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【回想】初めてのエゾシカ

雪が降り積もる中、一発の銃声が響いた。

50メートル先でメスのエゾシカは雪深い丘を登ろうともがいている。 真っ白な雪の上に鮮やかな血の赤が道しるべのように続いていた。荒い息を吐きながら、こちらを凝視している。 もはや逃げる気力もないのだろう、胸元から呼吸のたびに血が吹き出している。

ナイフを手に、僕はゆっくりと間合いを詰める。エゾシカは二歩だけ逃げて立ち止まり、呼吸を整えようとする。しかし、出血は止まらない。 さらに近づくと、エゾシカの荒い呼気が僕の肌にまで伝わってきた。ゼェゼェ。その音は僕自身の荒い呼吸と重なり、一つのリズムを刻む。彼女の頭に手が届く距離まで近づき、ただ見つめ合った。

ナイフを首元に突き立て、頸動脈を切る。雪は鮮烈な赤に染まり、温かい血から湯気が立ち昇り、僕の呼吸も荒くなる。 前後の脚は、まるで雪の上を走っているかのようにバタつかせた。やがて、喉から絞り出すような「ゴォ、ゴォ」という荒い呼吸を鳴らし、ついに目の光が消えた。

腹部にナイフを滑らせ、開腹する。その瞬間、むわっとした温かさに包まれた。冬用の厚い手袋越しにも、まだ生命の温かさが伝わる。 チラチラと雪が降り、雪片は腹の中で血に溶け消えてゆく。 深く息を吐き、腹の中を空にして、袋に詰めた内臓と鹿の体を引っ張る。雪の上はよく滑る。

軽い。「ふぅ」と息を吐き、雪面をずるずると引きずっていく。 血の跡が道しるべのように僕の後に続き、徐々にその赤みを失っていく。ズルズル。ズズズ。

これが僕の初めてだった。

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