ミュシャの魔法にかけられて
「おはようございます!『ウサギのティースプーン』の時間がやってきました」ウサギは小さなラジオブースの中で、いつものように明るい声をマイクに乗せた。
「はーい、みなさん!お正月気分はもう抜けましたか? 新しい年が始まりましたね。今年最初の放送です!今日も一緒に、楽しいひとときを過ごしましょう♪」
「次のお便りは、ラジオネーム『今年も本が大好きなカメ』さんからです!『今年になって、最初にどこへお出かけしましたか?』というご質問をいただきました。
「私、元旦に蛇窪神社へ行ったの。今年は巳年だから、初詣にはちょうどいいかなと思ってね。でも、着いてみたら、蛇も驚きそうなくらいの長蛇の列ができていて、鳥居の手前で引き返してしまったわ」

「それでね、そのままミュシャ展を見に行ったの」ウサギは声を弾ませながら、楽しげに話を続けた。

「そこはまるで魔法の世界みたいだったわ。繊細な曲線で描かれた女性たちはどれも本当に美しくて、思わず見とれてしまったの」
その熱を帯びた声に引き込まれるように、番組は華やかに盛り上がっていった。


「ミュシャの作品はポスターだけじゃなく、雑誌の挿絵やチョコレートの缶にまで広がっていたわ…」ウサギは少し興奮したように言葉を継いだ。
「私、初めて知ったんだけど、ミュシャってマルチアーティストの先駆けだったのね」

「みなさんは、神社に行かれた方が多いのでしょうか?」ウサギはリスナーに優しく問いかけた。「おみくじが大好きな私も、そのうちどこかの神社に行ってみるつもりです」
「さて、そろそろお別れの時間が近づいてきましたね」ウサギは少し名残惜しそうに言葉を紡いだ。「今年もどうぞよろしくお願いします。それでは、次回もお楽しみに!」
放送が終わると、ウサギはしばらく静まり返ったスタジオの空気に身を委ねた。
「初詣ができなくて少し落ち込んでいた私を、カメくんがミュシャ展に連れ出してくれたのよね。おかげで楽しかったわ」
彼女はそっと息をつき、弾むような足取りで図書館へと向かった。きっと彼が待っている…そんな予感を胸に抱きながら。
