話し方|人の心を動かす原則
人の思考プロセスを、本質的な「思考回路」として視覚的に構造化する。
Systems Visualismでは、個人の内省を助け、他者との対話・共有・創造を促進するための図解を体系化しています。
本棚のように、多様な図を揃え、あなたの考える力を広げるツールを紹介します。
[1] PROLOGUE|導入
テーマ概要
大人になると、人前で話す機会やスピーチをする場面が増えてきます。それは、仕事のプレゼンだけでなく、プライベートでも、友人や恋人に何かを伝えるときなど、「人に思いを伝える」ということは、日常的に起こる人間社会の営みです。
しかし、プライベートな会話ならまだしも、大勢の前で話すとなると、「どんな話をすればいいのか」という戸惑いに加え、多くの視線にさらされる緊張や恥ずかしさが重なり、心や脳は極限状態になります。その結果、しどろもどろになったり、原稿から目を離せなかったり、早口になってしまったりと、思わぬ失敗を経験することもあります。
今回は、そうしたスピーチの場において、「空間」や「時間」の流れをどう俯瞰して捉え、聞き手の心に届く話し方とはどうあるべきか、その構造に迫ってみたいと思います。
参考資料
話し方入門、D・カーネギー、創元社
[2] CORE|本編
思考回路 - 図解ツール
こちらが図解ツール全体像です。
情報量が多いため、次章の解説を参考にしながら、じっくりと読み進めていただくことをおすすめします。

図の解説 - 紙芝居形式
図解ツールをパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきます。
テーマ説明:全10枚
人に何かを伝えたいとき、特にスピーチの場面では、聞き手は「楽しみたい」「感動したい」「理解したい」「納得したい」といった期待を抱いています。話し手はその目的を忘れてはいけません。それを忘れた瞬間、その話はもはやコミュニケーションではなくなってしまうのです。

人間が最も興味を持つのは、「自分自身に関係すること」です。人が自分の人生を生きている限り、どれほど社会的に大切だと言われることでも、自分に関係がないと思えば、興味を持つことはできないのです。

人が興味を持つのは「自分のこと」であるなら、前置きは短いほうがいい。むしろ、なくてもかまいません。それよりも、本題への導入を早く始めるべきです。
「今日はお越しくださってありがとうございました」くらいなら短くすっきりしていて問題ありませんが、「準備もままならず、聞きづらい部分もあるかと思いますが、ご了承ください」など、自分の言い訳をするような言葉は絶対に避けるべきです。
それは話し手の都合であり、聞き手にとっては関係のないことだからです。

そして、話す内容においても、一般論だけでは誰も興味を持ちません。話し手であるあなた自身の「具体的な経験」、そこから得た「あなた自身の思想や信念」があってこそ、聞く価値が生まれます。そしてその内容が聞き手の視点と共鳴できたとき、初めて共感が生まれるのです。
「地球を守らなければならない」「SDGsは大事」といった一般論や、あまりにも規模が大きすぎる話題は、聞き手が「自分ごと」として受け取るには無理があります。

話の内容には、ストーリーが必要です。ストーリーとは「変化」のことです。
自分にとっての悪い状態や苦い体験を、どう乗り越えて成長したのか。その過程でどんな「気づき」があり、どんな「思い」が芽生えたのか。あるいは、悪い状態をどう乗り越えて解決したのか、あるいはどのように乗り越えられそうなのか。
そういったストーリーにこそ、人は興味を持つのです。人間は社会的な存在だからです。

そして、その内容を聞き手に伝えるためには、ただ淡々と話すだけでは、感動も理解も生まれません。伝え方によって、聞き手の興味が引き出され、深まるのです。
たとえば「問いかけ」を挟むことで、聞き手の思考を促すことができます。聞き手はあなたと異なる知識や理解力を持っています。だからこそ、誰にでも伝わる「平易な表現」を心がけることが重要です。
聞き手の頭に映像が浮かぶような「具体例」、そして理解を深める「比喩やたとえ話」。そうした、聞き手を思いやる気遣いから生まれる表現が求められるのです。

