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看護師を辞めた日、『終わり』ではなく『始まり』だった ー成長した私でまた会いたい。そう思える人たちに出会えた5年間ー


「ここに来るのはもう最後なんだ」
並んだ病室も、センターに続く二重扉も、明日からはもう当たり前の景色ではなくなる。

看護師としての最後の勤務が終わった。
社会人として成長させてくれた5年間。
今の気持ちのままを書き残しておきたい。



実感がわかない最終出勤日

勤務の都合でその日が最後になる人に挨拶をしていたラスト1週間。

誰かと話すたびに、「これが会うの最後なんだ...」と思うと涙が出てくる。


最後の勤務は夜勤。

出勤してすぐ、最後になる先輩に挨拶をしただけで涙が滲んだ。そんな始まりだった。

朝になり、「これから最後の時間が始まる」と思うと、なにか作業をしていないと泣きそう。そして最後の全体への挨拶が迫る朝食時、患者さんの食事介助をしながら涙の堰が切れそうになる。


全体への挨拶。

もちろん泣いて全然話せない。

そして1年目からお世話になっている先輩、去年指導者として関わった後輩も涙し始める。

そんな状況に、私の5年間を見てくれていた人がたくさんいたことを、泣きながら実感した。


最後に先生・先輩方ひとりひとりに挨拶をしながらまわって、本当の本当に最後、病棟を後にするときが来た。

でも感じていたのは、明日もまた当たり前に病棟に行くような感覚。

並んでいる病室、センターに出入りするための二重扉、センターの看板。

「この景色も見納めだよ?」と自分に言い聞かせるも、いまいち実感が湧いていなかった。



「辞めること」を知った人たちの反応

実は私のいる病棟はあまり辞める人がいない。5年間で辞めていったのは3人だけ。

業務以外の話は普段あまりしない。看護師以外の医師や他のスタッフは、私が辞めることは最終出勤日まで誰も知らなかった。

そのことを伝えると、「病棟移動じゃなくて!?」全員が驚いていた。


「もったいない」の意味は人によって違う

母から言われていたのは、「看護師資格があるのに看護師として働かないの?もったいなくない?」お金をかけて大学に進学させてもらい、ある程度収入があるのだから、そう思うのも無理はない。

でも一緒に働く人は、みんな資格を持って働いている。同じ「もったいない」でも、私を一人の看護師として認めているからこそ「もったいない」と言ってくれている。

看護師向いていないと思っている私にとって、その言葉は、これまで積み重ねてきた5年間を肯定してもらえたようで、胸がいっぱいになった。


それでも背中を押してくれた人たち

「違う世界に挑戦できることがすごい」
「若いうちしかできないことをやってきな」
「絶対成長できるよ」
「やりたいことがあるならやったほうがいい」

どれも先輩方がかけてくれた言葉。これまでやめようと思ったこともありながら看護師一筋で何十年もやってきて、そして先輩方の多くは、私と同世代の子供を持つ母でもある。だからこそ、その言葉に重みを感じた。


他にも先輩たち一人一人と話をしていて、価値観が少し変わった言葉がある。

①人にはどうしても合う合わないがある。
 無理に付き合おうとしなくていい。

私が5年も続けられた理由は人に恵まれたから。もし看護師に戻るという選択をした時に、今の場所以上に人に恵まれるとは思えない。

その思いをこぼしたとき、口々に言われた言葉。今の職場しか知らない私には、新しい看護師の職場でまた人間関係を築けるのか、自分には分からない。


②未来のことはその時考えればいい

「自由に動き回るのは30歳まで。30歳には正社員で社会のレールに戻るべき」という勝手な思い込みが私の中にある。

「これからの経験で、またほかにやりたいことが見つかるかもしれない。今はまだ決めなくていいんだよ。先のことは、その時また考えたらいい」

”30歳まで”と勝手に縛りを作っているけれど、そうやって自分を縛っているのは、案外私だけなのかもしれない。

人生の先輩たちが言うならと、ちょっとだけそう思えた。


今の病棟や看護師の環境にいるだけでは、きっと出会えない人や価値観がある。

これからの数年で色んな環境に飛び込んでみて、そんな成長も手に入れたい。そう思わせてくれる言葉たちだった。



看護師は私のすべてではない

新卒の時、「看護師向いていない」「お豆腐メンタルでは3ヶ月で看護師続けられなくなる」そう思っていた。

そんな私が5年も看護師を続けられたのは、人に恵まれ、環境に恵まれたことが大きかったと思う。

前向きな理由で看護師を辞められるとは思っていなかったから、本当に感謝しかない。


看護師という職業は、今や私を構成している要素のひとつ。

ひとつ居場所がなくなって、少し時間が経った時に、ぽっかり穴が開いたような気持ちになるかもしれない。アイデンティティを失ったような喪失感を覚えるかもしれない。

でも5年間続けたからこそ、見えている世界がある。

だからこそ今の私にはやりたいことがある。



成長した私でまた会いたい。
そんな人たちにたくさん出会えた場所

不安がないわけではない。
でもこれからやりたいことを、みんなに宣言してきた。

「頑張って」「今しかできない経験があるよ」
たくさんの人がそう言って、送り出してくれた。
あとは前に進むしかない。

看護師を辞めた日は、
終わりではなく新しいスタートの日だった。







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