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書記が哲学やるだけ#43 規則功利主義

問題


解説

(1)ハロッドによる行為功利主義の修正について,以下の用語を用いて説明せよ:「粗雑な功利主義」「修正功利主義」「一般化のプロセス」

ロイ・ハロッド(Roy Forbes Harrod,1900年2月13日 - 1978年3月)は,イギリスの経済学者で,経済成長論のモデル「ハロッド・ドーマーモデル」を示したほか,功利主義の研究でも知られる。

ハロッドは,従来の功利主義を「粗雑な功利主義(Crude Utilitarianism)」と呼び,これに対し「修正功利主義(Refined Utilitarianism)」とを対置させた。粗雑な功利主義に従うと一般的な道徳的意識に反する結果を生むことについて,義務論者は功利原則を認めない理由としたが,ハロッドは功利原則の適用方法を修正することで議論を進めた。ハロッドの修正功利主義は,功利主義的な行為を「個別のケースごとに評価する」のではなく,「その行為が一般化された場合に社会全体にどう影響するか」を考慮する手法を取り入れることで,行為の普遍性や道徳的な規範に基づいた判断を可能にしようとした(一般化のプロセス(Process of Generalization))。


(2)ブラントによる規則功利主義の分類について,以下の用語を用いて説明せよ:「理想的規則」と「現実的規則」

リチャード・ブラント(Richard Brandt,1910年 - 1997年)は,米国の哲学者であり,規範倫理学において規則功利主義の立場をとった。

理想的規則(Ideal Rules)」とは,仮に社会全体がその規則に従うことを前提とした場合に最も大きな幸福をもたらすと考えられる規則である。一方で,「現実的規則(Realistic Rules)」とは,現実社会において承認され受け入れられている規則である。ブラントは,「理想的道徳規範」の理論に基づき,行為が正しいのはそれが社会において理想的道徳規範な道徳規範により禁じられていない時に限られると主張した。


(3)行為功利主義と規則功利主義の違いについて,双方の利点を示す例を説明せよ。

行為功利主義は,状況ごとに柔軟な判断を行うことができる。一方で規則功利主義は,全体の幸福を守るために一定の規則を一貫して守ることができる。


例1 信号無視をして急いで病院に行く

ある人が急病の家族を病院に連れて行く途中に信号で止まったが,赤信号を無視して進むか,信号を守って待つかの判断に迫られているとする。

行為功利主義では,その行為がもたらす結果に基づいて道徳的な良し悪しを判断する。家族を早く病院に連れて行くことがより良い結果をもたらすと判断できる場合,行為功利主義では赤信号を無視する行動が道徳的に正しいとされる。

規則功利主義では,幸福を最大化するために従うべき規則に基づいて行為の善悪を判断する。信号を守るという規則が人々の安全を守り全体として幸福を増やすために重要であるとすると,たとえ家族を早く病院に連れて行くために急いでいる場合でも信号を無視する行為は道徳的に正しくないと見なされる。しかし,このような規則に従うことは幸福の最大化を放棄している恐れがある。


例2 公共サービスへのフリーライド

ある人が税金を支払わずに公共サービスを利用している(フリーライド)とする。

行為功利主義では,その人が税金を支払わずに公共サービスを利用することが目の前の幸福を増やすと判断した場合,フリーライドを許容することがあり得る。しかしこのような行動を許容することで,長期的に他の人も同じ行為を選び,社会システムの維持が難しくなるリスクを有する。

規則功利主義では,個々の状況にかかわらず全員が税金を支払うことが社会システムの維持と全体の幸福を最大化するために不可欠だとされ,フリーライドは道徳的に許容されないとされる。



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