書記が哲学やるだけ#45 行為義務論
問題

解説
(1) 義務論と功利主義の違いについて,「正の理論」「善の理論」から説明せよ。
正の理論(Theory of Right)は,「どのような行為が正しいか」を基準に判断する理論であり,行為が道徳的に適切かどうかは,行為自体やそれに従うべきルールや義務に基づいて判断される。善の理論(Theory of Good)は,「何が善であるか」「どのような結果が望ましいか」に基づいて判断する理論であり,行為の道徳的価値はその行為がもたらす結果や幸福の量に依存する。
義務論は,「行為が正しいかどうか」をその結果ではなく,行為自体やその行為が従う義務に基づいて判断すべきだと主張し,一般に「正(Right)」が「善(Good)」に優先すると考える。一方で功利主義は,行為の道徳的価値をその行為がもたらす結果(善)に基づいて判断する理論であり,一般に「善(Good)」が「正(Right)」に優先すると考える。
(2) 道徳感覚学派に位置する人物を挙げ,業績や主張についてまとめよ。
道徳感覚学派(moral sense school)は,善悪の判断において「感覚」(sense,道徳感覚)や「感情」(sentiment,道徳感情)の役割を重視する18世紀イギリスの倫理学(道徳哲学)の学派である。
フランシス・ハッチソン(Francis Hutcheson,1694年8月8日 – 1746年8月8日)は,アイルランド出身のスコットランドの哲学者であり,スコットランド啓蒙思想の祖とされ,「道徳感覚理論」(Moral sense theory)を大成した。
アダム・スミス(Adam Smith,1723年6月5日 - 1790年7月17日)は,イギリスの哲学者・倫理学者・経済学者であり,経済学書『国富論』により経済学の基礎を確立しただけでなく,倫理学書『道徳感情論』において,社会秩序の基盤は「共感」であると唱えた。
(3) 行為義務論における「道徳感情」と「直観」の違いについて,例を挙げて説明せよ。
ヘンリー・シジウィック(Henry Sidgwick,1838年5月31日 - 1900年8月28日)は,イギリスの哲学者・倫理学者であり,『倫理学の諸方法』で直観主義と功利主義との調停を図った。
フランシス・ハーバート・ブラッドリー(Francis Herbert Bradley, 1846年1月30日 - 1924年9月18日)は,イギリスの理想主義哲学者であり,『現象と実在』において「全ての関係は内的である」とし,関係の実在を否定する一元論を提唱した。
道徳感情(Moral Sentiment)とは,他者の行動や状況に対して自然に生じる感情や反応である。例えば,誰かが苦しんでいるのを見て「かわいそうだ」と感じたり,誰かが不公平な扱いを受けているときに覚える「怒り」や「不正への反感」などが道徳感情に該当する。
一方,直観(Intuition)は,道徳的な行為や判断について,理論的な検討や感情的な影響を受けずに「これが正しい」と内的に確信することである。例えば,財布を拾ったときに「持ち主に返すのが当然だ」と感じるのは感情によるのではなく,「返すのが道徳的に正しい」という直観に基づくものである。
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