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火遊びレニエ 34

おれとフランソワは壁際のソファーに座るよう促された。ルメー校長は執務机につき、フルニエ副校長はおれたちと向かい側のソファーに座っている。
「おまえたちの口論の内容は聞いた」
ルメー校長が口を開く。おれとフランソワは黙っている。
「まったく、あんな単純な理由で取っ組み合いをしようとするとは呆れたものだ」
「恐れながら、フランソワが必要もないのに挑発してきたのです」
この場でこんなことを言うあたり、まだ気持ちが昂ぶっていたということだろう。
「ふん、図星だからといって人のせいにするとは見苦しいぞ、レニエ」
フランソワがそう言い返してきたのでおれはキッとにらみつけた。
「お前の成績が落ちたのは事実だろう? 事実を言って何が悪い?」
フランソワが続ける。校長室に呼び出されているという状況でなければ、また殴りかかっていたに違いない。そこへフルニエ副校長が割り込んできた。
「その通りだ、レニエ。最近のお前は授業中もボーッとして成績の低下も甚だしい。他の者にバカにされても仕方あるまい」
おれは思わずフルニエ副校長をにらんだ。
「しかし、フランソワ、お前もよくない。勝者には品格が必要だ。士官ならなおさらだ」
「・・はい・・」
フランソワは小声で反省の色を見せたが、おれは不満を露わにして校長と副校長に目を向けた。ルメー校長はおもむろに椅子から立ち上がるとこちらへゆっくりと歩いてきた。
「まあ、お前たちがこれで納得して仲直りするとも思えん。むしろ何も変わらんだろう。私としてはレニエが授業に集中し、フランソワが将校にふさわしい考え方を身につけるよう導かねばならん。そこでだ」
おれたちは目の前に立っているルメー校長を同時に見上げた。
「今年の模擬合戦は、おまえたちに各軍の将軍をやってもらおう」
「え・・?」
おれとフランソワは同時につぶやいた。模擬合戦というのは、毎年恒例のビッグイベントである。士官学校の授業・訓練の総まとめとして、生徒が2つのグループに分かれて軍隊を形成し、学校敷地内の森で模擬の戦闘をするのだ。
この将軍役は成績上位の2人から選ばれるが、年に一度の大型行事なので誰がなるか注目されている。
「フランソワ、言いたいことはわかる。最近のレニエの成績で将軍役はおかしいというのだろう? しかし、少し前までレニエは全科目トップだったのだから問題ない」
ルメー校長が抗議しようとしたフランソワを制した。
「ふたりとも、今まで学んだことを十分に生かし、この模擬合戦で正々堂々と勝負するがよい。それでつまらぬ嫉妬や虚栄心を昇華させるのだ。わかったな?」
フルニエ副校長はそう言って話を終わらせた。

1時間後には学校中、模擬合戦の将軍役におれとフランソワが選ばれたという話題でもちきりになった。この役に憧れる者も一定数いる。
「成績ガタ落ちのレニエが将軍? それっておかしくないか?」
「それを言ったら、今回やっと総合1位になったフランソワだって・・」
「かといって他は一度も1位になったことないのばかりだし」
「それでも毎回安定して2位や3位の中から選んでもよかったんじゃないか?」
「とにかく今年はこの2人で決まりなんだな。あとは2人がどんな人選をするかだな」
夕食前の食堂はそんなうわさでやかましい。
将軍は5人まで自分の軍に入る者を選べるが、その他はくじ引きで決まる。
「おれとドミニクは当然レニエの軍だよな?」
オリヴィエは有無を言わさぬ様子で聞く。
「もちろん。オリヴィエは副官、ドミニクは参謀で考えてる」
おれは食堂のテーブルに視線を落として人選や作戦を考えている。この模擬合戦でフランソワ軍に勝って、全科目トップのレニエ・ド・ジャルジェの名誉を挽回しなければ。そうだ。思い出せ。おれはどこを取っても完璧だった。何でも思い通りに動かせた。それが本来のおれの姿だ。最近ちょっとおかしくなっていただけだ。あんなフランソワごときにトップの座を明け渡してなるものか! 
おれは10人ほど並んだ先にいるフランソワをにらみつけた。

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