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その10_やっぱり再建にこだわるあたし【4】予防的全摘手術の話

あたしのおっぱいに世間的な価値はない(笑)

 すでに左側に入っているシリコンインプラントにも事情があった、という話の続き。

 病も経て歳もとった自分が、20年前とほとんど変わらず、「おっぱい無いとかそれは嫌」と考えているってことは何度も述べています。
 何も変わらない。いや、少しは変わったかなとは思います。何せ再建を経験して、作った乳房で20年暮らしたのですから、再建術の限界とかも理解してますしね。
 しかしそれよりも一番変わったのは、世間の眼とか、世間の中にいる自分の位置だよね。

 早い話が、48の女性の胸が失われるのは”少しは”同情されるけど、60過ぎたおばーちゃんの胸とかどうでもよくね?という世間的な”価値の下落”?それはまあ避けられないのかも。だいたいほぼ誰も見てないしねえ。でもそれが一体なんだっての?

 結婚して、子供産んでて、授乳とかいっちょ前の仕事もこなして、もう用済みじゃん?と動物的な言い方をすれば言える。
 そもそもおっぱいってめんどくさい、とか思ってる女性もいないことはないです。重たいとか肩凝るとか、若い時は知らない男にじろじろ見られて嫌だったなー、そういうのなくなって楽になったなーとか、なんかセクシャルな意味でも重荷に感じてきた人も、中にはいるのかもしれません。あたしはそうじゃないけど。

いくつになっても人間は視覚的で、社会的に性的

 乳腺や柔らかい脂肪をすっぱりあきらめるのですから、要するに見かけってことなんだよね。人間は自覚している以上に視覚的な生き物だと、絵描きのあたしは認めざるを得ないのです。自分の目が自分をどのように見るかも視覚刺激として重大だと感じております。
 それから、どんなおばあちゃんでも、介護施設の職員に好みの異性がいたら、途端にるんるん元気になったりするじゃん?聞いたことあるでしょ?たぶんずっと死ぬまで、人間は社会的な意味で、性的であり続けるんだと思うんだよね。しかも絶対視覚的にきれいな異性が好きじゃん?

 そうはいっても、例えば見かけについて、自分は特になんも恵まれたところってなくてさ、だから他人の誰かがどう見るとかでは必ずしもありません。こういう体が自分だというイメージを、手放さなくていいのなら、手放さないでいたい。これ全部失わなきゃ生きていられないというなら、それは命がある方が大事でしょうけど、とりあえず命の話じゃないのよ。これからまだしばらく生きていることになってて、どんな体でいたいのか、どう見えたいかって話なのです。

 もしかしてこれが生まれながらの注目され体質とかさ、誰もが認める美人のアイデンティティを生きてきた人なら、また感じ方が違うかな?違うんだろうな。その辺も、どなたか美人さん、お話してくれるんならあたし聴きたいです。自分が美人だと名乗るのに抵抗があるのなら、匿名でお話してくださる方いらっしゃらないかしら?

遺伝子問題が標準治療に影響する時代になった

 予防的な全摘出手術をしたことを公表した女優さんがいます。アンジェリーナ・ジョリーさんですね。彼女は乳がんになったわけではなく、将来の発症可能性が87パーセントにもなる遺伝子を持っていて、実母がガンで50代の若さで亡くなった経験から、予防的に切除を受ける選択をしたことで話題になりました。2013年のことで、その傷跡の写真を2025年に初めて公開したとのことです。
その決断についてフランス版TIMEに語ったということを報道したVOGUEの記事(ちょっとややこしい)はこちら。
 世間的に価値があるおっぱいの例としてこれを紹介するわけではございません。あたしは命を取られるような乳ガンにはなっていませんが、世の中には亡くなる方もいる。彼女が語ったのは子供を遺していなくなるリスクを87パーセントから5パーセント以下にまで減らすことができた、というストーリーです。彼女は卵巣と卵管も摘出しているそうです。
 自分が生きているからと言って、乳ガンを怖くない病気だと言うつもりはありません。ガン細胞にはたくさん種類があり、恐いものもあります。

 このリスクの高い遺伝子の問題ですが、最近こんな話を聞きました。乳ガンの患者で、家族歴が目立つケース(実母や姉妹に同じ病気が出ているなど)で、遺伝子検査を勧められ、結果、全摘手術になった人がいたそうです。病巣が小さくても、初期でも、そういうことはあるのですね。(ここでいう遺伝子検査は、特定の遺伝子を見つける厳密なもので、日本で見かける安価な遺伝子検査サービスとは違います。念のため)

 あたし自身は、家族や親戚に確かに各種のガンは多く、祖父母は4人とも早くに亡くなっていて、父母もガンが引き金で亡くなっていますが、乳ガンを具体的に聞いてはおりません。単にそれは語られないのかもしれません。そもそもガンそのものが何一つ珍しくはないですよね。あたし自身が患者になってから5年後、父方の従妹がやはり乳ガンになっています。
 著しく目立つ家族歴ではないかもしれませんが、自分がすでに一度やってますから、何というか、いわば”自分歴”が悪く、心証としては、あんまり楽観的になれないわけです。

 全部切ってしまうなら、ゼロではないにしろ、再発のリスクは最小限になります。

 リスク低減のことに重ねて、なるべくなるべく自分の身体のイメージを保ちたい。世間的に価値などなくても、私にとってはたったひとつの身体ですからね。

 というわけで、全摘して同時再建をするという選択は、割と自然な流れだったといえます。
つづく。



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SYNDI おひねりをもらって暮らす夢は遠く、自己投資という名のハイリスクローリターンの”投資”に突入。なんなんだこの浮遊感。読んでいただくことが元気の素です。よろしくお願いいたします。