【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々9
エピローグ
勢いよく二人が湖面から顔を出すと館はほとんど燃え尽き、ところどころ煙が燻っていた。ジェレミーはフラフラとした足取りで湖から出ると草の上に倒れこんだ。
「いくら水温が高いからってこんなに長時間潜ってるのはきついよ」
ガリューも背中の酸素ボンベを投げ捨て、ジェレミーの隣に座り込む。
「でもうまくいっただろ? これで男爵は俺たちが死んだと思い込んでるはずだ」
ガリューが涙ながらに「この世界でたった一人の友達」と語ったおかげで彼の持っていた別世界の道具の存在を思い出した。マレクが来たときにしまった火をつける道具と水の中で息ができる道具を大急ぎで探した。館にあるキャンバスを集めて油を撒き、ロープを使って時間がくれば着火する仕掛けを作り、大急ぎで湖へ飛び込んだ。浮かび上がらないように蓮の茎を掴み、限られた空気を二人で分け合った。時々蓮の葉に隠れて息を吸いつつ様子を見ていた。男爵の私兵たちは恐ろしくしつこく周囲を捜索し、最後にまだ炎が残る館を確認して立ち去っていった。
いつもは嫌気がさすほど暑い陽射しが今は心地よかった。芯まで冷えた身体が暖まってきてようやく二人は体を起こした。
「マレクの声聞こえたか?」
ジェレミーが尋ねるとガリューは「え、いつ?」と驚いた。
「館が爆発したときだ。多分気のせいじゃない」
「爆発の音で全然聞こえなかった。君、油を撒きすぎなんだよ。館の形くらい残ってもよかったんじゃないか?」
「それは悪かったな」
館の跡にはわずかに残った壁や柱以外ほとんどが跡形もなく燃え尽きていた。キャンバスはもちろん一枚も残っていないだろう。
「マレクはどこに留学するって言ってたっけ?」
「聞いてないが、絵を描き続けていればまたどこかで会える気がする」
「そうだね。そうだったらいいな」
「とりあえずここから離れよう。そしてこの国を出よう。せっかく命拾いしたのに男爵に見つかったら台無しだからな」
「どこか行くあてはあるのかい?」
「俺が描きたかった洞窟に行かないか? 元々お前と一緒に行きたいと思っていた」
「君にしては素直な誘い方だね」
「まあ……」
「ん?」
「……友達だからな」
ガリューは嬉しそうにジェレミーの肩に腕をかけた。
