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経済モデル|ニュースの経済用語を、一枚の図解で理解する

ニュースを見ていると、「政策金利」「物価」「為替」といった経済用語が次々に飛び込んできます。けれども、それぞれを個別には理解できても、全体像としてどうつながっているのかが見えにくいものです。

Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。

今回の図解では、そうした経済用語(22項目)を丸ごと一枚の構造にまとめました。

  • 基礎編:ここだけでも十分楽しめます。

  • 応用編:さらに深く学びたい方に向けて。

[1] PROLOGUE|導入

テーマ概要

毎日ニュースを見ていると、経済に関する話題に必ず出会います。それは、私たちの生活が経済を土台として成り立っているからです。しかし、そこで飛び交う言葉を具体的に理解したり、経済全体の流れを俯瞰して捉えたりするのは簡単ではありません。

そこで今回は、経済学は素人でも、「図解」には自信のある筆者の視点から、お金の循環をモデル化し、経済学の各用語がどうつながるのかを解説します。全体像を一枚で押さえておくと、日々のニュースが点ではなく線として結びついて見えてくる、そんな感覚を味わっていただけるのではないかと思います。

参考資料

  • イングランド銀行公式経済がよくわかる10章、イングランド銀行著、すばる舎

  • 日本銀行HP

  • 内閣府HP

  • 他各種HP、Webメディア、など

[2] CORE|本編

思考回路 - 図解ツール
こちらが図解ツール全体像です。
この経済循環モデルを活用し、経済用語の理解を次章の解説で深めていきます。

経済循環モデル 図解

図の解説 - 紙芝居形式

図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。


基礎編

市場

私たちの社会は地球の土地や資源を基盤に活動しています。家庭の人々は労働を企業に提供し、企業は労働や資源を活用して市場で事業を行い、商品を生み出します。そして家庭は市場から商品やサービスを受け取ります。

市場 1/2

この循環を促進するために「お金」が存在します。企業は市場から利益を得て、労働者は企業から賃金を受け取り、労働者は市場で消費を行います。これらの循環が効率的に回ることで、人間の活動は発展していきます。お金はその媒介役を担っています。

市場 2/2

税金・公共サービス

政府は家庭から所得税・社会保険料・消費税を、企業からは法人税を集め、その資金で公共サービスを提供します。道路、教育、福祉、防衛などが整備され、私たちは社会を安全で安心して暮らせます。企業も公共サービスを運営することがあり、政府の支出を享受します。

税金・公共サービス

事業活動

この循環をさらに加速させるために、人類は金融を生み出し発展させてきました。銀行の仕組みから株式制度が生まれ、経済学や金融工学が発展し、資本主義社会のコントロールが試みられました。企業は資金を負債として調達し、事業の発展を加速させ、利益を得ることで成長を実現します。

事業活動

個人融資・ローン

家庭は融資を受け、住宅や自動車など高額な商品を未来の収入を前借りする形で手に入れ、生活を豊かにすることができます。

個人融資・ローン

銀行券

銀行券とは、私たちが普段「お金」としてイメージする紙幣です。中央銀行(日銀)が発行し、人から人へと手渡されることで、誰もが経済に参加できる。私たちがこの銀行券を手にするには、市中銀行が日本銀行に保有する「当座預金」を使って現金を引き出す必要があります。日銀は、その銀行の当座預金口座から同額を差し引き、代わりに紙幣(日本銀行券)を渡します。

銀行券 紙幣 1/3

受け取った紙幣は、市中銀行が自社のATMや窓口に補充し、顧客(個人・企業)が引き出すことで市場に流通します。

銀行券 紙幣 2/3

つまり、私たちがATMで現金を引き出す裏側では、銀行の当座預金と紙幣のやりとりが行われているのです。

銀行券 紙幣 3/3

預金通貨

私たちが日常的に使っているお金のうち、9割以上は実は銀行券(紙幣)ではありません。銀行の帳簿の中で記録される数字の移動、すなわち「預金通貨」です。銀行は貸出を行うことで新たにお金を生み出せます。銀行が企業や家庭にお金を貸すと、資産に「貸出金」が増え、その一方で負債に「預金」が記録され、バランスシートが釣り合います。

これが銀行の“錬金術”です。

預金通貨 1/4

もちろん、お金を借りた人はそれをただ預金として持ち続けるのではなく、車や住宅を購入するなどして現物資産に変えます。しかし経済全体で見れば、そのお金は誰かの支出が誰かの収入となり、結果的に預金として別の人の口座に移るだけです。

預金通貨 2/4

借りたお金を返済するときには、逆の循環が起こります。あなたの預金が減り、その分でローンを返すと、銀行は帳簿上の「貸出金」を削除します。これにより、市場から通貨が消えることになります。

預金通貨 3/4

このように、銀行の錬金術は「未来の経済活動」を先取りして、お金という形で現在に呼び出す、まるで魔法のような仕組みだと言えるでしょう。

預金通貨 4/4

準備通貨

預金通貨をやりとりするためには、銀行同士で資金のやりとりを行う必要がある。そのため銀行は中央銀行に口座を開設し、そこに準備預金(当座預金)として資金を預けている。この準備預金を使って、一日の終わりに銀行間の資金決済を行うことで、世の中のお金は円滑かつ迅速に流通している。

