見出し画像

「封印された校舎 ―― 旧白銀学園の呪い」⑫

第12話:「時空を超えた真実」

まばゆい光が消え、琴音と健太の目の前に広がったのは、見慣れた白銀学園の校舎だった。しかし、どこか違和感がある。

「ここは...白銀学園?」琴音が周囲を見回しながら呟いた。

健太も首をかしげる。「でも、なんだか様子が違うような...」

彼らの傍らにいた少女―50年前の白銀学園の意識―が説明を始めた。「ここは過去と現在、そして未来が交錯する特殊な空間よ。白銀学園の50年前、現在、そして未来が重なり合っているの」

その言葉通り、校舎の一部は古びて見え、別の部分は現代的で、さらに別の箇所は未来的な設計に見えた。空には、複数の月が浮かんでいる。

「驚くべき光景ですね」健太が感嘆の声を上げる。

「ここで何をすればいいの?」琴音が少女に尋ねた。

少女は真剣な表情で答えた。「オメガ計画の真の目的を知り、そして...それを阻止するのよ」

「阻止する?」健太が驚いて声を上げる。「つまり、オメガ計画は本当は...」

「そう」少女が頷く。「世界を救うどころか、破壊に導く可能性があるの」

琴音と健太は息を呑んだ。これまで彼らは、オメガ計画が何か良いものだと信じていた。しかし、その認識が根底から覆される。

「でも、どうやって...」琴音の言葉が途切れたその時、遠くから叫び声が聞こえてきた。

「助けて!」

三人は顔を見合わせ、即座にその方向へ走り出した。声の主を探しながら、彼らは時代の異なる校舎の間を縫うように進んでいく。

そして、中庭らしき場所にたどり着いた時、彼らは驚愕の光景を目にした。

そこには、まるで透明な檻のような空間があり、その中に閉じ込められているのは...

「あれは...私たち?」琴音が息を呑む。

確かに、檻の中にいるのは琴音と健太によく似た姿をした少年少女だった。しかし、よく見ると微妙に違う。

「あれは、50年前の私たちの先祖...オメガ計画の最初の被験者たちよ」少女が説明する。

「なんてこと...」健太が唖然とする。

その時、檻の近くに人影が現れた。それは...

「高橋博士!」琴音が叫ぶ。

確かにそこにいたのは、彼らを異次元に飛ばした張本人、高橋博士だった。しかし、その姿は若く、50年前の姿のようだ。

「よく来たね、未来の子供たち」高橋博士が不敵な笑みを浮かべる。「ついに、オメガ計画の真髄を目にすることができる」

「どういうことだ?」健太が問い詰める。「オメガ計画の目的は一体...」

高橋博士は腕を広げ、誇らしげに語り始めた。「人類の進化だよ。この二人を使って、時空を操る力を持つ超人類を生み出す。そして、その力で世界を...いや、歴史そのものを支配するんだ!」

