見出し画像

「全部直しました」は報告で使ってはいけない - 報告に必要な2点に分解して伝える

「全部直しました」と報告されたことがあります。確認した自分の感想は、安心ではなく不安でした。あの瞬間に毎回感じる「報告の粒度」の話を書きます。

「全部直しました」と言われたとき、受け手は何を感じる?

DrawIOで作った20枚のAsIs/ToBe図に、同じパターンの誤りが見つかりました。修正を担当者に依頼し、しばらくして返ってきた言葉が「全部直しました」でした。

私はうなずきましたが、自分の中で次の言葉が出ませんでした。少し間を置いて、こう聞き返しました。

「……どこを、どう変えたんでしたっけ?」

「全部」という言葉は、網羅性を伝えているつもりでも、受け手には何が変わったかわからないという不安として届きます。承認する側は、確認できない範囲を「全部」と言われると、手がかりを失います。

「全部直しました」は報告ではなく、作業完了の宣言です。

「全部」と言われたとき、受け手が必要としているもの

報告した側がしていたのは、「修正が終わった」という自分の状態を伝えることでした。

受け手の自分が知りたかったのは「自分が承認できる状態か」でした。

この2つはまったく違います。「修正が終わった」は作業者の視点です。「承認できる状態か」は受け手の視点です。報告は後者のために存在するのに、伝わってきたのは前者だけでした。

受け手が安心して承認するには、次の2つが必要です。

  • 何が変わったか(変更の内容)

  • なぜ変えたか(変更の根拠)

この2点があれば、受け手は「自分が確認すべき観点」を持てます。「全部」という言葉は、この2点を省略した報告です。


「横展開してあります」という表現が変えること

このやりとりの後、自分が報告する立場になったとき、言い方を変えました。報告する前に「伝えるのはこの2点だけにする」と意図的に絞り込んでから口を開くようにしました。

「対向先の処理が『新規追加』ではなく『既存処理』になっていた箇所を直しました。変数に既存テーブル名が入っていなかった箇所も修正しています。この2つを、同じパターンがある図に横展開してあります。」

相手の反応が変わりました。「ああ、その2つね。ありがとう」とすぐ返ってきました。

「横展開してあります」という表現は「全部」と同じことを言っているように見えて、まったく別の情報を持っています。

  • 「全部」: 範囲だけを伝える(何が変わったかは不明)

  • 「横展開してあります」: 基準を先に示し、その適用範囲を伝える(何をどこまで変えたかが明確)

受け手は「横展開」という言葉を聞いた瞬間、基準となる変更内容をすでに聞いていることに気づきます。その安心感が「承認できる」につながります。

報告を変えるための問い

大量修正の報告をする場面で、こう自問してみてください。

  • 今から言う「全部」は、何を変えた「全部」か

  • 受け手は、この報告を聞いて何を確認すればよいかわかるか

  • 「横展開してあります」と言えるほど、変更の基準を言語化できているか

報告の準備は、修正が終わってからするものではありません。「何を、なぜ変えるか」を言語化できた段階で、報告の準備は8割終わっています。修正作業はそのあとです。

この順序を入れ替えるだけで、報告の質は変わります。

「全部」を言いたくなったとき

ドキュメントを一括修正した達成感のなかで、「全部」という言葉は自然に出てきます。

あの達成感は本物です。ただ、それは自分の中にあるものです。受け手に届けるべきは達成感ではなく、「承認のための情報」です。

「横展開してあります」という言葉は、その切り替えを促してくれます。

あなたの現場で「全部」と言いたくなる場面は、どんなときですか。


いいなと思ったら応援しよう!

suwa-sh / 諏訪真一 いつも応援していただいている皆さん支えられています。