準備預金

好景気・インフレーション

好景気とは、市場の循環が活発である状態を指します。商品が売れ、企業の利益が上がり、家庭への賃金も上昇します。家庭に余裕ができることでさらに商品を購入し、好循環が生まれます。商品が少し高くなっても消費は続き、物価が上昇してインフレが発生します。

好景気 1/2

市場へお金が流れる魅力が高まると、資金需要が上昇し株価の上昇が発生する。また物価が上昇により、金融市場への資金供給が減る。それにより金利の上昇が起こります。

好景気 2/2

不景気・デフレーション

不景気とは、好景気の逆の状態を指します。経済の循環が滞ることで、商品は値下げをしなければ売れず、デフレが発生します。また、金融市場の資金の流れも停滞するため、金利は低下します。特に近年では、企業も倒産を恐れて内部留保を増やす傾向があり、その結果、金融市場に資金が滞ることもあります。

不景気

貿易黒字・円高

日本の商品の魅力が高ければ海外から強く求められます。そうなると国内で生み出された商品が海外へ流れ、支払いは円で行われます。その結果、円の需要が高まり、外国人が円を購入します。これにより円高になりやすくなります。

貿易黒字

貿易赤字・円安

海外の商品のほうが魅力的で、日本が海外から多くの商品や資源を輸入すると、その代金を外貨で支払う必要があります。そのため円を売って外貨を買う動きが増え、円安になりやすくなります。

貿易赤字

GDP

国内の経済規模を正確に観測するための指標が必要である。今日では、その役割をGDP(国内総生産)が担っている。GDPとは、国の経済が1年間に生み出した財やサービスの価値の合計(生産)であり、生産から得られたすべての所得の合計(分配)であり、さらに財やサービスに支払われたすべての支出の合計でもある。

GDP=C+I+G+(X-M)

  • C : 民間消費 (買い物など)

  • I : 民間の投資 (企業の設備投資など)

  • G : 政府の支出 (道路や行政サービスなど)

  • X : 輸出

  • M : 輸入

  • X-M : 貿易黒字

GDP 図解

コストプッシュインフレ

資源やエネルギー価格が高騰すると、輸入のために円を売って外貨を買う必要が生じます。円安に加え、資源価格の上昇分が国内の物価に転嫁され、インフレを引き起こします。

コストプッシュインフレ

投機

家計や企業が余剰資金を株式、為替、不動産などの投機的資産に投じることがある。これらは実体経済におけるモノやサービスの生産・消費には直接つながらず、主に金融市場内での資金移動にとどまる。市場参加者の間で売買が行われ、値上がり益を得た人の利益と、値下がりによる損失を負った人の差し引きで決着する。

近年では不動産に限らず、ゲームカードのような新しい対象まで投機の範囲に含まれる時代となっている。

投機

応用編

応用編では以下の用語を解説し、あわせて私自身の考察もお伝えします。

  • 財政政策・公共事業

  • 財政政策・減税

  • 積極財政・国債発行(+金融政策・量的緩和)

  • 緊縮財政・増税

  • 政策金利

  • 金利政策・政策金利引き下げ

  • 金利政策・政策金利引き上げ

  • 金利差・為替相場

ではここから応用編の解説をはじめましょう。応用編では財政政策や金融政策など、昨今の不景気の中でニュースに取り上げられる用語を解説します。

財政政策・公共事業

不景気のときに政府が実行できる対策のひとつが財政政策である。政府は徴税権と税金を使う権限を活用し、市場に資金を投入して需要を刺激する。古くはニューディール政策のように、大規模な公共事業へ投資することで企業が利益を得、その利益を源泉として家庭や市場への資金循環を活発にさせた。

財政政策・公共事業

財政政策・減税

政府は徴税権と税金を使う権限を活用できる。財政政策としての減税はその徴税権を抑えることで、市場から吸い上げる資金を減らし、その分市場内に資金が残って循環することを期待する政策である。

財政政策・減税

積極財政・国債発行(+金融政策・量的緩和)

政府は財政出動や減税のために国債を発行します。日銀がこれを買い入れる場合、市場に新しいお金が供給されます。

積極財政・国債発行 1/4

ただし、政府が直接日銀に国債を渡すことはできず、必ず市中銀行などを経由します。財務省が国債を発行すると、まず市中銀行が購入します。この時点では、市中銀行の「日銀当座預金」や「手元資金」が「有価証券資産(国債)」に変わり、その分が国庫に入り、政府の予算として使えるようになります。

