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猿の手活用ライフハック:息子を事故死・強制労働・産廃処分で10億円に変える方法

第一部

戸外は寒く湿っていたが、ラブアナム・ヴィラの小さな居間では、ブラインドが下ろされ、暖炉の火が明るく燃えていた。父と子はチェスを指していた。それは遊戯というよりは、互いの財布を狙う無言の戦争であった。

父親は、人生においてそうであるように、盤上でも身内の犠牲を厭わぬ急進的な手を好み、自分の歩兵ポーンを捨て駒にして相手のキングを追い詰めることに嗜虐的な喜びを見出していた。

「風の音を聞いてごらん」とホワイト氏は言った。彼は息子がトイレに立った隙に、盤上の駒を一つずらしたばかりだった。「お前の給料日のようだ。あっという間に通り過ぎていく」

「聞いていますよ」と息子は戻るなり言い、父親の不正を見抜いたが指摘はせず、逆に父親の財布から紙幣を抜き取る手つきで駒を進めた。「チェック。今月の家賃分はいただきましたよ」

「今夜は来ないだろうな」と父親は舌打ちをし、イカサマが通じなかったことに苛立ちを見せた。

「メイト」と息子が答えた。「これで貸しはチャラだ」

「これだから貧乏人は嫌なんだ」ホワイト氏は突然、予期せぬ激しさで怒鳴り声を上げた。「道は沼、通りは激流だ。こんな僻地へきちの不動産価値はゼロだ。火事でも起きて全焼すれば、火災保険で少しはマシな暮らしができるものを」

「まあまあ、あなた」火のそばで編み物をしていた妻が、穏やかに、しかし目は笑わずに言った。「放火は捕まるリスクが高いわ。もっと自然な災厄を待つべきよ」

その時、門扉が激しく音を立て、待ち人の重い足音がドアに向かってくるのが聞こえた。

やってきたのは、堂々たる体躯の、ビーズのような瞳と赤ら顔をした男、モリス曹長だった。

三杯目のウィスキーで目が輝き出すと、曹長は遠い異国の話をし始めたが、ホワイト氏は欠伸を隠そうともしなかった。彼が興味があるのは、曹長のカバンに入っているかもしれない金目のものだけだった。

