膝枕外伝 年下彼氏~憎たらしくて可愛くてカッコいいキミ~
まえがき
鈴蘭と申します。少し前に『母は膝枕~膝枕に育てられた少年~』という膝枕外伝を公開しました。
『母は膝枕~膝枕に育てられた少年~』は伊織少年目線のお話だったのですが、今回は膝枕の葉月さん目線の物語になります。
『膝枕』という短編小説は、脚本家今井雅子先生がClubhouseで無償提供されてる短編小説で、派生作品である膝枕外伝も245作品公開されています。
短編小説『膝枕』と派生作品まとめ
2021年5月31日から続いている朗読リレー(#膝枕リレー)は1日も途絶えることなく現在も続き2024年12月20日で1300日を迎えました。
今回の膝枕外伝は、膝枕リレー1300日のお祝いの気持ちを込め書かせていただきました。
今井雅子先生、膝枕リレー1300日おめでとうございます。
今井雅子先生の正調膝枕はこちら。
まえがきが長くなり失礼しました。
では、本編スタート。
鈴蘭作 年下彼氏~憎たらしくて可愛くてカッコいいキミ~
第一印象は最悪だった。
こちらを睨んだ君の瞳。青い炎が燃え上がってるような、クールだけど火傷しそうなくらいの熱がこちらにも伝わってくる。
これって、今入るべきタイミングじゃなかったってことよね?だって部屋の外なのに聞こえてたもの、この子の告白。
それなのに父親は躊躇せずドアを開けた。
これって…
聡:「伊織、ヒサコさんを困らせないでくれないか」
伊織:「困らせてない!!僕の気持ちを伝えただけだ!!」
やっぱり修羅場だよ~💦
私、どうしたらいいの~!?
聡:「まあ、ちょっと落ち着いて。お前に紹介したい人がいるんだよ」
待って、このタイミングで自己紹介しないといけないの!?
今すぐ逃げ出したかったけど、逃げるに逃げられず私はカートの上の分厚い座布団の上でジタバタするしかなかった。
伊織:「…その人は?」
聡:「お前の家庭教師。膝枕の葉月さんだ」
声もこっちに向ける眼差しも氷のように冷たい。美少年だけど、この子めっちゃ怖い~(T^T)。
お父様お願い、私とこの子を2人にしないで、この部屋に置き去りにしないで~!!
私の心の叫びは当然お父様に聞こえず、さっさと膝枕を抱き抱え、部屋から出ていってしまった…。
うう…行ってしまった。
もう、こうなったら腹を決めるしかない。
葉月:「こ、こ、こんにちは。伊織くんですね?家庭教師の葉月と申します。よろしくお願いします!!」
伊織くんは冷めた目で私を暫く見て…
伊織:「あ…よろしくお願いします」
クルッと背中を向けて椅子に腰かけた。
めげそう…でも、負けないわよ!!
葉月:「早速始めましょうか。伊織くんの学力を確認したいから、5教科分のテスト作ってきたの。時間かかってもいいからやってみて。それじゃあ、スタート!!」
1時間後。
葉月:「全教科全問正解…!?」
嘘…これだったら私いらないんじゃないの?
苦労して見つけた仕事だったのに…。
伊織:「…これで終わりですか?」
葉月:「君、家庭教師いらないんじゃない?」
伊織:「これで終わりなんですね、父を呼んできます」
葉月:「わ~!待って待って!私、伊織くんとお喋りしたいなあ」
契約は2時間なんだからなんとか引き伸ばさなきゃ!
お父様呼ばれたら終わりじゃない!!