ここでは政府は民間の資金を借りている状態です。

積極財政・国債発行 2/4

その後、日銀が金融政策(量的緩和など)の一環として市中銀行から国債を買い入れます。このとき日銀は市中銀行の「当座預金」を増やします。

積極財政・国債発行 3/4

こうして日銀のバランスシートが拡大し、新しいベースマネーが金融市場に供給されます。

積極財政・国債発行 4/4

緊縮財政・増税

政府の借金が膨らむと、財政の持続可能性に懸念が生じ、経済専門家の間でも議論が絶えない。政府債務は将来の国民負担につながる可能性があり、返済のためには財政支出の削減や増税が検討されることが多い。しかし、過度な緊縮策は経済成長に急ブレーキをかけ、かえって財政健全化を難しくする「逆効果」となるリスクもある。

実際、2009年のギリシャ危機では、急激な歳出削減と増税が深刻な不況を招いた。

緊縮財政・増税

政策金利

金利とは、お金が循環する際の「流れやすさ」であり、水道でいうバルブの締め具合のようなものです。基本的には市場原理で決まり、好景気のときはお金の需要が高まるため金利が上昇し、不景気のときはお金の需要が低下するため金利は下がります。しかし、中央銀行と市中銀行が預け入れを通じてつながっていることで、中央銀行は市中銀行に対する金利の増減を操作できます。

これにより、市中銀行がお金を日銀から出し入れする動きをコントロールし、結果として市場全体の金利を調整するのが政策金利です。

政策金利

金利政策・政策金利引き下げ

不景気になると、市場に供給されるお金の流れが滞ります。

金利政策・政策金利引き下げ 1/3

そこで政策金利を引き下げると、貯蓄の利点が小さくなり、人々や企業はお金を消費や投資などの形で使うようになります。

金利政策・政策金利引き下げ 2/3

こうして市場のお金の循環を正常な状態に戻そうとするのが、政策金利引き下げの目的です。

金利政策・政策金利引き下げ 3/3

金利政策・政策金利引き上げ

好景気になると、市場に供給されるお金の流れが活発になります。

金利政策・政策金利引き上げ 1/4

しかし流れが過剰になると物価が急速に上昇し、インフレが加速するおそれがあります。それが過剰になり、あまりにも物価上昇が早く起こるとハイパーインフレを引き起こす懸念が生じます。日々の労働も無に帰するほど、ただただお金の価値が減っていくのです。

金利政策・政策金利引き上げ 2/4

そこで中央銀行が政策金利を引き上げると、貯蓄の利点が大きくなり、人々や企業はお金を消費や投資ではなく貯蓄として金融市場に留めるようになります。

金利政策・政策金利引き上げ 3/4

こうしてハイパーインフレが起こる前に、市場のお金の循環を過熱前の正常な状態に戻すのが、政策金利引き上げの目的です。

金利政策・政策金利引き上げ 4/4

金利差・為替相場

市場は国内だけでは成り立たず、世界の市場とつながっています。お金を保有するだけであれば、金利が高い国や市場で運用した方がより利息が得られます。このため、投資家や銀行は金利の高い通貨を買い、低い通貨を売る動きが生まれ、為替相場に影響を与えます。

現在では、金利の低い日本円が売られ、金利の高いドルが買われることで、円安が進んでいます。

金利差・為替相場

ここまでお読みいただきありがとうございました。

図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
経済政策」について周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用してください。

図解ツールバリエーション

経済循環モデル with バランスシート

[3] INSIGHT|考察

図解をまとめての感想

子どものころから、私はものづくりが好きだった。大学では工学を学び、就職先もものづくりの会社を選んだ。いまも開発に携わり、目に見える形で世の中に価値を生み出しているという自負がある。

そのせいか、金融や経済には昔からどこか距離を置いてきた。投機やバブルのイメージが先行し、「ただお金を動かして、お金を得ているだけ」のように見えてしまっていた。最近の転売ブームにしても、新しい価値を生み出すというより、値段をただ引き上げているだけに映る。

ところがここ数年、NISAの普及もあって、私自身も資産を分散し、経済ニュースに目を留めるようになった。加えて、今年7月の参院選では「減税」を掲げる政党が話題になり、ネット上ではケインズ派とマネタリストの議論が飛び交っていた。

そうした議論を見ていると、疑問が湧いてくる。
人々が本当に望んでいる豊かさとは、いったい何なのだろうか。

財政を増やすことなのか。経済成長を数値で示すことなのか。あるいは、私たち一人ひとりの暮らしが、少しでも実感を伴って良くなることなのか。

今回、経済循環モデルを図に描いてみて気づいたことがある。人の活動は社会に新しい価値を生み出し、誰かの役に立つことだ。そしてお金は、その活動を循環させるための流れにすぎない。だから大切なのは、どうやってその流れを気持ちよく回すか、ということだと思う。

経済を語ることは、単に数字の大小を競うことではない。
「私たちの豊かさとは何か」に意識を向けること。
それこそが、本来の政治であり、社会の議論であるはずだ。

日本では昔から「お金は汚いもの」という雰囲気があったかもしれない。そのなかで、ガメツイ人だけが得をしている、そんなイメージも根強くあった。

けれども、お金を“経済を発展させるための流れ”ととらえてみるとどうだろう。その流れを気持ちよく循環させること。そこに目標を置いてみると、また違った景色が見えてくる。

[4] NAVIGATION|関連情報

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