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書記が哲学やるだけ#55 錯誤理論,投影説,準実在論

問題



解説

(1) マッキーの錯誤理論について,相対性に基づく議論と特異性に基づく議論から立証せよ

ジョン・マッキー(John Leslie Mackie, 1917年8月25日 - 1981年12月12日)は,オーストラリアの哲学者であり,メタ倫理学の研究領域において道徳的価値に関する錯誤理論(error theory)を主張したことで知られている。

錯誤理論は,倫理的な言明が真偽を持ちうるとしつつ,それらが真であるために必要な性質(善,悪,徳など)が実際には存在しないため,すべての倫理的言明は偽であると主張する立場である。


相対性に基づく議論(Argument from Relativity)
この議論は,道徳的信念が文化や社会的背景によって異なることを指摘する。客観的な道徳的事実が存在するなら,道徳的信念は普遍的であるべきだが,実際には多様性が見られる。これにより,道徳的事実の存在を仮定する必要性が弱まる。
例:ある文化では「嘘をついてはいけない」とされる一方,別の文化では状況次第で嘘が容認される。


特異性に基づく議論(Argument from Queerness)

道徳的性質が存在すると仮定した場合,それは通常の自然的事実とは根本的に異なる特異な存在である必要がある。この性質は超自然的であり,直感的に把握できると仮定するのは非現実的である。
例:「善」や「悪」といった道徳的性質が客観的に存在するとしたら,それを知覚するためには特異な感覚や能力が必要であるが,これを裏付ける確かな証拠は存在しない。


これらの議論を通じて,マッキーは道徳的事実が存在しないことを立証し,すべての道徳的判断は偽であると結論づけた。錯誤理論は,我々が客観的な道徳的事実が存在するという錯誤の下で行動していることを指摘する。


(2) もし道徳的な性質が存在しないと仮定した場合に,採用されうる主義思想について説明せよ

道徳全廃主義(Moral Abolitionism)
道徳全廃主義は,道徳的性質が存在しないだけでなく,道徳そのものが不要であり,人間の行動や意思決定を非道徳的な基準に基づいて行うべきだとする立場である。
例:「嘘をつくのは悪い」という発言を避け,「嘘をつくことは信頼を損なう行為だ」という実際的な観点に置き換える。


道徳的虚構主義(Moral Fictionalism)
道徳的性質が存在しないと認めつつ,道徳をフィクションとして扱い,その実践的価値を維持しようとする立場である。
例:「嘘をつくのは悪い」という発言を道徳的なフィクションとして受け入れ,社会的調和を保つためのツールとして使用する。


保存主義(Moral Conventionalism)
道徳的性質が存在しない場合でも,道徳的規範が社会的な合意や慣習に基づいて構築されると考える立場である。
例:「嘘をつくのは悪い」という規範は,社会的な信頼を保つために作られた社会的な合意の一部とみなされる。


(3) ブラックバーンの投影説・準実在論について説明せよ

サイモン・ブラックバーン(Simon Blackburn, 1944年7月12日 - )は,イギリスの哲学者であり,メタ倫理学において投影説準実在論を提唱したことで知られる。


投影説(Projection Theory)
道徳的価値は,我々の感情的な反応や態度から生じ,それを外部の世界に「投影」したものであるとする。
例:「嘘をつくことは悪い」と言うとき,それは嘘という行為が客観的に「悪い」性質を持つのではなく,私たちの否定的な感情が投影されたものである。
ブラックバーンは,マッキーが投影された道徳的価値を「錯誤」と見なしたのに対し,それを倫理的実践の重要な一部として受け入れるべきだと主張した。


準実在論(Quasi-Realism)
準実在論は,道徳的価値が客観的に存在しないにもかかわらず,我々がそれを客観的なものとして語る態度を正当化する立場である。
例:「嘘をつくことは悪い」という発言を聞いた際,それを主観的な感情の表現としてではなく,客観的な真理として受け取る。このような態度は非認知主義の立場からも正当化できるとする。
ブラックバーンはこれらの理論を通じて,道徳的言語の使用が道徳的事実の不在と矛盾しないことを説明した。


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