日本酒の「香り」を科学する。ポータブルセンサーで挑む醸造の可視化
みなさん、こんにちは。津南醸造の鈴木です。
1月も中盤に入り、ここ津南町の雪景色もいよいよ深まってきました。
雪中蔵と呼ばれる私たちの酒蔵は、この時期、静寂と低温に包まれ、微生物たちが最も活発に(そして穏やかに)お酒を醸してくれる最高の環境になります。

さて、今日はそんな伝統的な酒造りの現場で取り組んだ、少し「サイエンス」な話を紹介させてもらいたいと思います。
私たちは「日本酒の香りを可視化する」という実験を行いました。
見えない「香り」をデータにする
日本酒の魅力において「香り(吟醸香など)」は非常に重要な要素です。
しかし、これまでは杜氏の熟練した「鼻」や「感性」という、いわばブラックボックス化された職人技に頼る部分が大きく、それを客観的なデータとして捉えることは容易ではありませんでした。
「おいしい」を科学で証明できないか? 「職人の勘」をテクノロジーでサポートできないか?
そんな仮説から、今回はボールウェーブ株式会社さんに協力をしてもらいました。
手のひらサイズのガスクロマトグラフ「Sylph」
今回使用したのは、ボールウェーブさんが開発した「Sylph(シルフ)」というセンサーです。
これがすごいんです。
「表面弾性波(SAW)」という技術を使っているのですが、簡単に言うと「手のひらサイズのガスクロマトグラフ。
理系の実験をする人ならご存じの機械で、香りの成分分析というと、研究室にあるような巨大な分析機器が必要なのですが、このSylphは現場に持ち運んで、その場で揮発してくる微量なガスをピピッと計測できます。
まさに、私が常々言っている「研究室の技術を社会実装する」一つの形だと感じ、非常にワクワクしました。
実際に測ってみた
今回の実験では、私たちの代表銘柄である「郷(GO)」シリーズの製品群(GRANDCLASS、LUNAR、VINO、DOLCE)や、発酵真っ最中の「もろみ」の香りを計測しました。
計測した香気成分は以下の5つ。
酢酸エチル
エタノール
酢酸イソアミル(バナナのような香り)
イソプロピルアルコール
カプロン酸エチル(リンゴのような香り)
結果は……見事に「可視化」されました!

発酵が進むにつれて香りの成分がどう変化していくのか、あるいは「GO GRANDCLASS」と「GO DOLCE」で香りの構成がどう違うのか。
これまで「感覚」で語られていた違いが、明確なグラフや数値として目の前に現れたのです。

AI×センサーで描く「スマート醸造」の未来
このデータが取れると何ができるようになるのか。 単に「分析できてすごいでしょ」で終わらせるつもりはありません。
私たちが進めてい「スマート醸造」において、この香りのデータは非常に重要なピースになります。
取得したデータをAIに学習させることで、 「こういう香りを出したいなら、このタイミングで温度をこう操作すればいい」 といった、逆算的な香味設計が可能になるかもしれません。
「伝統的な職人の技」×「最先端のセンサーとAI」
この掛け合わせによって、日本酒はもっと面白くなるし、もっと美味しくなると確信しています。 これからも津南醸造は、雪深いこの地から、世界に向けて新しい「Sake」の可能性を発信していきます。
ボールウェーブの赤尾社長、岩谷研究員、素晴らしい技術との共創をありがとうございました!

