばかり見ていて全く気づかなかったのですが、
みんなの表情が暗かった理由が、そこでようやく分かりました。
しかも。
ほじった直後に東を触ったらしい。
その日から
「東は気をつけて。」
という謎の情報まで飛び交うようになりました。
さあ困った。
今日の様子を見る限り、明日も麻雀をやりたいと言ってくるでしょう。
解決策もないまま、とりあえず翌朝、
私は牌を全部アルコールで拭きました。
それからの麻雀は、少しギクシャク。
その方が来ると、
みんながスーッといなくなるのです。
私は、ことを荒立てたくない天秤座。
みんなで楽しく麻雀をしたい。
でも、ハナクソ問題もある。
どうしよう。
そう思いながらも、私はその方に麻雀を教えていました。
すると、メンバーの一人が
「もう麻雀の輪に入らないよう言う。」
と言い出しました。
気持ちは分かります。
でも、きつく言えば必要以上に傷つけてしまうかもしれない。
「ここは私に任せてください。」
私はそう言って、忠告役を引き受けました。
とはいえ。
どう言えばいいんだろう。
結局、直接伝えるしかありません。
私はその方をこっそり呼びました。
「こんなことを言って気分を悪くしたら申し訳ない。
麻雀中に鼻をほじっていたのを見た人がいて、嫌な気持ちになっている人がいます。
私は直接見ていないのでそこまで気にしていないんですが、、、あの、その、、、
とにかく、麻雀中は鼻をほじらないでください。」
うん。
どストレートです。
この伝え方が正解だったのかは、今でも分かりません。
そして返ってきた反応は。
まさかのノーリアクション。
ただ、じーっとこちらを見ているだけ。
何を思ったのか、何を感じたのか。
最後まで分かりませんでした。
気まずい空気のまま迎えた次の麻雀。
その時は人数が集まらなかったので、
「じゃあ牌でも拭こうかな。」
と手入れを始めました。
すると、その方も隣に来て、一緒に牌を磨き始めたのです。
私の話が伝わったのかどうかは分かりません。
でも、その後、私が見る限りでは麻雀中に鼻をほじる姿は見なくなりました。
というか。
その後も別の理由で気になる行動があったようで、
ついに我慢の限界を迎えたメンバーが、
「申し訳ないけど、麻雀には入らないでほしい。」
と直接伝えていました。
こればかりは、いろいろな人が集まる場所だからこそ起きる難しい出来事だったのだと思います。
そんな経験も含めて、
病棟の麻雀は私にとって大切な思い出になりました。
すっかり麻雀が趣味になった私は、退院した今、メンツがいなくて麻雀ができません。
ときどき病棟の麻雀卓が恋しくなるのでした。

AIってあんまり麻雀知らないのかな
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わぉ、こんなスットンキョウな私にチップを贈りたいと思ってくれたんですね。その気持ちだけで十分です。すみませんカッコつけました、チップぜひお願いします(土下座)