#13アーサーの日常 トレーナーさんとの出会い
今回は、アーサーとの暮らしの中で、初めて「トレーナーさん」に来ていただいたときの話です。
元気で人懐っこくて、好奇心旺盛なアーサー。
毎日たくさんの楽しい時間をくれる存在ですが、その一方で、少し困っていたこともありました。
それが「噛み癖」です。
まだ子犬だったこともあり、遊びの延長のような感覚で、私たちの手や服に歯を当ててくることがありました。
本や動画で紹介されている方法を試してみたり、「痛いよ」と伝えてみたり。
できることはやっているつもりでしたが、なかなかうまくいかず、どう向き合えばいいのか分からなくなることもありました。
そんな中で、もともと興味のあった犬の保育園に相談をしたところ、
まだワクチンが完了していない時期だったこともあり、パーソナルトレーナーさんを紹介していただくことになりました。
連絡を取ると、1週間ほどで来ていただけることに。
初めてのことに少し緊張しながら、その日を迎えました。
「う"ーーー」
初めての来客対し、アーサーはケージの中から毛を逆立てて唸りました。
家ではほとんど吠えることすらなかった上、
そんな姿を見るのは初めてで、正直とても驚いたのを覚えています。
慣れていない環境だったこと、そして和犬らしい警戒心の高さが、あの頃の月齢でも既に出ていたのだそうです。
さらに、興奮と緊張が混ざったのか、その場でおしっこをしてしまいました。
でも——
トレーナーさんが落ち着いて挨拶を済ませたあと、アーサーの様子は一変します。
さっきまでの警戒が嘘のように、表情がやわらぎ、
「キャンキャン」と嬉しそうに甘えていく姿に、思わずこちらが戸惑うほどでした。
小さい体ながらに、相手のことやその場の空気を感じ取っているのだと感じた瞬間でした。
カウンセリングの中で印象的だったのは、
トレーナーさんが、アーサーの月齢や性格だけでなく、「和犬としての特性」も踏まえた上で、関わり方を考えてくれていたことでした。
本や動画で紹介されている方法は、あくまで“一般的なやり方”。
でも、目の前にいるのは「アーサー」という一頭の犬です。
その子の性格や気質に合わせて、どう伝えるのがいいのか。
トレーナーさんからは、「やめさせる」というよりも、アーサー自身に考えてもらうことが大切だと教えてもらいました。
例えば、噛んだら楽しい時間が終わるということ。
そうすることで、アーサー自身が「どうしたらいいのか」を考えるようになるのだといいます。
「まずは私がやってみますね」
そう言って、トレーナーさんがアーサーとおもちゃで遊び始めました。
いつも通り、じゃれ合うような流れの中で——
アーサーが歯を当てた、その瞬間。
「ヒーーーーン!!!」
思っていた5倍くらい大きくて高い声に、思わずこちらがびっくり。
そしてそのまま、おもちゃを持って、すっと部屋を出ていき扉閉めました。
一瞬、何が起きたのか分からず、私たちもアーサーもぽかん。
でも、そのあとすぐに、ドアの向こうから
「ピーピー」と鳴く声が聞こえてきました。
そして1分ほど時間をおいて部屋に戻ると嬉しそうに駆け寄ってきました。
遊ぶ → 歯が当たる → 高い声を出す → おもちゃを持って退出 → 少し時間をおいて戻る。
おもちゃはあえて1つだけにすることで、「楽しい時間が終わる」ことを分かりやすく伝えます。
また、少し時間を置いて戻ることで、アーサーが状況を考える時間を持ちながらも、「人はちゃんと戻ってくる」という安心感も同時に学んでいきます。
(最初は「ピーピー」という声にすぐ戻りたくなりますが、そこは少しだけ我慢です)
すると次第に、歯が当たった瞬間にアーサー自身も「あっ」というような表情を見せるようになりました。
そして、この日を境に——
それまで落ち着いて同じ空間にいることや、ゆっくり撫でることさえ難しかった日常が、一気に変わりました。
気がつけば、アーサーは膝の上で、カミカミおもちゃをくわえながら、ゆっくりと過ごしていて。
あの頃には想像もできなかったような、穏やかな時間がそこにありました。
後から帰宅したランティーも、その光景を見てびっくり。
「え、こんな風に過ごせるようになったの?」と、何度もアーサーを見ていたのを覚えています。

この時に声をかけながらブラッシングしたり
手足、尻尾、耳などいろんな所を触って
人の手に触れ慣れしてもらいました
もちろん、すぐにすべてがうまくいくわけではありません。
それでも、あのときの出来事は、
アーサーとの向き合い方を考える、ひとつのきっかけになりました。
今振り返ると、あのとき感じていた戸惑いや迷いも含めて、
一緒に暮らしていくための向き合い方を学ぶ、大事な時間だったのだと思います。
