人間は、損をするのが大嫌いすぎる 認知バイアス「損失嫌悪」
「認知バイアス大全」マガジン
人間に不合理な行動を起こさせる認知バイアスとは、進化の過程で獲得した生き抜くための工夫……のバグ部分。これを理解すれば、多くの不合理な行動を避けられ、それどころか利用すらできるようになります。そんな認知バイアスを紹介しているのが、この「認知バイアス大全」マガジンです。
得をするより、リスクを避けるのが生き物の特性
リチャード・セイラー博士は、ある大企業の25ある部門の各部長らにこう尋ねました。
「裁量権のあるお金を全て失う可能性と倍になる可能性があるという選択肢があったらそれを選ぶか、選ばないか」
部長らは皆「そんなリスクはおかさない」と答えました。セイラー氏は、同じ質問をその企業のCEOにしてみました。すると「全部のリスクだったら喜んで引き受ける」と答えました。(※2)
CEOは、可能性を合計して合理的に判断しており、各部門の部長たちは、目先の損失をさけて、獲得のチャンスより損失のリスクを大きく評価しています。(立場の違いによるでしょうが。)このように人は、損失をとにかく避ける傾向があります。なぜなら損をすることが大嫌いだからです。この傾向を「損失嫌悪」と呼びます。
損失嫌悪
損失嫌悪(Loss aversion)とは
同等の利益を得るよりも損失を回避することを好む傾向
です。損失するかもしれない行為や選択を回避する傾向で、ダニエル・カーネマン氏の『ファスト&スロー』では、損失回避と翻訳されていますが、ここでは元の表現に近い「損失嫌悪」と訳します。
損失は利益の2倍、心理的に強力である
「損失は利益の2倍、心理的に強力である」これは、ダニエル・カーネマンのプロスペクト理論を表現した言葉です。プロスペクト理論(Prospect theory)とは、不確実な状況における意思決定モデルであり、
(1)得することより損をしないことを選ぶ傾向
(2)損も得も量が増えるとインパクトが弱まっていく傾向
です。これを表にすると以下のようになります。

By Laurenrosenberger – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=67117183
5セント獲得の喜びは、5セント喪失の失望の2倍以上です。
対策

計算する
期待値の計算をすると損失嫌悪の不合理な影響力が緩和します。期待値とは、
期待値=可能性×数値
で算出できます。ちなみにギャンブルは、期待値が1以下で、宝くじにおいては45%。先の問題は、全額失う可能性50%と倍になる可能性50%なので期待値は100%。
オススメの本
リチャード・セイラー氏の質問が載っているのは、ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』の下巻です。
リチャード・セイラー自身の著書もおもしろいです。
関連した認知バイアス
プロスペクト理論(Prospect theory)
不確実な状況における意思決定モデルであり、(1)得することより損をしないことを選ぶ傾向、(2)損も得も量が増えるとインパクトが弱まっていく傾向
保有効果(Endowment effect)
一度何かを所有すると、それを手に入れる以前に支払ってもいいと思っていた以上の犠牲を払ってでも、それを手放したがらない傾向。
参照
※2:ダニエル・カーネマン著『ファスト&スロー 』(下)
