聖蹟桜ヶ丘、好きなものの隣で暮らすということ
春になると、窓の外に桜が見える。
まどろみながらカーテン越しに眺めるピンク色は、目が覚めているのか夢の中にいるのかわからないくらい、やわらかくてあたたかい。風が吹くたびに花びらがひらひらと舞って、部屋の中まで春の匂いが漂ってくるような気がする。
ああ、ここに住んでよかった。
そう思う瞬間が、この街には何度もある。
4年前、私は関西から聖蹟桜ヶ丘に引っ越した。
理由はシンプルで『アイドルマスター シャイニーカラーズ』の舞台になった街に住みたかったから。
引っ越したばかりの興奮、慣れない関東の電車の混み具合、ゆうひの丘の夜景に息を飲んだこと。あの頃は毎日が新鮮な気持ちで特別だった。
4年経って、それが日常になった。
街が、体に馴染んだ
今年も桜の季節が近づいてきた。

いつもの通りの木々はまだつぼみのまま、でもその膨らみはもう春の準備ができている。あと数日したら、あの景色になる。そう思いながら眺めるつぼみも、4年目になってもちゃんと愛おしい。去年もその前も、このつぼみを見てから桜が咲くのを待った。その繰り返しが積み重なって、今がある。
引っ越したばかりの頃は、街の中にシャニマスの景色を「見つけよう」としていた。どこもかしこも見たことがある場所、初めて見るのに知っている。街に出るたびに写真を撮って、アイドルたちがここに立っていたんだと思いながら歩いた。
でも今は違う。
駅前の鳩を横目に通り過ぎて、いつもの坂を上がって、風を受けながら散歩をする。その全部が、もうとっくに私の日常になっている。283プロのアイドルたちは探さなくても、この街の空気の中にいる。4年という時間が、そう感じさせてくれるようになった。
住み続けることにした
先日、賃貸の更新を大家に伝えた。
少しだけ迷った。
もっと職場の近いエリアに引っ越したほうが楽かもしれない。
通勤電車は相変わらず混むし、池袋や秋葉原、ライブ会場へのアクセスは正直よくない。夏になればムクドリが大合唱するし、川沿いにはたくさんのクモが出る。それでもなぜか、そういうことが愛おしくなってきた。
そういうことは全部わかった上で、ここに住み続けることにした。

ライブの帰り道、聖蹟桜ヶ丘駅に降り立った瞬間の、あの安堵感があるから。夜のゆうひの丘で、風の音と虫の声の中、その日の余韻をゆっくり噛みしめられるから。朝、窓の外に桜が見えるあのまどろみがあるから。
この街でなければ味わえないことが、確かにある。
好きなものの隣で暮らすということ
住まいは、ただ寝るための場所じゃない。
駅からの距離、家賃、職場への近さ。そういうことは大事だ。でも私が聖蹟桜ヶ丘を選んだのは、もっと単純な理由だった。好きなものが、そこにあったから。
4年間の毎日が、その答えを教えてくれた。
好きなものの近くに住むと、景色に名前がつく。朝の光の角度も、夕暮れの色も、春の風の匂いも、全部がすこし特別に感じられる。それはゲームの話じゃなくて、この街で生きることそのものの話だ。
聖蹟桜ヶ丘に住んで4年。
窓の外にまた桜が咲いたら、きっと私はまたまどろみながら、ここに住んでいてよかったと思う。

そういう住まいに、出会えた。