部屋を出ていこうとする彼を必死に呼び止め
なんとかフリートークに持ち込めた。ホッ(*´-`)
葉月:「ふ~ん、彼女はヒサコさんって言うんだ。で伊織くんのママ」
綺麗な膝枕さんだった。ヒサコさんか~。
まさかママだとは思わなかったけど。
伊織:「話、聞いてました?代理母です、本当の母じゃない」
葉月:「ここまで育ててもらっておいて何言ってるの?」
今の一言で、彼のヒサコさんへの想いが痛いほど伝わってきた。
伊織くんにとって、ヒサコさんはママじゃないんだ…。
そしてお父様が慌てて部屋に入った理由も判った。息子が妻に(膝枕だけど)告白する所なんて夫しては黙って見てられないよね。
きっとお父様は、伊織くんの気持ちに気づいてたんだ。それでさっきの…。
近所の喫茶店。
聡:「初めまして。伊織の父です」
葉月:「膝枕派遣会社から来ました。葉月と申します。どうぞよろしくお願いします」
聡:「よろしくお願いします」
伊織くんの学力、彼の生い立ちから性格、今の状況を聞いた後、お父様は私に向き直り
聡:「伊織の側にはずっとヒサコがついててくれてます。私は仕事が忙しく、なかなか伊織と話す機会がない。その私の分もヒサコはフォローしてくれてます。小学4年生に学校を辞めてから14歳になった今日まで。
弥生が亡くなってからヒサコは家事をしながら伊織を育ててくれた」
コーヒーを一口飲んで、お父様はまた話し始めた。
聡:「小学5年生くらいから、伊織の様子が変わってきた。ヒサコとは楽しそうに甘えるような表情も見せながら話しているのに、私が部屋に入ると無表情になるんです。時には睨まれたり…以前は私にも笑顔を見せていたのに」
お父様は小さくため息を吐き、また話し始めた。
聡:「…ヒサコと伊織の距離は近すぎる。なんだか胸騒ぎがするんです。…私の勘違いかもしれない。でも伊織とヒサコの様子を見てるとやっぱり不安が拭いきれなくて…葉月さん、伊織は学校に行ってないので他の女性と触れ合う機会がないんです。だから今のあいつにはヒサコは…いや、なんでもありません。では、そろそろ行きましょうか」
あの時のお父様の言葉…彼もきっと伊織くんの気持ちに気づいていたんだ。
だから急いで帰ってきたら、案の定リビングから聞こえてきた伊織くんのあの言葉。
あの状況ならもっと取り乱してても不思議はなかったけど、父親として毅然としないととか思ったのかな。
とにかく、これで私が採用された理由が判ったわ。そして身代わりのように置き去りにされたことも。
伊織:「なんか、僕のことバカにしてませんか?」
葉月:「してません!!」
お父様がヒサコさんを連れていってから完全に無表情になったわね、この子。
綺麗な少年だからマネキンみたい…。
第一印象が最悪だからって仕事を放り出すことも出来ず、私は次の日から彼の家に通い始めた。
伊織くんは、時々様子を見に来るヒサコさんには極上の笑顔を見せるけど、彼女が出ていくとスッと無表情になり勉強を続ける。こちらの声かけには眉1つ動かさない。
そんな彼の態度には傷ついたけど…。
一々傷ついてたら身が持たない。
彼は成績も優秀で、家庭教師なんていらないんじゃないかってくらい課題も完璧にこなしてた。
そんな毎日が続き、一週間が過ぎた頃。
私は彼との雑談の時間を増やしてみようと思い立った。
伊織くんのお父様が私をここに連れてきたのは勉強を教えるためじゃないような気がしてきたからだ。ヒサコさんしか見えてない伊織くんに、それは恋ではなく憧れだと。それを彼に教えるために私は採用されたのかもしれない。
直接お父様に確認した訳ではないから、ひょっとしたら違うかもしれない。でもヒサコさんへの叶わぬ想いを抱えている伊織くんと話していくことは悪いことではないような気がする。
そして数ヵ月ー。
葉月:「あ~、疲れちゃったね。そろそろ休憩しようか?」
伊織:「…その前にさっきした僕の質問に答えてくれませんか?」
葉月:「え~っと、それはまた後で…」
伊織:「そう言っていつも答えてくれませんよね?いい加減にしないと父に報告しますよ」
葉月:「わーっ、待って待って💦私は伊織くんとお喋りしたいの!ね、お話しよ?」
伊織:「いつもこうして誤魔化されてるような気がするんですけど」
葉月:「誤魔化してなんかないってば!!」
伊織:「(ため息)判りました。お茶持ってきます」
な、なんとか誤魔化せた。
私は伊織くんと色々話してる内に、彼に抱いてた冷たくて怖いイメージがなくなっていくのを感じていた。
相手を傷つけたくないから話す時は慎重に言葉を選ぶ。そして自分も傷つかないよう余計な話はしない。隙がなくガードが固い。