「で、そのインドとやらには、持ち帰れる貴金属はなかったのかね?」ホワイト氏が露骨に尋ねた。

「いや、しかし……」曹長はポケットを探りながら言った。「もっと奇妙なものならあります。ただの干からびたミイラの手ですが」

曹長がそれを取り出した瞬間、ホワイト氏の目が鋭く光った。骨董的価値を瞬時に計算した目だった。

「ある古い行者ファキールが、これに呪文をかけたのです」と曹長は言った。「運命を操作し、三人の人間にそれぞれ三つの願いを叶えるという……」

「願いを叶える?」夫人が編み棒を止めた。「金銭的な願いも?」

「ええ。しかし、これを使った者は皆、結果として激しい後悔と代償を支払うことになります。最初の男の最後の願いは『死』でした」

曹長の警告を無視し、老夫婦は貪るような視線を干物に注いだ。

「代償か」ホワイト氏が鼻を鳴らした。「要はコストとリターンの問題だろう。利益がコストを上回れば、それは『成功』と呼ぶんだ」

曹長は不吉な予感を覚え、突然手を暖炉の火に投げ込んだ。「いかん! こんなものは燃やしてしまった方がいい!」

「何をする!」

ホワイト氏は叫び声を上げ、火傷も厭わず火の中に手を突っ込み、その物体を拾い上げた。

「持っていたければ、自分自身の責任で拾うことです」曹長は青ざめて言った。「私は警告しましたぞ」

「帰ってくれ」ホワイト氏は客を追い出すように言った。「商談は成立だ」

客が去った後、ホワイト氏は猿の手を愛おしそうに、いや、値踏みするように眺めた。

「何を願えばいいのか、実のところわからんよ。私は欲しいものは全て持っているような気がする」

「嘘をおっしゃい」ハーバートが冷ややかに言った。「父さんの借金、母さんの隠し口座、全部知ってるよ。10億円あれば、僕を殺して保険金を得る手間が省けるだろう?」

父親は、図星を指されたことを隠すように、卑しい笑みを浮かべてお守りを掲げた。

「賢い息子だ。だが、お前にはもっと効率的な使い道があるかもしれん」

息子は母にウィンクをして、ピアノで不協和音を弾き鳴らした。

「じゃあ、願ってみなよ。僕の命より重い10億円を」

老人は躊躇いなく、明確な殺意と欲望を込めて言った。

「私は、10億円を願う。手段は問わん。最も効率的な方法で」

老人が言い放った瞬間、ピアノが激しい音を立てた。

「動いた!」彼は叫んだが、その声には恐怖ではなく歓喜が混じっていた。「契約が成立したぞ! 手の中で確かに契約書の判が押された感触がした!」

「金は見当たりませんよ」と息子は冷笑した。「やっぱりインチキだ」

しかし、暖炉の火に照らされた老夫婦の顔には、息子を見る目つきとは違う、何か別の「資産」を見るような昏い光が宿っていた。

第二部

翌朝の朝食のテーブルに降り注ぐ冬の陽光の中では、昨夜の出来事も商談の一つに過ぎないように思えた。部屋には散文的とも言える強欲な空気が満ちていた。

「兵隊さんなんてのは皆、ホラ吹きね」とホワイト夫人は言った。「でも、もし本当に願いが叶うなら、10億円の出処が重要よ。課税対象にならない形が望ましいわ」

「空から非課税で落ちてくるかもな」とハーバートが言い、仕事に出かけた。

ハーバートが出かけた後、夫人は郵便屋のノックに急いで駆けつけたが、請求書だとわかると舌打ちをした。

昼食時、彼女は外をうろつく一人の男に気づいた。身なりが良く、艶のあるシルクハットを被ったその男は、決心したように門を開け、歩み寄ってきた。

男はモー・アンド・メギンス社から来たと言った。「息子ハーバートさんは……お怪我をされました」

「怪我?」夫人が身を乗り出した。「治療費はそちら持ちでしょうね? うちは一銭も出しませんよ」

「ご安心ください」訪問者は視線を落として言った。「息子さんは重傷ですが、今はもう痛みを感じてはいません」

「おお、神に感謝します!」夫人は手を組んで叫んだ。「痛みがないということは、麻酔が効いているのね? 治療費のかからない即効性の鎮痛剤でも打ってくれたのかしら!」

彼女は安堵の表情を浮かべたが、訪問者の沈痛な面持ちを見て、その言葉の真意を悟った。

「……死んだのね?」夫人の声のトーンが、安堵から失望へ、そして瞬時に計算へと切り替わった。「痛みを感じないというのは、もう二度と治療費も食費もかからないという意味ね?」

訪問者は無言で頷いた。「左様でございます」

「機械に巻き込まれて」ホワイト氏は繰り返した。その声には驚きはなく、確認の響きがあった。「ああ、やっぱりか」

「当社は一切の責任を負いかねます」と男は続けた。「法的責任は認めませんが、息子さんの貢献を考慮し、補償としてある金額を贈呈したいと存じます」

ホワイト氏は立ち上がり、訪問者に詰め寄った。悲嘆に暮れる父親の演技すらせず、その目は獲物を狙うハイエナのようだった。「いくらです? 示談にするなら、それなりの額が必要ですが」

「10億円です」

老夫婦は顔を見合わせた。

夫人の口元が歪んだ。悲鳴の代わりに、堪えきれない笑みが漏れた。

夫は倒れるどころか、背筋を伸ばし、勝利者の顔つきになった。

「猿の手は、正しく機能したようだな」ホワイト氏は呟き、訪問者の手から小切手をひったくった。「息子の命など、減価償却の終わった機械と同じだ。実に良い取引だった」

訪問者は、目の前の老夫婦の異常さに戦慄し、逃げるように去っていった。

残された夫婦は、息子の死など忘れたかのように、10億円の運用計画を話し合い始めた。

第三部

巨大な新しい墓地に死者を埋葬し、二人が家に戻ると、そこには影と沈黙が満ちていた。しかし、それは喪失の沈黙ではなく、次なる収益源を模索する猛禽類の沈黙であった。

一週間後の夜、老人がふと目を覚ますと、妻が窓辺で月を見上げていた。

「戻っておいで」彼は声をかけた。「寒いだろう」

「あの子にとってはもっと寒かろう」と老婦人は言った。その声には母の情愛ではなく、経営者の冷徹さが宿っていた。「ねえ、あなた。あの子、生きている時よりも死んだ今の方が価値があると思わない? 埋めておくのは『在庫の死蔵』よ」

老人はベッドの中で身を起こした。「猿の手か」

「あと二つ、願いが残っているわ。10億円は手に入ったけれど、働き手がいなくなったのは損失よ。あの子を呼び戻して、もう一度稼がせましょう。死体なら給料も休みもいらないわ」

男は暗闇の中、階下へと降り、手探りで居間へ向かった。お守りを手に取ったとき、微かな躊躇いがあった。それは倫理的なものではなく、死体の耐久性への懸念だった。

「願いなさい!」妻が階上から叫んだ。「あの子は頑丈よ! まだ使えるわ! 骨までしゃぶり尽くすのよ!」

彼は手を挙げた。「息子よ、もう一度10億円稼ぐために、生き返れ。ただし、人格はいらん。労働機能だけを持って戻れ」

猿の手が床に落ちた。 時計の音が響く中、沈黙が続いた。やがて、玄関のドアを叩く、控えめだが密やかな音が響いた。

トン。

老人は身動きもせず、冷静に時計を見た。「到着が早いな。配送効率が良い」

トン。トン。

妻が階段を駆け下りてきた。「ハーバートだわ! さあ、開けてあげて。明日の早朝シフトに間に合わせないと」

「待て」老人は言った。「契約書の確認だ。死人に労働基準法は適用されない。その点を確認してからだ」

ドン! ドン! ドン!

