見出し画像

書記が哲学やるだけ#44 選好功利主義,二層功利主義

問題


解説

リチャード・マーヴィン・ヘア(Richard Mervyn Hare, 1919年3月21日 - 2002年1月29日)は,イギリスの哲学者であり,利害関係者の選好を最大限に充足する行為を正しいとする選好功利主義を提唱した。

(1)「快楽主義的功利主義」「選好功利主義」の違いについて,以下の事例をもとに説明せよ:「ある末期患者が重い病を患っており,日々の生活が苦痛に満ちている。彼には,延命治療を受け続けるか,苦痛を和らげるための緩和ケアを選ぶかの選択肢がある。このとき,どのような判断基準に従うべきか?」

快楽主義的功利主義では,患者にとってどちらの選択肢が「苦痛を最小化し,快楽を最大化するか」を考える。延命治療が苦痛を伴い,患者に快楽よりも苦痛が多く生じると判断されれば,これは「善」とはみなされない。一方,緩和ケアにより痛みが和らぐならば,たとえ寿命が短くなったとしても苦痛が減少し快楽が増えるため,こちらが望ましいと判断される。

選好功利主義では,幸福は単に快楽の多寡ではなく,個人の選好(望みや意志)がどれだけ満たされるかが重要とされる。たとえば,この患者が「自分らしい最期を迎えたい」「延命治療を受けずに穏やかな日々を送りたい」と望んでいる場合,その選好を満たすことが善とされ,緩和ケアの選択が支持されることになる。逆に,患者が「少しでも長く生きたい」という選好を持っているならば,苦痛を伴うとしても延命治療が支持される。

(2)「二層功利主義」について,以下の用語を用いて説明せよ:「直観的レベル」「批判的レベル」

直観的レベル」では,日常的な道徳判断において特定の倫理規則や道徳ルールに従って行動する。直観的レベルに従うことは,個々の行為の結果を逐一計算する必要がないため,迅速に行動できるメリットがある。しかし,このような原則は相互に矛盾をきたす可能性がある。

そこで「批判的レベル」にシフトし,特定の状況下で個々の行為がどのような結果をもたらすかを詳細に分析し,幸福の最大化という功利主義の目的に基づいて判断を下す。ここで,直観的レベルは規則功利主義的立場,批判的レベルは行為功利主義的立場とみなすことができ,二層功利主義は相互の調停を図ったものと位置付けられる。


本記事のもくじはこちら:


いいなと思ったら応援しよう!

鈴華書記(Writer Rinka) 学習に必要な本を買います。一覧→ https://www.amazon.co.jp/hz/wishlist/ls/1XI8RCAQIKR94?ref_=wl_share