琴音と健太は言葉を失う。それは彼らが想像していたものとは、あまりにもかけ離れていた。

「そんなの間違ってる!」琴音が叫ぶ。「人の人生を勝手に操るなんて...」

高橋博士は冷ややかな目で琴音を見た。「間違っている?いや、これこそが人類の進むべき道だ。お前たち二人こそ、その集大成なんだよ」

「私たちが...?」健太が困惑した表情を浮かべる。

「そうだ」高橋博士が続ける。「お前たちの中に眠る力は、この二人の遺伝子を50年かけて進化させた結果だ。完璧な時空操作者として」

琴音と健太は互いを見つめ合う。これまで彼らが経験してきた不思議な出来事、そして彼らの力。全ては、この50年前の出来事に繋がっていたのだ。

「でも、それは間違ってる!」琴音が強く主張する。「私たちの力は、誰かを支配するためじゃない。守るため、助けるためにあるんだ!」

健太も頷く。「そうだ。僕たちは、あなたの思い通りにはならない」

高橋博士の表情が歪む。「愚かな...分かっていないんだな。この力の本当の可能性を」

その時、檻の中の二人が叫んだ。「助けて!私たちを解放して!」

琴音と健太は顔を見合わせ、頷き合った。

「行くよ、健太」
「ああ」

二人は手を取り合い、檻に向かって走り出す。しかし、高橋博士がその前に立ちはだかった。

「させるか!」

博士の手から、奇妙な光線が放たれる。琴音と健太は咄嗟にそれを避けた。

「くっ...」健太が唸る。「どうやって...」

「私たちの力を使うんだ」琴音が言う。「二人で力を合わせれば...」

健太は頷いた。二人は再び手を取り合い、目を閉じる。すると、彼らの周りに淡い光が宿り始めた。

「な...何!?」高橋博士が驚愕の声を上げる。

琴音と健太の周りの空間が歪み始める。まるで、時間と空間そのものが彼らの意志に従うかのように。

「させない!」高橋博士が叫び、再び光線を放つ。

しかし、その光線は琴音と健太の作り出した空間の歪みに吸い込まれていく。

「これが...私たちの本当の力」琴音がつぶやく。
「ああ、みんなを守るための力だ」健太も静かに言う。

二人の力が檻に向けられる。するとゆっくりと、檻が溶けるように消えていった。

「あ...ありがとう」檻の中にいた少女が涙ながらに言う。
「助かったよ」少年も安堵の表情を浮かべる。

高橋博士は怒りに震えていた。「くそっ...50年の計画が...」

その時、博士の背後に影が現れた。

「もういい加減にしろ、高橋」

振り返ると、そこには現代の高橋博士の姿があった。

「お前は...」若き日の高橋博士が驚きの声を上げる。

現代の高橋博士は悲しそうな表情で言った。「私は...君の50年後の姿だ。そして、この計画が間違いだったことに気づいたんだ」

「な...何を言っている!」若き日の高橋博士が叫ぶ。「これこそが人類の...」

「違う」現代の高橋博士が静かに、しかし力強く言う。「人類の未来は、支配ではない。共生だ。この子たちが教えてくれたんだ」

琴音と健太は驚きの表情で二人の高橋博士を見つめていた。

現代の高橋博士は琴音と健太に向き直った。「君たちの力は、確かに素晴らしい。でも、それは世界を支配するためじゃない。世界をより良くするため、人々を助けるためにある」

「博士...」琴音が感動的な表情で呟く。

若き日の高橋博士は混乱した様子で頭を抱えた。「そんな...私の夢が...計画が...」

現代の高橋博士が若き日の自分に近づき、その肩に手を置いた。「もう十分だ。これ以上、罪を重ねる必要はない」

その瞬間、若き日の高橋博士の姿が光に包まれ、消えていった。

「これで...終わったの?」健太が周りを見回しながら尋ねる。

50年前の白銀学園の意識の少女が微笑んで答えた。「ええ、一つの終わりであり、新たな始まりよ」

現代の高橋博士が深々と頭を下げた。「本当に申し訳ない。私の狂気が、こんなにも多くの人を苦しめてしまった」

琴音が優しく言った。「でも、最後に気づくことができた。それが大切なんです」

健太も頷いた。「これからどうするんですか?」

高橋博士は真剣な表情で答えた。「全ての真実を明かし、そして...償いをする。それが私のすべきことだ」

その時、空間全体が揺れ始めた。

「なっ...何が」健太が驚いて叫ぶ。

少女が説明する。「この特殊な空間が崩れ始めているわ。オメガ計画の根幹が変わったことで、もう維持できないの」

「じゃあ、私たちは...」琴音が不安そうに尋ねる。

「ええ、現実世界に戻るわ」少女が頷く。「さあ、行きましょう」

琴音と健太、そして高橋博士は互いに頷き合った。周囲の景色が溶けていく中、彼らの体が光に包まれていく。

「みんな...ありがとう」

それが、50年前の白銀学園の意識の少女が言った最後の言葉だった。

まばゆい光が彼らを包み込み、そして...

現実世界、白銀学園の校長室。

突如として、空間が歪み、そこから3つの人影が現れた。

「琴音!健太!」千代子が驚きの声を上げる。

「無事だったのね!」美咲が涙ながらに駆け寄る。

琴音と健太は、まだ少し放心状態だったが、ゆっくりと周囲の状況を把握し始めた。

「ただいま...」琴音が小さく呟いた。
「戻ってこれたんだな」健太も安堵の表情を浮かべる。

そして、彼らの隣に立っていたのは...

「高橋博士!」校長が驚いて声を上げた。

高橋博士は深々と頭を下げた。「皆様、大変申し訳ありませんでした。全てを説明し、償わせていただきます」

校長室に集まった人々は、困惑と安堵が入り混じった表情で3人を見つめていた。

琴音と健太は顔を見合わせ、小さく微笑んだ。長い旅を経て、彼らはようやく本当の意味で home に戻ってきたのだ。

そして、これからの白銀学園、そして世界には、新たな章が始まろうとしていた。

(第12話 終)


第13話につづく

いいなと思ったら応援しよう!

syi k よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます。コーヒーとお菓子を買わせてください🙇