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秋田鈍行列車の旅

コロナが始まる少し前の話

兄の司法修習先の秋田県まで各駅停車で16時間かけて鉄道の旅をした。

「学部生のお前は暇なんだから俺の引越し手伝え」

と言われ、何を血迷ったかせっかくの初秋田県だからと青春18切符を使って鈍行列車で行くことに。
季節は1月、寒空の中始発に乗って秋田へ進む。

鈍行列車は乗り換えが多く、かつ次発までの接続時間が短いことがその時は多くて何も食べずに辿り着くは福島駅。お腹を心底空かせた私は駅舎にある蕎麦屋で「ミニ天丼蕎麦セット」なるものを注文、駅の立ち食い蕎麦屋みたいな店に入ったのは人生初だった。

ところがそこで事件。頼んだ蕎麦セットがなかなか来なくて列車の発車時間が差し迫ってくる。

「(ちょ、、まて、、どう計算したって1分30秒から2分30秒くらいの間で食べないと次に間に合わないぞ…汗)」
熱いものをそんなハイスピードでギャル曽根の如く胃袋に流し込むなんて芸はとても私にはできない。

奥羽本線は米沢行きの列車出発まで残り3分。
私は覚悟を決めた。既に代金は支払い済みだった「ミニ天丼蕎麦セット」を食べること無く席を立ち上がり

「おばちゃん!!ごめん!!電車間に合わないから私の大丈夫!お金も大丈夫です!!」

とだけ言って、慌てて店を飛び出して行った。
すぐ隣のテーブルにいた4人組の家族、年端もいかない少女が私の事を目を丸くして見上げてきたのがとても可愛かった。不思議な人だと思われたろうに。

慌てて、米沢行きの奥羽本線に飛び乗るやいざ秋田へ!電車は何事もなく出発して揺れること次の駅にて、人身事故に遭遇。自販機もない無人駅で90分間電車は立ち往生することになり、あのミニ天丼セットの犠牲は何だったのかと1人で悶絶。(時刻は13時頃で丁度お昼時)

田舎の無人駅はホームで煙草を吸っても良いのか、喫煙者はこぞって電車を降りてホームで煙草を吹かしてたので、私も仲間入りして吸っていた。"鬼ころし"という紙パックのお酒を呑みながら煙草を吸っていた見た目は浮浪者さながらなお爺ちゃんと仲良くなってミニ天丼セットを食べれなかったことを愚痴ったら、大笑いしてくれた。

時間が経って、無事に列車は出発して秋田へ進む。

まだ雪化粧された景色は目に入らず、枯れた山がひたすら続く代わり映えのない景色に嫌気がさし、気が付いたら寝ていた。

「ちから〜ちから〜力もち〜!!!」

と、凄まじい声で目が覚める。知る人ぞ知る、
「峠駅」  である。
乗客たちが慌てて1000円札を握りしめ、窓からお弁当箱のような物を購入していた。

福島での昼食を食べ損ねた私は、周りの乗客が買っていたものがお弁当箱だと思い、慌てて流れに乗って窓から顔を出して買った。

中身は幕の内弁当か、横浜駅の崎陽軒の焼売弁当か、はたまたチキンライスか、そんな事を想像して胸を膨らませた。

中を開けた、「餅」だった。
峠駅の茶屋は非常に有名らしく、この力餅なるものを手に入れるためには、鈍行列車でこの駅まで来なければ手に入らないという希少なお餅らしい。

自他共に認めるほどの"超"辛党の私は甘いものなんて食べる事は出来ず、焼売弁当か、せめて幕の内弁当くらいを食べれるものだと思っていた私は衝撃を受けた。(それだけ嫌い笑)

一つだけ無理やり口に押し込んで冷めた綾鷹で流し込み秋田へ旅は続く。

山形と秋田の県境近くに、「新庄」という駅がある。そこでの次発列車との接続時間が比較的あった為、軽く軽食をとる事が出来た。
新庄駅から秋田駅までは最後の関門と呼ばれており、なんと間に27駅もある。ここから更に3時間なのだ。時刻は17:40、途方も無い旅を始めてしまったと痛感した。

最後の27駅の間はほとんど記憶が薄い。
何を考えていたか。携帯の充電はなくなり、持っていた本は読み終わり、ほぼ廃人のように電車に揺られていた。

途中で意識が無くなり、肩をトントンとされ目を覚ますと、福島から一緒に乗っていた"鬼ころしお爺ちゃん"が

「またね、お兄さんと秋田を楽しんでね」

と声を掛けて駅を後にして行った。
それがどこの駅なのかはわからなかった。
朧気に電車の外に目をやると、ただひたすら真っ暗な暗闇に辺り一面広がる銀世界。

何か変な薬でも飲んで夢を見てたんじゃないか?
もしかしたらあのお爺ちゃんは実在しなかったのか?と思うほど、不思議な体験だった。
良い表現が見当たらないみけど、あえて言うなら銭婆に逢いに行く千尋の電車の旅の様。
そう、大都会で生まれ育った少女が始めて1人で片田舎に住んでいる祖父母を訪ねる時のような気持ちなのか。
そんな事を最後に秋田鈍行列車の旅は終わりを告げる。

青春18切符の鈍行列車の旅は良い。
16時間も電車に揺られれば、色んな事を考える。
何をするにしてもスピーディさを要求される現代社会において、「ゆっくり動く」ことも時に人は必要だと思う。いつでもどこでも情報にアクセスできる便利な世の中だけれども、時間をかけて感じた事、経験した事は大切な記憶として刻まれる。
なんとも、具体的な表現方法が見当たらないのだけれども、
何か私の中で「鈍行列車の旅」というものは

・何が起きるか分からない
・なかなか目的地まではそう簡単に辿り着けない

今やっている勉強と繋がっている気がする。

いつか、、シベリア鉄道に乗りたいなぁ。

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