最初に会ったばかりの伊織くんはそんなイメージだった。でも心を許した相手にはとびきりの笑顔を見せ、時には相手をからかったり試すような態度をとってみせたり。
伊織くんとのフリートークの時間は少しずつ増えていき、気づけば私は彼の言葉に一喜一憂するようになっていた。最初は伊織くんの言葉に傷ついてたのに、今では彼とのお喋りが楽しくて仕方ない。
私をからかった後楽しそうに笑う伊織くんに最近ドキドキするようになった。
大人っぽい言葉でからかい、私がひっかかると楽しそうに笑う。
初めて会った時の鋭い眼差しはいつの間にかなくなっていた。
葉月:「伊織くんさあ、最近よく笑うようになったよね」
伊織:「そうですか?葉月さんの気のせいじゃないですか?」
葉月:「気のせいなんかじゃないよ!最初はさあ、ヒサコさん命って感じで笑うこともなかったんだよ、伊織くん。めっっっちゃ怖かったんだから!でも今は本当によく笑うようになった」
伊織:「だったら葉月さんのせいですね、豪快だし大雑把だしノー天気だし」
葉月:「そこは、葉月さんのお陰でしょうがって…ん?なあんか、褒められてる気がしないんだけど」
伊織:「後は…デリカシーがない」
葉月:「ちょっと!!!」
伊織:「ふっ、あははっ」
葉月:「も~!!私だって傷つくのよ」
伊織:「でも、だからこそヒサコさんへの気持ちを整理出来たのかもしれません」
葉月:「え?」
伊織:「最初は、ヒサコさんと正反対のタイプの葉月さんは苦手なタイプだと思っていました。でも、話してる内にだんだん気になってきたんです。そして葉月さんが帰った後は、いつも寂しさを感じるようになりました。賑やかな葉月さんが帰ったからだと思ったんだけど、そうじゃない。僕はいつの間にか葉月さんに惹かれていたんです」
葉月:「それ、本当?」
伊織:「……なあんて、言うと思いましたか?」
葉月:「はい?」
伊織:「くっ、あははっ」
葉月:「も~!!騙したわね!!!」
また伊織くんの言葉にひっかかってしまった。
悔しい…と思った瞬間、伊織くんの手が…。
伊織:「騙してませんよ」
私の膝をそっと撫でた。
葉月:「ちょっっっ!!!」
伊織:「葉月さん、好きです。元気で明るいところも、ポジティブなところも、賑やかなところも、大雑把で豪快でノー天気でガサツなところも全部」
ん?なんか悪口言われたような…
葉月:「最後の方、悪口みたいだったんだけど」
伊織:「騙されやすくて、お人好しで、素直で、可愛いところも好きですよ。僕が守らなきゃって思いました」
伊織くんの言葉にまたときめいてしまう。
今度は…信じて大丈夫?
葉月:「それじゃ…信じていいの?」
私が聞くと、伊織くんはふっと笑って私の膝に頭を預けてきた。そして膝頭を撫でてキスされた。
伊織:「葉月さん、貴女が好きです。僕の側にずっといてくれませんか?」
膝枕だけど今まで膝枕をしたことなかった私は、彼が頭を乗せた時震えてしまった。
葉月:「私も伊織くんのこと、ずっと好きだった。ヒサコさんを一途に想ってすごく苦しそうな伊織くんを見てるの辛くて…。
なんとかしてあげたいと思うようになってから、私も伊織くんのこと好きだって気づいたの。だから今、めちゃめちゃ嬉しくて幸せだよ…。これからもずっと側にいるからね」
伊織:「僕も同じ気持ちだよ。ずっと側で貴女を守るから…」
第一印象は最悪だった。すごく冷たくて怖くて…無表情の伊織くんを見てるの辛かった。
でも、いっぱい話してる内にあなたの表情はどんどん変わっていった。あなたにからかわれる度、楽しそうに笑うのを見る度、私の中であなたはいっぱいになっていった…。
あなたに出逢えて本当によかった。
これからは私があなたを守る。
そして、ずっとずっと一緒にいようね。
終
あとがき
お読みくださりありがとうございました。
今回は以前公開した拙作『母は膝枕~膝枕に育てられた少年~』に出てた膝枕の葉月さん目線のお話です。
『母は膝枕~膝枕に育てられた少年~』はこちら。
今回のサムネイルはこちらをお借りしました。
朗読してみたい方へ
読みたいと思ってくださりありがとうございます。
clubhouseでの朗読(非営利)はお好きに読んでいただいて構いません。
私への連絡は必要ありませんが、読んだ後にお知らせくださったら喜んで聞きに行かせていただきます。
楽しんでいただけると嬉しいです☺️
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