家の至る所から、まるで壊れた機械のような不規則で暴力的なノックの連打が響き渡った。

夫はかんぬきを外した。冷たい風とともに、息子が入ってきた。

それは確かにハーバートだったが、もはや人間ではなかった。機械に巻き込まれて千切れた皮膚は粗雑に縫合され、目は虚ろで、呼吸をしていなかった。ただ、命令を待つかのように、そこに立っていた。

「おはよう、ハーバート」ホワイト氏は言った。「さっそく仕事だ。休憩時間はないぞ」

それからの日々は、ラブアナム・ヴィラの近隣住民にとって不可解なものとなった。

夜毎、老夫婦の家からは重い荷物を運ぶ足音と、絶え間ない作業音が響いた。

蘇った息子は、完全なる労働機械であった。彼は眠らず、食事を摂らず、痛みを感じず、不平を言わなかった。

酸素のない環境での深海作業、放射能汚染区域での廃棄物処理、紛争地帯への物資輸送――人間には不可能な、しかし高額な報酬が約束される「死の仕事」を、彼は黙々とこなした。

老夫婦の口座には、再び莫大な金が積み上げられていった。

「素晴らしいわ」夫人は通帳を見ながら微笑んだ。「あの子、生前よりずっと親孝行ね」

「ああ。維持費がかからないのがいい」ホワイト氏はパイプをふかしながら満足げに言った。「これぞ純利益だ。親の恩を死んでから返すとは、感心な息子だ」

しかし、永遠に動く機械は存在しない。

二度目の10億円が貯まる頃、息子は限界を迎えていた。

防腐処置の限界を超え、皮膚は剥がれ落ち、腐敗臭が漂い始めていた。関節が動くたびに、不快な湿った音が響くようになった。

ある晩、息子はリビングの真ん中で、ただの肉塊のように崩れ落ちた。それでもなお、彼の指は痙攣し、見えない荷物を運ぼうとしていた。

「困ったな」ホワイト氏は鼻をつまんだ。「これではもう現場に出せん。資産価値はゼロだ」

「置いておくわけにもいかないわ」夫人が顔をしかめた。「臭いがひどいもの。近所から苦情が来るわ。不法投棄で罰金を取られるのは御免よ」

老人は、マントルピースの上に置かれた猿の手を手に取った。残る指は一本だけだった。

通常の物語ジェイコブズの原作であれば、ここで親は息子の安息を願うだろう。墓に戻り、静かに眠ることを。

だが、ホワイト氏は違った。彼は損切りを嫌う投資家だった。最後の最後まで、一滴の利益も逃さない。

「第三の願いだ」 彼は崩れかけた息子を見据え、厳粛な声で宣言した。

この有機廃棄物を、10億円で買い取らせろ

猿の手が激しく痙攣した。あまりの業の深さに、呪いそのものが身震いしたかのようだった。

翌朝、何の紋章も持たぬ漆黒の馬車――いや、窓のない巨大な黒い自動車が、重苦しい音を立てて門の前に停まった。降りてきたのは、顔の見えぬ数人の男たちであった。彼らが何者であるか、異国の密使か、あるいはさらに冒涜的な組織の使者か、ホワイト氏は問わなかった。彼らもまた、沈黙を守っていた。

ただ一つ確かなことは、この世の市場には存在し得ぬ「それ」に対し、彼らだけが暗黙の需要を見出したという事実のみであった。

指揮官と思しき男が、床に広がる腐敗した息子の残骸を、冷徹な眼差しで見下ろした。そこには歓喜も嫌悪もなかった。あるのはただ、品定めをする商人の、感情を排した事務的な視線だけであった。

「……条件に適合する」男は短く、低く呟いた。

「契約通り、10億円で」ホワイト氏は震えることもなく領収書を差し出した。「以後、一切の異議申し立ては受け付けん。返品も不可だ。よろしいな」

「承知している」男は懐から重厚な革の鞄を取り出し、中身を確認させることもなく手渡した。「我々が求めたのは『現象』であり、器の形状ではない」

かつて息子であったモノは、特殊な鉛色の棺に収められ、ただの「未分類有機物質」として淡々と運び出されていった。車列が音もなく霧の中に消え、静寂が戻ったラブアナム・ヴィラには、消毒液の鋭い匂いと、10億円だけが残された。

夫は空になった猿の手を、未練もなく暖炉の火に放り込んだ。

「さて、婆さん」彼は煤けた手を見つめながら言った。「次は養子でも迎えるとするか。保険金の上限には、まだ余裕がある」

夫人は編み物を再開し、慈愛に満ちた、しかし底知れぬほど冷たい微笑みを浮かべた。「ええ、そうしましょう。今度はもう少し頑丈な子が良いわね。……壊れにくい子が」

通りの向かいで、街灯が風に揺れながら瞬いていた。そこには教訓も、因果応報の恐怖もなかった。ただ、悪魔的な成功を収めた老夫婦の、満ち足りた安らかな夜があるだけであった。

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