書記が哲学やるだけ#42 行為功利主義
今回から数回,倫理学に特化した内容を扱う。問題形式は基本的に論述式,毎回1つはケーススタディを設ける予定。
問題

解説
規範倫理学(normative ethics)とは,哲学的倫理学の一領域であり,道徳的な観点から見て人はいかに行為すべきかにまつわる諸問題を探求する。規範倫理学の分野には,功利主義・義務論・徳倫理学・ケアの倫理学などがある。
功利主義(utilitarianism)とは,影響を受けるすべての個人の幸福を最大化する行為を指令する規範倫理学の理論の一派である。
(1)功利主義は目的論的かつ帰結主義であることを説明せよ。
目的論(teleology)は,物事が何らかの目的を持ち,その目的を達成するために存在や現象が規定されているとする哲学的立場である。一方,帰結主義(consequentialism)は,行為の道徳性や正当性を,その行為の結果(帰結)に基づいて判断する倫理学の立場を指す。
功利主義は,「幸福の最大化」を目的とし,行動の正当性を行為の結果に基づいて評価することから,目的論的でありかつ帰結主義的な立場といえる。
(2)ベンサムの立場について,最大化する善の観点から説明せよ。
ジェレミ・ベンサム(Jeremy Bentham, 1748年2月15日 - 1832年6月6日)は,イギリスの哲学者・経済学者・法学者であり,功利主義の創始者として知られている。
ベンサムの「量的功利主義」では,行為を評価する際に,その行為がもたらす快楽と苦痛の総和(功利計算)に基づいて判断する。ベンサムは,人々の幸福や快楽を最大化し,苦痛を最小化することが善の理想であると考えた。
(3)行為功利主義のうち,ベンサム以外の立場について1つ説明せよ。
ジョン・スチュアート・ミル(John Stuart Mill, 1806年5月20日 - 1873年5月8日)は,功利主義を代表するイギリスの哲学者である。彼は著書『功利主義論』の中で,ベンサムの考えを批判し,快楽の質に注目した「質的功利主義」を提唱した。
ミルによれば,快楽には質的な違いがあり,すべての快楽を均一に扱うべきではないとされる。彼は,人間の発展や精神的充足をもたらす高尚な快楽(例えば,知識の追求や美的体験)が,単なる肉体的快楽よりも重要であると主張した。
(4)行為功利主義への批判について,トロッコ問題を例に説明せよ。
トロッコ問題(Trolley Problem)では,進行中のトロッコが線路上の5人の作業員に向かっており,別の線路に切り替えることで1人の作業員を犠牲にして5人を救う選択が提示される。
行為功利主義の観点からは,「1人を犠牲にして5人を救うこと」が最も幸福を最大化する選択とされ,したがってスイッチを切り替えるべきだと判断される。しかし,この選択には「1人の命を犠牲にするのは正当か」という倫理的な疑問が生じる。
行為功利主義は,最大の幸福を追求するために少数の犠牲を正当化することがあるため,個人の権利や道徳的直観を無視する結果になりやすいと批判される。
なお,行為功利主義批判の代表である義務論に従うならば,誰かを他の目的のためだけに利用すべきではないため何もするべきではない,といった結果となる。
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