聞き手の耳に届くのは、あなたの「声」「音」です。ずっと同じトーンで話し続けたり、早口でまくしたてたりすると、聞き手の脳は次第に働かなくなります。声の高低、強弱、速度、そして重要なポイントの前後でしっかり「間」を取ること。
そうした抑揚表現こそが、聞き手の脳を活性化させ、心を動かします。
また「あー」「えー」といった間を埋める言葉は、意識して使わないようにしましょう。人は沈黙を恐れて、つい無意味な言葉を口にしてしまいますが、そうした言葉を人はまったく期待していないのです。

このように、ストーリー性を持った内容に、表現の工夫や抑揚を加えることで、聞き手の心に届く話が生まれます。そしてその結果、聞き手は話を聞き終えた後に行動を起こすかもしれません。その行動があるからこそ、「話すこと」に意味が生まれ、人間社会はより豊かなものとなっていくのです。

話のクライマックスを迎えたら、すみやかに締めくくるのが得策です。聞き手が話から心地よさを得ているのに、そのあとダラダラと主題から外れた話を続けるのは、まるでデザートを食べ終えた後に、フライドポテトを出されるようなものです。
すっと締めの言葉に入りましょう。本題のポイントをリマインドする言葉や、話のストーリーを自分ごととして受け止めた聞き手に対する賞賛の言葉。そういったメッセージをそっと添えて、物語を終えるのです。

話すこと、スピーチとは、ただ言葉を発するだけではありません。多くの要素を意識しながら話すことが求められる、社会的な人間にとって非常に重要な能力なのです。それゆえ、一朝一夕で身につけられるものではありません。何度も練習を重ね、実践を積むことが必要です。準備を怠ることも期待されません。
ただ逆にいえば、「人に気持ちを伝えたい」という情熱がある人は、自然と練習や準備を重ねていくでしょう。その積み重ねこそが、「自信」につながっていくのです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
「スピーチ」を自分で考える際の、「観点の地図」として活用してください。
[3] INSIGHT|考察
図解をまとめての感想
私はとても緊張しやすく、あがり症な性格です。自分では記憶にないのですが、母の話によると、保育園に入園したとき、クラスで自己紹介をする場面で、あまりにも大きな声で「**(名前)**です!」と叫んだそうです。それもこの性格の現れなのかなと思います。
とはいえ、小学校での学級委員や、中学3年のクラス合唱での指揮者、アマチュアバンドでのステージ経験など、少しずつ成長する中で、場数を踏んできたように思います。
そんな中で最も印象に残っているのは、9年前、2016年に会社の中でスピーチをしたときのことです。その前の2か月間、私は仕事でインドに滞在していました。その経験は、自分の内面的な成長につながる大きなものでした。
当時は社会人になって数年が経っていましたが、心の中にある壁を壊せずに悩んでいました。そんな中での、2か月間の単身インド出張。現地では、さまざまな困難の中で自分で考え、行動することが求められました。そして帰国後、部長から「その経験を、部のメンバーにも伝えてほしい」と依頼されたのです。
当時、部には200名弱の社員が在籍しており、ホールでその全員の前に立って10〜15分のスピーチをすることになりました。緊張しないわけがありません。そのとき、何十年も前に出版された名著『話し方入門』を読みあさり、必死に準備を重ねたことを今でも覚えています。
スピーチはなんとか無事に終わり、終了後には、同じ部署だけれど面識のなかった方から「とても感動しました」というメールをいただきました。その言葉は、今でも心に残っています。きっとそれは、「私の経験・思い」という、自分自身のストーリーを語ることができたからだと思います。
その後、関連する別の2つの部署、それぞれ200名弱の前でも同様のスピーチを行うことになり、なんとかやり遂げることができました。一度経験して同じ内容を話すとなると、自然と話の流れや表現がこなれてくるものです。よく、有名人が講演やテレビで逸話を語るときに、とても流暢に話しているのは、何十回、何百回と繰り返し話してきたからだと、自分の経験から理解できました。
それでもやはり、大勢の前で話すことは今でも難しく感じます。特にそれが「自分のこと」ではなく、「組織のこと」など、自分ごととしてとらえにくい内容であれば、なおさら緊張してしまう、そんな試練になります。近年も、「ああ、早口で話してしまったな……」という苦い思い出があります。
ただ、当時はなかったこの図解。これからはスピーチの際に手元に置いて、ふと見返すことで冷静さを取り戻せるよう、自分のために活用していこうと思います。
[4] NAVIGATION|関連情報
過去の図解
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